住宅市場に底入れの兆し=政府・金融当局の支援措置で回復継続
政府住宅銀行(GHB)の不動産情報センター(REIC)はこのほど、2025年第4四半期の住宅市場動向を公表した。全体として市場は四半期ベースで回復の兆しがみえ始めている。所有権移転の登記手数料と抵当登記手数料の引き下げ、LTV規制の緩和など短期的な経済刺激策(クイックビッグウィン)や不動産業支援策が効果をあげている。これらの措置により、第4四半期の引き渡し件数は前期比5.7%増、金額ベースで9.3%増となった。全国の新規住宅ローン実行額も前期比1.3%増加した。
2025年通年では市場はすでに底打ちしたとみられる。このため2026年の住宅市場は2025年とほぼ同水準で推移し、需要と供給、住宅ローン環境の間で構造的なバランス調整が進む年になるとの見通しを示した。不動産部門のみならず、タイ経済全体にもプラスの影響を及ぼし、成長の改善につながると予測している。
GHBの副総裁(マーケティング担当)でREIC所長代行を務めるナロンポン・プラパーニリン氏[=写真]は、2025年第4四半期の住宅市場について、直近2四半期に続き回復の兆しがみられると述べた。第4四半期の需要は前四半期比で拡大した。所有権移転の手数料と抵当登記手数料の引き下げ、LTV規制の緩和が実需層の購入判断を後押しした。

その結果、第4四半期の全国の住宅引き渡しは件数・金額ともに前期比で増加した。件数は8万9198戸と、第3四半期の8万4397戸から4801戸増え、5.7%増となった。金額は2471億4500万バーツで、第3四半期の2261億6600万バーツから209億7900万バーツ増え、9.3%増となった。
物件タイプ別では、戸建て住宅が6万86戸で4.4%増、金額は1744億6900万バーツで6.3%増。コンドミニアムは2万9112戸で8.6%増、金額は726億7700万バーツで17.0%増と、特に金額ベースで伸びが目立った。
新築と中古に分けると、市場構造の変化が浮き彫りになった。2025年第4四半期の全国の住宅所有権移転件数のうち、新築住宅は3万3606戸で全体の38%を占め、前年の39%から低下。一方、中古住宅は5万5592戸で62%を占め、前年の61%から上昇した。中古住宅の譲渡金額は依然として新築住宅を下回っている。
2025年通年では、全国の住宅所有権移転件数は31万6214戸となり、2024年の34万7799戸から9.1%減少した。総額は8649億1300万バーツで、2024年の9806億4800万バーツから11.8%減少した。
内訳を見ると、新築住宅は年間11万2565戸で13.9%減、金額は4525億6500万バーツで14.7%減となった。一方、中古住宅は20万3649戸で6.2%減、金額は4123億4,800万バーツで8.4%減となった。
この結果、中古住宅の市場シェアは件数ベースで64%に上昇した。購買力が依然として脆弱な環境下において、中古住宅市場が果たす役割が増していることを示している。
地域別では、2025年第4四半期に金額が最も高かった上位10県は、バンコク、チョンブリ、サムットプラカン、ノンタブリ、パトゥムタニ、プーケット、チェンマイ、ラヨン、コンケン、ナコンラチャシマだった。このうち、前年同四半期比で件数と金額の双方が増加したのはコンケンとラヨン。
一方、2025年通年で金額が最も高かった上位10県は、バンコク、チョンブリ、サムットプラカン、ノンタブリ、パトゥムタニ、プーケット、チェンマイ、ラヨン、ナコンラチャシマ、コンケン。このうち、前年同期比で件数と金額の双方が増加したのはプーケット、ラヨン、ナコンラチャシマ。コンケンは件数こそ増えたものの、金額は減少した。
2025年第4四半期には、外国人によるコンドミニアム購入にも前向きな動きが見られた。外国人への引き渡し件数は3888戸で、前期比1.1%増、前年同期比9.3%増となった。総額は前年からわずかな増加にとどまったが、件数の伸びが上回ったことから、1戸当たり平均価格は低下傾向にある。中価格帯物件の購入増が背景にあるとみられる。
2025年通年では、外国人によるコンドミニアムの引き渡しは1万4899戸と、前年比2.2%増加した。一方、金額は609億2100万バーツで、前年から10.7%減少した。外国人取引は全国のコンドミニアムの所有権移転件数の14.7%、総額の25.0%を占めた。
国籍別では、中国人が引き続き最大の購入層を維持したものの、件数・金額ともに減少した。2025年の中国人による購入は4940戸で前年から12.9%減、金額は185億8500万バーツで30.0%減となった。それでも件数全体の33%、金額の31%を占め、最大シェアを保っている。
一方、ロシアと台湾からの需要は顕著に拡大し、件数・金額ともに増加した。外国人の需要が新たな国々へ分散していることを示している。購入目的は実需や長期滞在、賃貸投資など多様で、タイのコンドミニアム市場の柔軟性を高める要因となっている。
住宅ローンの動向にも、需要回復を示す動きが表れている。2025年第4四半期の全国における個人向け新規住宅ローン実行額は1487億4800万バーツとなり、第3四半期の1468億3400万バーツから1.3%増となった。不動産業支援の2つの刺激策が継続的に効果を発揮していることが背景にある。
一方、2025年通年の個人向け新規住宅ローン実行額は5390億6500万バーツで、前年の5848億4300万バーツから7.8%減少した。金融機関の慎重な融資姿勢や家計債務負担の制約が影響したとみられる。
2026年の住宅市場見通しについては、タイ経済は依然として脆弱だが、危機のなかに機会もあるとの見方を示した。2026年の経済成長率は1.5~2.5%(中央値2.0%)と予測されている。家計債務はなお高水準にあり、購買力を圧迫している。
政府は短期的な経済刺激策(クイックビッグウィン)を実施している。「ピットニーワイ・パイトーダイ(債務一括返済で再出発)」や「クンスー・ラオチュアイ(あなたは闘い、私たちは助ける)」といった家計債務対策を通じ、国民の債務負担軽減を図っている。政策金利は低下傾向にあり、観光客数や観光収入も回復の兆しを示す。政権発足後は追加の経済刺激策が打ち出される見通しで、輸出や工業生産、民間消費の拡大にも好影響が及ぶとみられている。
REICは、2026年の住宅市場が横ばいで推移すると予測している。ベースケースでは、全国の住宅所有権移転件数は31万4593戸と、2025年の31万6214戸から0.5%減少する見込み。総額は8584億5300万バーツで、2025年の8649億1300万バーツから0.7%減少すると予測している。
また、2026年の全国の個人向け新規住宅ローン実行額は5390億6200万バーツを見込み、2025年の5390億6500万バーツとほぼ同水準になるとの見通しを示した。
総じて、2025年はタイの住宅市場にとって件数・金額ともに縮小した年となった。最終四半期にはクイックビッグウィン措置や所有権移転・抵当登記手数料の引き下げ、LTV規制緩和などにより回復の兆しがみられたが、限られた範囲にとどまった。
一方、2026年は経済が横ばいで推移するなか、国内の需要と供給、住宅ローン環境の間で構造的なバランス調整が進む局面になるとみられる。これにより、不動産部門とタイ経済全体にプラスの影響が及び、成長の改善につながると予測している。
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