今年の新車市場は微減見通し=中国EV拡大で販売網も構造転換
今年のタイの新車市場は、前年からわずかに減少する見通しだ。購買力の弱さや金融機関の融資審査の厳格化が需要を圧迫する一方、バッテリーEV(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の販売は大幅に拡大すると予測される。これに伴い販売網にも変化が生じ、中国ブランドのディーラーは増加する一方、日本や欧米ブランドのディーラーは減少する見通しとなっている。
カシコンリサーチセンター(Kリサーチ)が3月9日付けで発表したレポートによると、2026年の国内新車販売台数は前年比0.2%減の約62万台となる見通しだ。2025年の販売台数は62万1166台だった。市場縮小の主因は、商用車販売の減少にある。商用車の販売台数は前年比5%減と予測され、市場シェアは33%まで低下する見込みだ。
需要低迷の背景には、消費者の購買力の弱さがある。製造業の減速に伴い工業部門の労働者の所得が減少しているほか、農産物価格の下落により農家の所得も減少している。このため金融機関は自動車ローン審査を引き続き厳格化しており、自動車購入のハードルが高くなっている。
一方で、乗用車の市場は比較的底堅く推移するとみられる。乗用車の販売台数は前年比2%増と小幅ながら拡大する見通しで、特にBEVとPHEVは前年比28%増の18万1000台に達すると予測される。乗用車市場に占めるBEV/PHEVのシェアは29%に上昇する一方、内燃機関車(ICE)とハイブリッド車(HEV)のシェアは38%に低下する見通し。
EV販売の増加は、自動車ディーラーの構造にも影響を与える。2026年は中国ブランド車の販売増を背景に、中国車ディーラーが急速に増える見通しだ。BEVとPHEVの販売台数のうち、88%が中国ブランド車で占められている。中国車ディーラー数は2026年に730拠点となり、前年比10%増と見込まれる。
これに対し、日本や欧米ブランドのディーラーは減少傾向にある。これらのブランドは販売の97%をICE車やHEV、ピックアップトラックに依存しているが、これらの市場は縮小している。2026年の日本・欧米ブランドのディーラー数は1520拠点と、前年比4%減になる見通しだ。
販売効率の面でも両者の差は広がる。中国ブランド車は販売増により、1ディーラー当たりの販売台数が前年比11%増えると予測されるのに対し、日本・欧米ブランド車は同3%減少すると見込まれている。
日本・欧米ブランドのディーラーでも、すべてが同程度に減少するわけではない。市場シェアの大きいブランドでは影響は比較的限定的となりそう。2025年の新車登録において10%以上のシェアを持つブランドでは、ディーラー数の減少は2026年に0.3%程度にとどまる見込みだ。販売台数が多く、ディーラー当たりの販売量が多いことが事業の継続を支える。
一方、市場シェアが1~4%程度の小規模ブランドでは、ディーラー減少の影響が大きくなる。これらのブランドのディーラー数は2026年に10.8%減少すると予測されている。販売台数が少ないため、ディーラー当たりの収益性が低く、資金繰りが悪化しやすいことが要因だ。
特にリスクが高いのは、ピックアップトラック販売への依存度が高いディーラーだ。ピックアップ市場が縮小するなかで販売が落ち込みやすい。また、ブランドの国内生産拠点がすでに撤退している場合、アフターサービスへの信頼低下も重なり、販売網の維持が難しくなる可能性がある。
資金力が限られるディーラーでは、2026年中に事業閉鎖に追い込まれるケースも出そうだ。こうしたディーラーの一部は、生き残り策として成長が続く中国ブランド車の販売代理店へ転じる動きも出てくるとみられる。
Kリサーチによる今回の分析は、タイの自動車市場がEVシフトの進展と国内需要の停滞という2つの要因により、大きな構造転換期にあることを示している。販売台数はほぼ横ばいながら、ブランド構成や販売網の勢力図は大きく変わる可能性が高い。中国EVの台頭は、タイの自動車産業の競争環境にも新たな変化をもたらしている。
トヨタがランドクルーザーFJ発表=タイの生産・輸出拠点化を加速
タイ国トヨタ自動車は3月21日、バンナーKm3のトヨタALIVEで、新型「ランドクルーザーFJ」の発表会を開催した。発表会には、同社の山下典昭社長、スパコーン・ラタナワラハ上級副社長、トヨタ自動車のチーフエンジニアである内山征也氏が出席した。

