2026年4月8日(水)号

観光業の回復はなお脆弱=「量から質」へ高付加価値重視

 4月2日、タイ観光公団(TAT)のタパニー・キアットパイブーン総裁は、今年初頭の観光産業について「回復しつつあるものの、依然として脆弱」との見方を示した。今年3月の外国人観光客数は277万5199人で、前年同月を2.01%上回ったが、第1四半期(1~3月)の外客数は931万6909人で、前年同期を2.43%下回っている。


 観光業は、一部で回復の兆しがみられ、特に訪タイ外国人市場や年初の観光イベントにより事業者の信頼感は改善しているものの、タパニー総裁は前年同期の水準には完全には戻っていないと指摘する。直近では中東紛争の影響により、観光がオフシーズンに向かうなか、年央の見通しに対する懸念が強まっている。加えて、エネルギー価格の高騰、地政学的変動、為替相場といった外部要因やコスト圧力も高く、回復は持続性に欠け、外部ショックに対して依然脆弱な状況にあるとした。
 原油価格の上昇は移動コストや航空運賃に直接影響している。さらに中東の地政学的緊張により、航路変更や迂回飛行が増加している。このため3月以降、欧州や米国などの長距離市場で減速の兆しがみられ、事態が長期化すれば影響は一段と拡大する可能性がある。
 バーツ高の進行も懸念材料となっている。競合国である日本やベトナムと比べ、タイの滞在費は割高とみられつつある。一方で、中国市場は依然として重要な戦略機会であり、年初の中国人観光客数は前年比6.4%超の伸びを維持している。
 国内旅行については、家計債務の高止まりを背景に「短期間・近距離・節約志向」へのシフトが進み、観光収入の伸び悩みにつながっている。
 ターパニー総裁は、今年の観光目標について、中東紛争が1~3か月以内に終結する前提で見通しを修正した。外国人観光客数は、中東、欧州、米国市場の減速により、当初目標を18%下回る3000万~3400万人となる見込みとしたが、依然として高水準を維持するとの見方を示した。一方、国内旅行は目標を3%下回る延べ2億600万人となる見通し。観光収入は約2.58兆バーツを見込む。
 こうした環境下でTATは、観光客数の拡大から「経済価値」と「持続可能性」を重視する戦略へと転換する。「Value over Volume」戦略のもと、「低価格観光地」というイメージから「高付加価値観光地」への転換を目指す。デジタルノマド、ウェルネス・ヘルスツーリズム、プレミアム個人旅行者(FIT)など高付加価値層に注力し、長期滞在と1人当たり消費額の拡大を図る。
 また、SNS上のネガティブ情報と実態との乖離を是正するため、中国市場では小紅書や抖音、欧米市場ではTikTokやYouTubeなどを活用し、インフルエンサーやKOLによる情報発信を強化する。安全面への信頼回復やPM2.5対策にも取り組む。さらに、地方都市への誘客に向け、交通手段とデジタル決済を組み合わせた体験型パッケージを推進する。信仰・巡礼、グルメ、健康、スポーツ、アドベンチャー、エンターテインメント、スローライフなどテーマ別のマーケティングを展開する。
 観光関連の中小企業支援では、TATが金融機関や関係当局との仲介役となり、低利融資や税制措置を通じて支援を行う。サービスの高度化や差別化を後押しし、オフシーズンの経営安定を図ることで事業者の退出を防ぎ、過度な価格競争の抑制につなげる。
 また、民間10団体との協議を通じ、短期・中期・長期の視点から支援策を取りまとめ、政府への提言材料としたことも明らかにした。観光産業の適応力を高め、質の高い持続可能な成長を実現するための施策を盛り込んでいる。
 同総裁によると、今後のTAT政策は以下の5つの方向性に基づく。
 (1)不必要な不安を招く政策の回避。エネルギー政策が観光停滞の要因とならないよう配慮し、特に輸送部門における燃料不足リスクを抑制する。国際路線のコスト抑制策として「Thailand Summer Blast」プロジェクトを7月まで継続する。
 (2)国内外観光客の信頼維持と強化。訪タイ外国人に対し、ビザ更新の利便性向上や滞在促進策を講じ、「滞在期間延長措置」を通じて長期滞在を支援する。
 (3)高付加価値の長距離旅行および域内旅行の促進。「ピース・ツーリズム」の概念のもと、持続可能で創造的な観光イメージを打ち出し、国際的な需要喚起を図る。
 (4)地方およびコミュニティへの利益還元の促進。「タイ・ティアウ・タイ」や「コミュニティ・プラス」の枠組みで国内旅行を促進し、相乗りなどの移動手段を活用してコスト削減や環境負荷軽減を図るとともに、「隠れた名所」の認知向上を進める。
 (5)持続可能な観光の推進。観光の質を高め、価値重視の構造へと転換する。安全性やサービス品質の向上に加え、長期滞在やヘルス・ウェルネス分野に重点を置く。
 さらに、TATは官民合同作業部会を設置し、状況のモニタリングや影響評価、施策の実行・監督を継続する。これにより、観光を「量の回復」から「質の回復」へと引き上げ、競争力と持続可能性を高め、観光産業をタイ経済の重要な柱として再構築する方針だ。

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