2026年3月4日(水)号

中東戦闘で緊急閣僚会議を開催=アヌティン首相「影響は管理可能」

  アヌティン首相兼内相は3月2日、首相官邸に主要閣僚・官僚を呼んで中東地域における戦闘状況を評価する会議を開いた[=写真]。首相は、政府がこの日朝から会議を行ない、中東地域の紛争状況に関する重要課題について協議したと述べた。政府は状況を緊密に監視し続けており、すでに各分野での対応策や措置を決定した。また、関係機関に対し、タイ政府の立場と対応について国内外のメディアに情報発信を行ない、正確な理解を促すよう指示したと説明した。会議では、現状、課題、対応方針ならびに想定される影響への対処策について協議し、その結果、紛争はタイに一定の影響を及ぼしているものの、依然として管理可能な水準にあることを確認した。政府は影響の深刻化を抑えるための措置を迅速に講じるとともに、あらゆる側面でタイにとっての機会を模索していく方針だ。


 会議にはピパット・ラチャキットプラカン副首相兼運輸相、エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相、シーハサック・プアンケートゥケーオ外相、スパチー・スタムパン商業相、トリーヌット・ティアントーン労働相、アドゥン・ブンタムチャルーン国防副大臣、チャッチャイ・バンチュワット国家安全保障会議事務局長、ダヌチャー・ピチャヤナン国家経済社会開発評議会(NESDC)事務局長らが出席した。また、アッタポン・ルークピブン・エネルギー相とタパニー・キアットパイブーン・タイ観光公団(TAT)総裁もオンラインで参加した。会議終了後、首相、副首相兼運輸相、副首相兼財務相、外相、商業相が、民間部門を代表するタイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ・ティアンヌクン会長、タイ商業会議所(TCC)のポット・アラムワタナノン会頭とともに記者会見を行なった。
 首相は、民間部門の代表を招き、状況説明を行なうとともに、政府に求める支援策について意見を聴取したと述べた。会議に先立ち、政府はNESDC事務局、財務省と協議した。不確実性が高く、輸送コストや国際原油価格の一時的上昇につながる可能性について検討したが、世界市場における原油生産量は高水準にあり、産油国も増産していることから、価格への影響はそれほど深刻にはならないとの見通しを示した。
 タイにおけるエネルギー安全保障については、状況を管理できる水準にあり、十分なエネルギーと燃料の備蓄を確保しているため、国民生活への影響や経済への打撃は限定的とした。
 海外在住のタイ人の保護については、外務省が各国のタイ大使館と連携し、現地に滞在する労働者とタイ人の安全確保と支援にあたっている。帰国を希望しない場合は、安全に生活を継続できるよう支援する。一方、帰国を希望する場合には、政府があらゆる手段で全面的に支援する用意があるとした。運輸当局や軍と連携し、緊急時の帰国便や輸送任務の準備を進めており、とりわけイランについてはすでに対応計画を整備済みと説明した。
 一方、エークニティ副首相兼財務相は、①あらゆる側面での影響、②短期的対応策、③長期戦略の策定、という3つの重要課題について説明した。影響は主に6つの経路を通じて生じるとした。
 エネルギーについては、世界の原油の約20%がホルムズ海峡を通過して輸送されている。今回の状況によりエネルギー価格は短期的に上昇し、その後やや落ち着いたものの、全体として約5%上昇した。しかし、石油市場には相当量の供給余力がある。エネルギー省は、特に石油基金を通じた対応メカニズムを準備しており、短期的な影響を緩和できるとしている。また、タイは約60日分の石油備蓄を有しており、国民生活に影響を与えないよう対応できるとともに、追加の輸入先を確保する十分な時間があるとの見方を示した。
 物品・サービス貿易については、直接的な影響は大きくないとした。タイの中東向け輸出は全体の4%未満、輸入は約8%で、その大半は原油だ。ただし、輸送面での間接的影響が増す可能性があることから、首相は商業省に対し、民間部門と協議して対応準備を進めるよう指示した。
