2024年7月15日(月)号

プリント基板の見本市=「タイ電子回路アジア」を開催

 投資委員会(BOI)は、タイ・プリント基板協会(THPCA)、香港プリント基板協会(HKPCA)と共同で、アジアにおける電子回路/同関連サービスの見本市、「タイ電子回路アジア(THECA)」を開催する。タイが電子回路生産のグローバルハブとしての潜在力を示すことが目的。BITEC展示場で7月24日~26日に開催される。
 ナリット・トゥードサティラサックBOI事務局長によると、半導体とプリント基板(PCB)産業で、製造拠点がタイにシフトする流れがあり、タイは世界の半導体/PCBの有力企業にとって魅力的な投資先になっている。インフラ、高度なスキルを持つ労働力、エレクトロニクス、PCBにおける強固なサプライチェーンが強み。

ナリットBOI事務局長


 電機・電子産業はタイ経済にとって極めて重要な産業で、輸出額は最も多く、国の輸出額の4分の1を占めている。過去3年間における、この分野への投資申請は5350億バーツを超える。特に23年は顕著な増加が見られた。3348億バーツに達し、22年から2.5倍増となり、すべての投資申請のほぼ40%を占めた。こうした成長は特にPCB、PCBAで顕著で、投資額は21年の156億バーツ、22年の159億バーツから、23年には1008億6000万バーツへと大幅に増加している。勢いは24年も続いており、1~5月には27件の申請があり、総額は360億4400万バーツに達した。主に中国、台湾、日本、香港からの投資が牽引している。
 ナリット事務局長は、タイ国内の電子機器製造基盤を持続可能に強化する上で重要な転換点なると指摘。BOIがサプライチェーン全体をカバーし、包括的にPCB産業をサポートする新たな投資奨励策を推進していると説明した。業界の連携を促し、PCBメーカーへの部品・原材料供給でタイの事業者にビジネス・チャンスをもたらすことが目的となっている。タイのPCBのサプライチェーンが強化され、スマート家電、自動車、通信、医療機器、自動化システム、ロボットなど、PCBを主要部品として使用するハイテク産業の成長を支援している。
 THECAはPCB業界における買い手と売り手の交流の場として機能する。ネットワークを構築し、部品取引、相手先ブランド製造 (OEM)、タイ企業と外国企業間の合弁事業につながる商談を見込んでいる。3日間のイベントで1000件の商談が生まれ、取引額は200億バーツを超えると予想している。
 THPCAのピタン・オンコーシット会長によると、BOIによる支援は世界的に注目を集めているという。現在、電子回路の世界市場シェアは4%。BOIの支援を受けてさらに50の工場が設立されればシェアは10%に上昇し、タイは中国、韓国、日本に次いで世界第4位になることができるとしている。
 世界のPCB市場は2026年までに3兆バーツに達すると予想され、年率3.3%の成長が見込まれている。小型、高効率、軽量で知られるHDI・PCBは、11.1%の成長が見込まれる。フレキシブルPCBは、ウェアラブル・テクノロジーやスマート・デバイスで需要があり、市場規模は26年までに 5300億バーツに達すると予測されている。
 同協会は、タイ・マイクロエレクトロニクスセンター(TMEC)、マハナコン工科大学と協力し、タイ電子回路センター(TECC)を設立した。センターは研究開発、サプライチェーンの強化、PCBプロトタイプの製作、国内の人材と電子製品の継続的な開発を進める拠点になる。

日本からの観光客=今年100万人を期待

 タイを訪れる日本人観光客の伸びが鈍化している。日本経済の回復が遅れていることに加え、円安が響いている。日本を訪れるタイ人の方が多く、日本人観光客の誘致を目指すタイ観光公団(TAT)にとって厳しい状況が続いている。コロナ禍が沈静化して以降、外国人観光客数は回復しているが、日本の回復の速度は他国に及ばない。
 TAT東京支所のカチョンデート・アピチャートトラクン所長は、今年の日本人観光客数は前年比10%増の100万人、来年も10%増を維持して110万人に達するとの見通しを示している。タイは日本人にとって依然としてトップクラスの海外旅行先で、航空便数も回復していることから、「出超」状態にある両国間の観光客数も来年には「入超」に戻すと見ている。
 今年1~5月に日本を訪れたタイ人観光客数は56万人。第3四半期はやや鈍化する見込み。TATはタイを訪れる日本人観光客の今年通年目標を87万人に置いているが、カチョンデート所長は100万人を突破できると見ている。実現すれば180万人だったコロナ前19年当時の半分超に回復する。日本は19年に中国、マレーシア、インド、韓国、ラオスに次いで6番目に大きい外国人観光客市場だったが、今年上半期は47万人で10位。ただし前年比では10%増を記録している。1人あたりの平均支出額は6万バーツ、平均滞在日数は11日となっている。
 下半期は両国を結ぶ航空便の増便が見込まれ、観光客数増につながると期待されている。タイ航空とタイ・エアアジアは名古屋便を増便する計画を打ち出している。増便が実現すれば航空運賃の低下にもつながる見込み。TATはタイ国内の航空各社に対し、コロナ禍で打ち切られたままの仙台便の復活や新規就航を検討するよう促している。コロナ前に比べれば航空便数は7割の水準に回復しているが、旅客の6割はタイ人。
 昨年、日本を訪れたタイ人観光客は99万5000人。タイを訪れた日本人観光客は80万4000人で、初めてタイ側の「出超」となった。カチョンデート所長は「来年にはタイに向かう日本人観光客の出足も回復するが、コロナ前の水準に戻るまではあと2年かかる」と予測している。
 タイのソフトパワーを前面に押し出すことで日本人のZ、Y世代の取り込みを図る方針。特にここ数年、タイのTVドラマが日本人の若い世代の中で人気になっており、コンテンツを絡めたマーケティング戦略を進めていく。タイは中高齢者やゴルフツアー目的の旅行先という、日本の若者たちが持つイメージを払拭する必要がある。日本の若者たちは旅費を節約するために、韓国、台湾、香港などに足を向けているが、タイまで足を伸ばしてもらえるようにしていく。
 同所長によると、日本人は個性重視の旅行が好きで、団体旅行は好まないことから、小さなグループや個人旅行者をターゲットにしたマーケティング戦略をとる。母子2人での旅行、青年実業家の視察旅行、2、3人の友人同士の旅行などが多いため、観光客のニーズに合うユニークな旅行企画が好まれる。タイのユニークさと安全性をアピールする多様なセグメントに分けた戦略が必要と見ている。同所長はオンラインでのマーケティングでも単独のインフルエンサーに依存した型に嵌まったコンテンツでは観光客を集められないと述べている。

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