2026年3月5日(木)号

中東紛争で成長率下振れ懸念=タイ経済、1.3~1.6%に低下も

 中東地域での紛争激化によりエネルギー価格や輸送に影響が広がるなか、タイ経済の先行きに対する懸念が強まっている。国家経済社会開発評議会(NESDC)は、今回の中東情勢を踏まえ、2026年のタイ経済の成長率が1.3~1.6%にとどまる可能性があるとの暫定試算を示した。従来予測の中央値2.0%を下回り、商業・工業・銀行の民間3団体合同常任委員会(JSCCIB)が示していた1.6~2.0%の見通しも下回る水準だ。3月4日に月例会見を開いたJSCCIBは今後、見通しの再評価を行なう予定だ。
 中東地域の紛争激化は、世界経済の安定と安全保障に影響を及ぼしている。原油・天然ガスの先物価格は急騰し、今後1~3か月は高値圏で推移する可能性がある。さらに、海上輸送や航空輸送にも影響が及んでいる。情勢が長期化すれば、国内のエネルギー価格の上昇による企業と家計のコスト増に加え、中東経由の航空便の運航停止などを通じて観光業にも影響が及び、タイ経済に影響を及ぼす可能性がある。
 こうした状況を受け、政府は各分野で包括的な対応策を策定している。経済への影響の評価、国民と海外在住タイ人労働者の支援、石油不足の防止と需給管理、さらには輸送コストの管理などが含まれる。企業と国民への影響を迅速に緩和することが目的だ。
 JSCCIBも、政府と継続的に連携しながら影響への対応策を準備することを重視している。タイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ・ティアンヌクン会長[=写真]によれば、3月2日にはアヌティン首相を議長として政府機関との会議を首相官邸で開き、情勢の評価と対応策の検討を行なった。タイが良好な外交関係を有していることを踏まえ、外国直接投資(FDI)や輸出の拡大を通じて機会を創出する可能性についても議論が行なわれ、食糧安全保障や医療サービス分野などが具体例として挙がった。


 JSCCIBは政府の各種施策を支持するとともに、政府からの情報や事実関係を企業部門、国民、関係する利害関係者へ伝達する役割を担う用意があると表明した。正確な情報を共有することで、各主体が状況に効果的に対応できるようにする。現在のデータによれば、タイの石油備蓄量は約60日分あり、管理が可能な水準にある。このため買いだめの必要はないとしつつ、国のエネルギー安全保障を持続的に強化するため、省エネルギーへの協力を各方面に呼びかけている。
 一方、米国の通商措置をめぐる不確実性も再び高まっている。米連邦最高裁が相互関税を違法と判断したことを受け、トランプ大統領は暫定措置として通商法122条を適用し、すべての輸入品に対する10%のユニバーサル関税を導入した。今後、米国は特定産業を対象としたセクター別関税の適用や、通商法301条と338条の適用拡大を進める可能性がある。特にテクノロジー関連製品における原産地偽装問題を巡り、対米輸出に対するリスクは高まる見通しだ。
 昨年にタイの対米貿易黒字は720億㌦となり、2024年の450億㌦から増大した。こうした状況もあり、タイの対米輸出は今後さらなる通商措置の対象となる可能性がある。
 タイ経済を巡るリスクは高まっており、国内の信頼感を強化する必要がある。JSCCIBは、新政権が総選挙後に高まった投資家の信頼を好機として活用し、拡大するリスクに対応することを期待している。経済の安定を維持しつつ、短期的にエネルギーコストの上昇が企業や家計に及ぼす影響を緩和すること、さらに予算編成手続きを急ぎ、経済政策の継続性を確保することが求められる。
 同時に、経済構造の転換や規制改革を進めることが重要とJSCCIBは指摘する。特に労働者のアップスキル/リスキルを推進し、労働力をフォーマルな制度に取り込むこと、合法的に就労する外国人労働者の在留許可更新問題を適切に管理し、企業部門の需要に見合った労働力を確保することが必要だとした。また、生産性の向上につながる新規投資を積極的に支援し、成長力と国際競争力を高める「Reinvent Thailand」の方向性に沿って経済改革を加速するよう求めた。

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