 観光分野では、直接的な影響は限られる。中東からの観光客は全体の約4%にとどまる。ただし、中東の航空ハブが影響を受け、東南アジア地域、特にタイへと拠点移転が進めば、長期的には機会となり得るとした。
 金融・資本市場については、タイ証券取引所は小幅の変動はあるものの安定を維持している。タイ中央銀行は、外貨準備高が約3000億㌦に達しており、リスクに十分対応できると報告している。商業銀行の自己資本比率も高水準にあり、タイの金融システムの安定を示している。
 労働分野については、首相は中東地域に滞在するタイ人の保護を最重要課題と位置付け、外務省と労働省に対し、緊密に状況を監視し、対応していくよう指示した。
 また、すべての関係機関に対し、民間部門と連携しつつ、世界政治の変化のなかで、タイがあらゆる側面でいかに機会を捉えるかという重要課題を立てたうえで、戦略の策定と状況の継続的な監視を求めた。東南アジアへの投資の移転の可能性、観光、医療、食品分野での機会の創出、さらにタイの中立的立場という強みを活用して経済的機会を拡大するよう指示した。
 シーハサック外相は、国際社会に対し、中東情勢に対する懸念を改めて表明し、外交交渉を通じた平和的解決により地域の安定が回復することを望むと強調した。首相がタイ国民の安全を最優先事項とし、帰国を希望する者を安全にタイへ帰還させるための避難計画を策定していると述べた。特に、直接的な影響を受けているイラン在住のタイ人に重点を置いている。外務省は帰国を希望する現地在住者と連絡をとり、必要に応じてトルコ経由の陸路移動を含むルートを確保し、航空便の手配により支援する方針。他地域についても対応方針を整備済みとした。
 スパチー商業相は、貿易面での影響について、イスラエル向け輸出がタイの総貿易額の約0.2%、イランとの貿易は約0.02%に過ぎず、直接的な影響は限定的と説明した。ただし、中東地域全体との貿易は4~5%を占めており、地域全体の影響や、欧州における物流面の間接的影響がサプライチェーンに及ぶ可能性については警戒が必要だとした。
 商業省は6つの主要措置を定めている。①国内の生活必需品価格を監視し、便乗値上げを防止する。②民間部門と協力し、原材料や生産要素の代替調達先を確保する。③輸出業者を支援し、物流を管理する。④24時間対応の調整センターとホットライン(1169)を設置する。⑤世界各地に常駐する商務官と積極的に連携する。⑥NESDC事務局と協力し、インフレと生活費への影響を分析する。
 トリーヌット労相は、タイ人労働者の状況を追跡し、支援するための緊急センターを設置したと明らかにした。イスラエルには約6万人のタイ人労働者がいるが、現在帰国を希望しているのは10~20人未満にとどまっている。イランにいるタイ人労働者は40~50人で、政府は渡航の便宜と安全確保のため緊密に連携するよう指示している。状況が悪化した場合には直ちに追加措置を講じるとしている。
 ピパット副首相兼運輸相は、2月28日から3月1日にかけて、スワンナプーム、ドンムアン、プーケット、チェンマイの各空港で計135便が運航中止となったと発表した。航空会社が宿泊費、食事代、代替便の手配などすべての費用を負担する。期間がイスラム教徒の断食月と重なり中東からの観光客は減少したものの、欧州からタイへの直行便は旅客が増え、ほぼ満席の便が続いているという。
 クリアンクライFTI会長は、民間部門として原油輸入への懸念があったが、エネルギー省との協議を経て備蓄計画に安堵したと述べた。肥料や石油などの原材料の輸出入産業への影響は限られるとし、今回の危機は機会にもなり得るとの見方を示した。特に食糧安全保障やハラル食品分野、さらにはタイを地域の安定した拠点として投資を呼び込む機会があると指摘した。
 ポット商議所会頭は、対応に力を入れている首相に謝意を表したうえで、海運面での懸念を示した。一方で、航路変更やタイの安全地域としての地位は、追加投資を呼び込む機会にもなり得ると述べた。ただし、労働力不足への懸念はあり、外国人労働者の在留延長を検討するとともに、新規労働者の技能向上を進め、将来的に国内産業へ影響が及ばないよう対応することを提案した。

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