詐欺・グレー資本・ノミニー=民間企業部門が新政権に改革迫る
経済3団体合同常任委員会(JSCCIB)が立ち上げた反汚職タスクフォース「ゼロ・コラプション:JSCCIBと仲間はもう我慢しない」は1月14日、「詐欺集団、グレー資本、ノミニーを止めろ」をテーマにした討論会[=写真]を開催し、すべての政党に対して、詐欺やグレー資本問題への対応を求めた。総選挙後に新たに発足する政府に対し、問題解決に向けた本格的な改革を進めるよう提言した。6か月以内に法執行を厳格化する必要性を訴えた。

タイ商業会議所(TCC)のポット・アラムワタナノン会頭は、開会あいさつで、現在のタイは、サイバー犯罪やグレー資本と戦う「新たな経済戦争」に直面していると述べた。昨年1年間だけで、オンライン詐欺事件は32万3000件を超え、被害額はすでに2500億バーツに達しているが、実際の被害はその何倍にも上る可能性がある。問題は極めて深刻で、被害者への補償はわずか1%にとどまっている。
この問題は、単に詐欺被害者が増えているというだけではない。グレー資本がノミニーを通じて資金洗浄を行ない、タイで事業を展開し、タイをマネーロンダリングの拠点として利用している点に本質がある。その結果、正当な事業を行なうタイの事業者は淘汰され、違法な資本力や影響力に太刀打ちできず、また、国際社会におけるタイの信認も損なわれると指摘した。タイがマネーロンダリングやグレー資本の温床との印象を与えかねない状況にあり、今この段階でグレー資本やノミニーの問題を食い止めなければ、これらのネットワークは高官や政治家への賄賂を通じて「国家の乗っ取り」に乗り出し、国家構造そのものが崩壊するおそれがあると警告した。
ポット会頭は、「こうした状況を前に、もはや沈黙することはできない。民間部門は、詐欺集団、グレー資本、ノミニーの問題は、単なるサイバー犯罪ではなく、国の経済基盤とガバナンスを蝕む『腐敗という悪性のがん』だ」と述べている。
この日の討論会は、タスクフォースが、すべての政党に声を届ける場として企画された。選挙後に発足する政府が明確な答えを示さなければならない喫緊の課題であり、個別事件の摘発といった場当たり的な対応ではなく、「構造改革」に踏み込み、法の厳格な執行によって問題を根本から断ち切る必要があると強調した。ポット氏は、「討論会から生まれるビジョンや提言が、新政権の政策として具体化され、タイがグレー資本の悪循環から脱却し、誠実で透明性のあるビジネスを行なう人々にとって真に機会に満ちた国へと戻ることを期待している」と述べた。
JSCCIBと、20を超える業界団体との歴史的な連携は、タイから腐敗を一掃するという強い意思を内外に示すことを主な目的としている。「Reinvent Thailand」という使命のもと、新政権には誠実さを国家運営の基盤に据え、新たな社会規範を築くことを求めている。その第一歩として、贈答や不正な利益供与といった腐敗の温床となる慣行を排除し、国際競争力を備えた透明なビジネスのエコシステムへの転換を図る必要があると強調した。
タスクフォースは、汚職対策は実行可能で、具体的な成果が伴うものでなければならないと訴えた。違反者が自党の関係者や政府機関の人物であっても、断固として処罰する勇気が不可欠だと指摘した。また、警察庁など、腐敗が深く根付いている機関の改革を急ぎ、賄賂の要求や官職の売買といった悪循環を断ち切る必要があるとした。
さらに、タスクフォースは「社会契約」を宣言し、清廉な選挙の推進に取り組む姿勢を明確にした。汚職の前歴がある人物や、票の売買、グレー資本の関与が疑われる政党を支持しないとし、不透明な行為が確認された場合には、直ちに公表する用意があると表明した。
JSCCIBは、詐欺集団、グレー資本、ノミニーの問題がタイの民間部門に与える影響について、もはや単なる犯罪問題にとどまらず、市場メカニズムを歪め、民間部門の競争力を損なう「構造的障害」となっていると指摘した。その影響は、主に次の3つの側面に表れているという。
1.市場メカニズムの歪曲と中小企業の破壊(Market Distortion)
グレー資本は、違法な資金を洗浄するために表向きの事業を利用し、実際の事業運営による利益は重視していない。グレー資本には実質的なコストがなく、資金を合法的な形に見せかけて経済システムに流し込めればよいだけであり、これが商取引の仕組みに深刻な影響を及ぼしている。
グレー資本は、赤字をいとわず価格を大幅に引き下げ、タイの事業者を排除する。透明性をもって事業を行ない、適正に納税している中小企業は競争できず、最終的に廃業に追い込まれる。公正な商取引のエコシステムを容赦なく破壊する行為だとしている。
2.ノミニー問題は経済的な「売国行為」(The Nominee Threat)
観光、不動産、小売分野などでタイ人を名義人として利用する行為は、タイ人の職業機会を奪い、税制を経由することなく資金を国外へ流出させる結果を招いている。
国際的信認の低下も深刻で、OECD基準に基づく質の高い海外直接投資(High-Quality FDI)の意思決定に悪影響を及ぼしている。タイは早ければ来年、遅くとも再来年にはOECD加盟を目指す立場にあるが、こうした問題は大きな障害となる。
タイが投資にリスキーな国とみなされるおそれがあり、その結果、生産拠点が周辺国へ移転する事態につながりかねないと警鐘を鳴らした。
3.デジタル経済への信認危機(Digital Trust Erosion)
詐欺集団による被害は年間2500億バーツを超え、銀行システムやオンライン取引に対する信頼は、安心感から不信と恐怖へと変わりつつある。国民が「信頼」を失えば、国が巨額の予算を投じて整備してきた技術インフラは意味を失う。また越境取引の安全性という基盤が崩れれば、将来のデジタル経済の成長は破綻する。
ポット氏は、「グレー資本やノミニーの拡大を無為に許せば、不正な者に自らの家を破壊させる門戸を開くことに等しいという現実を直視しなければならない。民間部門は、こうした不正行為を決して容認しない。タイ国民とタイの事業者を真に守るため、果敢に立ち上がる政府を求めている」と結んだ。
「ゼロ・コラプション:JSCCIBと仲間はもう我慢しない」は、新政権が発足後6か月以内に直ちに実行すべき、実効性の高いアクションプランを提示した。
法規制を総点検し、「外国人」の定義を早急に見直し、株式保有比率51%といった形式的な基準ではなく、実質的支配者と最終受益者を重視することでノミニーの抜け穴を塞ぐ。また、警察庁の改革を進め、地位の売買や外国人労働者・賭博に絡む賄賂の連鎖を断ち切る。
さらに、以下の6つの積極的施策を提案した。
1.意識醸成と啓発:民間部門は談合や裏金を支払わない姿勢を徹底し、全国の商議所ネットワークを通じてグレー資本に関する情報提供を行なう。
2.組織としての取り組み:企業に反汚職連合への参加を促し、民間部門における汚職防止の防波堤を構築する。
3.許認可の明確化:「容認できない10の賄賂」を宣言し、政府の許認可プロセスの透明化を強く求める。
4.情報公開:国際基準に沿った25項目の政府データの公開を義務付け、監視と検証を可能にする。
5.テクノロジーによる監視:ACT・AIデータベースを活用し、政府プロジェクトをモニタリングする。
6.迅速な通報制度:即時不正告発制度を整備し、内部告発者を保護して、恫喝訴訟(SLAPP)を防止する。
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