2026年1月9日(金)号

「国家半導体ロードマップ」=チップ国産化掲げ産業育成へ

 投資委員会(BOI)は、「国家半導体ロードマップ」の素案を公開した。5つの推進メカニズムを通じて産業の育成を進め、「チップ・メイド・イン・タイランド2050」の実現を目指す。
 国家半導体・先端電子産業政策委員会(セミコンダクターボード)は、タイを地域の中核プレイヤーへ押し上げることを目標に、2050年までにチップ国産化を実現する構想を掲げている。累計2兆5000億バーツ超の投資誘致と、国内で23万人を超える高度人材の育成を目標とする。
 BOIのナリット・トゥードサティラサック事務局長によると、1月7日にエークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相[=写真]を議長として開催されたセミコンダクターボードの会合で、「国家半導体・先端電子産業開発戦略(案)」について意見交換を行なった。


 同戦略案は2025年4月から策定作業を開始し、世界有数のコンサルティング会社であるローランド・ベルガーが調査・策定を担当した。BOI、国家経済社会開発評議会(NESDC)、工業省、マイクロエレクトロニクス技術センター(TMEC)、国家高等教育・科学・研究・技術革新政策評議会事務局(NXPO)などで構成する小委員会の監督のもとで進められ、国内外の民間企業からも幅広い協力を得た。
 戦略案の策定に当たっては、詳細なデータ分析の実施、国内外の関係機関との協議を通じ、世界とタイのサプライチェーン全体にわたる産業環境の評価、競争力の分析、競合国との比較、各国の支援策の整理、さらにタイの産業エコシステムの成熟度や投資誘致の可能性について検討した。これらを踏まえ、ビジョン、目標、指標、段階別の産業開発戦略、適切な支援策、ならびに計画を実行に移すための推進メカニズムを策定した。セミコンダクターボードに提出された戦略案は、2025年10月に実施した公聴会と関係者からの意見聴取を経ている。
 タイの半導体産業の開発状況について、域内の他国との比較分析も行なった。シンガポールやマレーシアといった先行国に加え、ベトナムやフィリピンなどの競合国と比較すると、タイの半導体産業はまだ初期段階にあるものの、インフラ整備の状況、人材の質、ビジネス環境、政府による支援策、さらには川下産業のポテンシャルといった要素を総合的に考慮した結果、産業を発展させ競争力を高める余地は十分にあると評価した。
 タイが特に注力すべき分野として、Power、Sensor、Photonics、Analog、Discreteの5種類のチップを挙げた。これらは自動車、エレクトロニクス、通信、データセンター、AI技術、オートメーションシステム、医療分野など、タイの主要産業で幅広く利用されていることから、高い成長可能性を有する分野と位置付けている。
 戦略案では、既存の強みを発展させると同時に新たな能力の構築を進め、川上から川下までの生産バリューチェーンを結び付けることで、先端半導体・高度電子産業の開発の方向を明確にする。その中核として「メイド・イン・タイランド・チップ(Made-in-Thailand Chips)」の実現を掲げ、2026年から2050年までの25年間で総額2.5兆バーツを超える投資誘致、23万人以上の産業人材育成、半導体産業の包括的なエコシステム形成を目標とし、タイを地域のリーダーへ引き上げることを目指す。
 最初の5年間は、タイがすでに強みを持つ分野の高度化に重点を置く。半導体の後工程である組立・検査事業(Outsourced Semiconductor Assembly and Test:OSAT)、IC設計、先端電子製品分野の開発を進めるとともに、ウエハー製造(Wafer Fabrication)への投資を誘致する。将来的に半導体産業を牽引し得る有望なタイ企業を育成し、ローカルチャンピオンとして成長させることも目標に加えた。
 目標達成に向け、戦略案では5つの重要な推進メカニズムを提案している。投資奨励策として重点投資プロジェクト誘致のための補助金や長期低利融資の提供を挙げた。高度人材の育成では、国内外の教育機関と産業界の連携によるカリキュラム開発を進め、半導体工学や先端研究分野の人材を育成するとともに、専門的な職業訓練を通じた労働力の高度化を図る。技術面では、TMECや大学の半導体研究センターの機能強化を進め、政府、民間、学術機関が連携した研究開発体制を構築する。
 インフラ面では、クラスター型産業用地の整備、水・電力供給体制の強化、とりわけクリーンエネルギーの活用促進、災害防止・管理システムの高度化を盛り込んだ。ビジネス環境の整備として、許認可手続きの円滑化、半導体分野に関する米国や欧州との通商交渉、タイ企業を支援する政府調達メカニズムの設計も提案した。
 この日の会合では、重点とする半導体分野を明確に定める必要があることを確認した。国の潜在力に合致し、かつ現在強みを有する主要産業、例えば自動車産業や電機・電子産業と連携・発展させることが可能な技術に焦点を当てる。これにより長期的に国際競争力を確保するとともに、国内の他の重要産業の競争力の強化につなげる。外国直接投資の誘致は、タイ企業が半導体産業のバリューチェーンで役割を果たし、積極的に参画できるよう促す政策と並行して進め、将来的な技術移転やタイ企業をローカルチャンピオンへ成長させる基盤につながるとの認識も示した。
 さらに、電力や水、廃棄物管理システム、サイバーセキュリティといった基盤インフラの整備、産業のニーズに対応する新たな労働力スキル育成に向けた準備の重要性も指摘した。投資判断を後押しする重要要素と位置付けられている。技術革新やグローバルなサプライチェーンの急速な変化に対応できるよう、戦略そのものに柔軟性を持たせる必要性にも言及があった。
 ナリット事務局長は、半導体産業が世界的な戦略産業として急速に成長し、2030年には市場規模が1兆㌦に達すると予測されている点に触れ、長期的にタイの競争力を高める新たな成長エンジンの一つになるとの見方を示した。セミコンダクターボードが半導体・先端電子産業開発戦略案を検討し、意見を付したことは、サプライチェーン全体を通じて半導体産業を体系的に発展させる明確なロードマップ策定に向けた重要な一歩になるとしている。
 なお、2018年から2025年11月までの期間、電機・電子産業分野で投資申請したプロジェクトは1748件、投資予定額は1兆1700億バーツに達し、全体の投資額の19%を占めた。申請件数が最も多い産業で、継続的な成長を示している。特に、プリント基板(PCB)の製造、半導体の組立・試験(OSAT)、ハードディスクドライブ・同部品の製造、カーエレクトロニクス部品、医療機器、通信機器向け電子部品の製造、家電製品やスマート電子機器の製造分野で拡大が見られる。
 これまでにも、半導体産業の世界的企業が生産拠点としてタイを選択してきた。ドイツ最大のチップメーカーであるインフィニオン・テクノロジーズ、米国のアナログ・デバイセズ、マイクロチップ・テクノロジー、ルメンタム・ホールディングス、オランダのNXPセミコンダクターズ、日本のソニー、東芝、ローム、台湾の鴻海グループ傘下で半導体製造装置向け高精度部品を手がけるフィティなどが挙げられる。

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