2026年3月23日(月)号

住宅市場の底入れ見えず=26年も縮小、4年連続マイナス

 タイの住宅市場が長期的な減速局面から抜け出せないでいる。カシコンリサーチセンター(Kリサーチ)は、2026年の全国住宅所有権移転件数が前年比5.1%減の約30万戸に落ち込み、4年連続の縮小となる可能性が高いとの分析レポートを公表した。政府の住宅支援策や外国人によるコンドミニアム購入が一定の下支えとなるものの、家計の購買力の弱さや国内外の経済の不透明感が需要の回復を妨げている。
 住宅市場はすでに長期間の停滞に直面しており、2026年も高い不確実性が続く見通しだ。国内外の経済環境に加え、米国・イスラエルとイランの対立など地政学リスクも市場心理を冷やす要因となっている。こうした状況のもと、住宅購入を左右する最大の障害は依然として購買力の弱さであり、取引活動は全体として脆弱な状態が続いている。
 Kリサーチによると、2026年の全国の住宅所有権移転件数は約30万戸と予想され、数年来で最低水準となる見込みだ。前年より減少幅はやや縮小するものの、複数年にわたりマイナスが続くこと自体が住宅市場の弱さを示している。今回の見通しは中東情勢の緊張が高まる前から慎重な予測だったが、紛争の影響も考慮し、より保守的な見方となっている。
 政府の政策は一定の下支え要因とみられる。政府は、価格700万バーツ以下の住宅を対象とした所有権移転手数料や抵当登記手数料の引き下げ措置の延長を検討しているほか、1軒目と2軒目の住宅を対象とした住宅ローン規制(LTV)の緩和措置も2026年6月30日まで適用される予定だ。こうした政策は住宅購入を促す効果が期待される。
 外国人によるコンドミニアム購入も市場の下支え材料となる。2026年の外国人によるコンドミニアム所有権移転は約1万5200戸と予測され、前年比1.8%の増加となる見通しだ。前年の2.2%増から伸び率は鈍化するものの、全国の住宅取引の約5%を占める規模で推移すると見込まれる。
 一方で、住宅市場を取り巻くマイナス要因は多い。特に家計の購買力の制約が深刻だ。統計局の家計調査によると、2025年前半時点でタイの家計債務は平均月収の約5倍に達している(平均月収は2万8151バーツ)。生活費の上昇と高水準の家計債務が住宅購入能力を圧迫している。
 さらに、タイ経済の成長鈍化も需要を抑える要因となっている。住宅は単価が高く、ローンの返済期間も長く流動性も低い資産であるため、経済の不透明感が高まると消費者は購入を先送りする傾向が強い。購入意欲があっても資金面で準備が整わない層は、住宅購入ではなく賃貸を選ぶ可能性が高まっている。
 需要の弱さは市場の指標にも表れている。2026年1月のバンコク首都圏における新規住宅プロジェクトの予約率は平均15%にとどまり、年初の需要が依然として鈍いことを示した。
 こうした環境のもとで、住宅購入者は選択肢の多い中古住宅市場へ関心を移している。中古住宅は新築と比べ価格面で優位性があり、同じ立地でもより広い住宅を取得できるケースが多い。また立地の選択肢も広く、希少な地域の物件が市場に出ることもある。コロナ禍以降、全国的に中古住宅の供給も増加している。
 2026年の中古住宅の所有権移転件数は前年比4.7%減の約19万4000戸と予測される。ただし新築住宅より減少幅が小さいため、全体に占める割合は64.6%まで上昇する見通しだ。この傾向は地方都市だけでなく、バンコク首都圏でも広がっている。
 一方、新築住宅の移転件数は約10万6000戸と見込まれ、前年比5.8%減となる。住宅の新規予約件数が回復していないことに加え、中古住宅市場との競争も影響している。2025年のバンコク首都圏の新規住宅予約件数は5万2000戸と、数年来で最低水準に落ち込んでいた。
 住宅価格にも下押し圧力がかかる。2026年の住宅の平均取引価格は前年比0.6%下落し、1戸当たり平均272万バーツになると予想される。価格調整の背景には、購入者が購買力に見合った価格帯の住宅を選ぶ動きに加え、市場に積み上がった在庫の多さがある。
 新築と中古を合わせた住宅在庫は60万戸以上に達しており、販売競争は激化している。購入資金に余裕のある買い手は選択肢が増えることで交渉力を高めており、販売価格にも一定の下げ圧力が生じている。
 こうした環境のなかで、住宅デベロッパーは資金繰りを重視した経営を続けそう。企業の多くは在庫物件の販売を優先し、新規プロジェクトの立ち上げには慎重な姿勢を維持している。2026年の新規投資は前年と同程度の低水準にとどまる可能性が高い。
 特に中東情勢の緊張は住宅市場のリスク要因となる。紛争が長期化すれば国内の購買力をさらに弱める可能性があるほか、外国人需要の減少にもつながりかねない。またエネルギー価格の上昇を通じて建設コストの上昇圧力を生む可能性もある。
 住宅デベロッパーは、保有在庫の種類や市場セグメントごとの需要を見極めながら事業リスクを分散し、新規プロジェクトの投入時期を慎重に見極める方針をとるだろう。市場が依然として不安定な状況にあるなか、販売完了までの確度を重視した事業戦略が求められている。

燃料不足「発生せず」と強調=需要急増に対応、供給体制強化

 アヌティン首相兼内務相3月19日、中東情勢管理・追跡センターの第6回会議を開いた[=写真]。石油については、タイの製油所は1日当たり1億7500万㍑の生産能力を維持しており、供給は継続的に行われていることを確認した。製油所と石油備蓄基地は、出荷価格を明確に公表し、小売業者に対してはガソリンスタンド価格を上回らない水準で販売するよう指導している。


 輸送面では、政府が関係機関と連携し規制を緩和し、タンクローリーによる輸送を24時間体制で可能とした。これにより全国の給油所への供給が容易になる。輸出については、国内供給のバランス維持のためラオス向けで平均25%、ミャンマー向けで約20%減少させた。さらに、精製効率の向上、バイオ燃料(B20など)の利用促進、影響を受ける層への支援措置の検討など、信頼回復と供給逼迫問題解消に向けた追加措置も承認された。
 首相は国民に対し、燃料の買いだめを控えるよう要請するとともに、一時的な供給逼迫は輸出などによるものではなく、異常な需要増によるものと説明した。あわせて、長期的なエネルギー安全保障のため代替エネルギーの利用促進を進める方針を示した。
 首相は会議後に取材に応じ、現在タイでは燃料不足は発生していないと強調した。原油輸入は通常通り行なわれ、生産能力と供給量にも変化はないとした。
 一方で、国民の不安心理により燃料需要が通常の1日6000万~6700万㍑から約8400万㍑へと増加したと説明した。政府は輸送体制の拡充を急ぎ、早期に正常化を図るとしている。
 首相は、今回の状況は供給不足ではなく不安による需要増が原因であることから関係機関、とりわけエネルギー省に対し厳密な管理と国民への信頼醸成を指示した。首相は「生産・輸入ともに通常通りであり、燃料不足は発生していない。買いだめを行う必要はない」と述べた。

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3月17日

[為替・株式市況]
3月16~20日

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バンコク首都圏の燃油小売価格
天然ゴム

[金融市場]
外為相場
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