ランドクルーザーは、1951年の「Toyota BJ」に起源を持ち、70年以上にわたり強さ、耐久性、信頼性の象徴として世界中で支持されてきた。現在では180か国以上で利用され、累計販売台数は1200万台を超えている。過酷な環境での試験を通じて培われた耐久性とオフロード性能により、世界中の人々の移動を支えてきた。
同ブランドの核心は「Trust」にあり、「信頼性」「耐久性」「走行性能」の3要素に対する信頼が長年にわたり受け継がれている。開発においては「継承」と「進化」の両立を重視し、あらゆる環境で安全に目的地へ到達できる車としての価値を磨いてきた。
今回発表された「ランドクルーザーFJ」は、こうした伝統を踏まえつつ、成長市場における顧客層拡大を目的に開発されたモデルで、「より手の届きやすい」オフロード車でありながら本質的価値を維持することを狙いとしている。開発コンセプトは「Trust」を基盤に、「Freedom(どこへでも行ける自由)」と「Joy(自分らしく生きる喜び)」を融合させた。
同モデルは、日本国外で初めてフル生産されるランドクルーザーで、タイが主要生産拠点に選ばれた。現地部品使用率は84%に達し、年間4万台以上を日本を含む約60か国へ輸出する計画だ。トヨタは、同モデルがタイの製造業ネットワークを強化し、自動車産業の持続的成長と国の経済発展に寄与するとしている。国内市場における初年度販売目標は5000台に設定した。
開発面では、ランドクルーザー誕生75周年の節目にあたり、従来の3系統(ステーションワゴン系、ヘビーデューティ系、ライトデューティ系)の思想を踏まえつつ、新たな市場に対応するモデルと位置付けた。40シリーズの精神に立ち返り、多様なライフスタイルに対応する車として設計されたという。
車両は「フォーチュナー」より全長で185㍉短く、ホイールベースも170㍉短縮され、機動性と操作性を高めた。最小回転半径の縮小により狭い場所での取り回しが向上し、新たな走行の楽しさを提供する。外装は「PLAYFUL DICE」コンセプトに基づき、スクエア形状と短いオーバーハングにより走破性とデザイン性を両立した。
内装は水平基調の伝統を維持しつつ、操作性と視認性を高めた設計とし、より優れた視界を確保した。性能面ではIMVシャシーをベースに強化・チューニングを施し、四輪駆動システムやデファレンシャルロックを装備することで、あらゆる路面での走行性能を確保した。
生産はバンポー工場で行なわれる。同工場は150万台以上の生産実績を持ち、日本とタイの技術連携により品質、耐久性、信頼性(QDR)を体現している。開発では日本全国のオフロードユーザーと共同で実走テストを行ない、高い機動性、安定したグリップ、十分な最低地上高といった要素を重視した。
また、カスタマイズ性も重要な要素として位置付けられ、車両は拡張の余地を持つ設計とされた。ユーザー自身が個性やライフスタイルに応じて車を完成させるという思想に基づき、アクセサリー開発やコミュニティ形成を含むエコシステムの拡大も見込む。イベントではトヨタ純正アクセサリーに加え、ARBとの協力によるオフロード仕様の提案も行なわれた。
スパコーン上級副社長は、同モデルの特徴として、独自性あるデザイン、強力な走行性能、快適性、あらゆる路面での安定性、信頼性の高いブレーキ性能の5点を挙げた。PPV市場における新たな選択肢として、単身者や小規模世帯、アウトドア志向の顧客などをターゲットに据える。
既存の大型ファミリー向けモデルである「フォーチュナー」が7人乗りで家庭と仕事の両立を重視する層に向けられるのに対し、ランドクルーザーFJはコンパクトでカスタマイズ性に優れ、日常とオフロードの両立を求める顧客に適した「ホビーカー」として位置付けられる。搭載される2TRエンジンはランドクルーザー250と同系統で、過酷な環境で実証された性能を備える。
今回の発表は単なる新型車投入にとどまらず、タイをグローバル生産・輸出拠点として位置付ける戦略の一環であり、タイの自動車産業とサプライチェーンの高度化を後押しするものとなる。トヨタは今後も現地生産を通じて産業基盤を強化し、タイ経済の発展に貢献していく方針だ。
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