2024年8月5日(月)号

タイ中銀が債務者援助措置を修正=カード債務の返済条件緩和

 タイ中央銀行のロナドン・ナムノン金融機関安定担当副総裁[=写真]は8月2日、債務者援助措置を修正すると語った。同日に開いた金融機関政策委員会(FIPC)の会合で決定した。支援を必要とする脆弱な債務者の所得がまだ完全に回復していないことから債務者救済策の調整が必要と判断した。カードローンの月々の最低支払額を残高の8%とする措置を25年末まで維持するほか、住宅ローンと個人ローンの債務を統合することで債務者を支援するよう金融機関に指導する。


 カード債務の月々の返済額は新型コロナのパンデミック期に5%に引き下げられていたが、今年初めから8%に引き上げになっており、来年初めから10%に戻すとしていたが、25年末までさらに1年間、8%を維持する。
 ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相はこれより前、5%に戻すよう求めていたが、ロナドン副総裁は債務者の9割以上が8%以上を返済できている事実を示している。最低支払額を5%に引き下げると、債務問題の解決が遅れ、債務者が支払わなければならない利息負担も増える。例えば3万バーツのカード債務を月々5%で支払う場合、金利負担は8%の場合の5700バーツから1万200バーツに増え、債務返済完了までの期間も5年から8年に延びる。
 家計債務問題の早期解決を図るため、月々の分割払い額が8%以上の債務者に対しては、残高にかかる利息の一部をキャッシュバックする措置を設ける。来年上半期には0.5%分の利息、下半期は0.25%をキャッシュバックする。債務者がより早期に債務を完済する動機付けのためで、3か月ごとに返還する。また月々5%は支払えるが、8%を支払えないでいる債務者は、不良債権に分類される前に債務リストラを求めることができるようにする。カード・ローンを長期ローン(タームローン)に変更し、分割払いで支払う。
 このほか中銀はカード会社に対し、金利の引き下げなどの追加の債務者援助措置を提示するよう求めており、9月までに実現させるとしている。
 中銀は商業銀行や政府系特殊金融機関に対し、住宅ローンと個人ローンを統合することで債務者を支援するよう求めている。住宅ローンには住宅の価格に対して提供できるローンの上限額を規制するLTVルールがあるが、個人ローンを統合する場合はこのルールを緩和し、上限を超えることを認める。ただし債務整理後の金利が以前よりも低くなる、月々の返済額が以前よりも減るなど、債務者の負担軽減が条件で、25年末まで適用する。
 中銀は「責任ある融資」の原則に基づき、永続的な債務を抱える者を支援する措置を実施している。来年1月1日からは債務者が債務返済を終えるまでの期間を5年以内から7年以内に延長する。金利の上限は年15%で変わらずで、債務者が追加の融資を受ける機会も引き続きある。金融機関は分割払いの期間や金利負担に関する情報を一覧表で表示しなければならない。
 ロナドン副総裁によると、タイ中銀は債務負担を抱えて資金繰りに難のある脆弱な債務者が返済負担を軽減し、生活に十分な資金を確保できるようにしたい考え。そのため金融機関が「責任ある融資」の原則に基づき、不良債権になる前となった後での債務リストラを進めるよう指導していることを強調した。

第2四半期の農林水産業=総生産が前年同期比1.5%減

 今年第2四半期の農林水産業の総生産は前年同期比で1.5%縮小した。通年では0.2~1.2%増となる見込み。農業・協同組合省農業経済事務局のチャンターノン・ワンナケーチョン事務局長によれば、エルニーニョ現象による旱魃が農作物の作況を悪化させたのが主因。また養殖漁業のコスト増で水産部門の生産が縮小した。
 エルニーニョ現象が収まり、今年の雨季は雨量が増えてきていることから下半期の生産は回復する見通し。通年ではプラス成長を維持できると予測している。政府による農業振興政策で、市場のニーズに合った作物の選択を奨励したり、先端技術の生産現場への採用が進んだりすれば、生産と流通の改善につながる。天候不順に備えた農業用水の確保、リスク対策のためのデータへのアクセス機会の拡大も進展している。
 同事務局長はリスク要因として、天候不順と病虫害、生産コスト増、地域紛争や貿易戦争に伴う国際貿易上の様々な障壁を挙げた。
 第2四半期の農業部門の総生産は1.4%減。エルニーニョ現象による旱魃で農業用水が不足した。生産が減少した主な作物は米、キャッサバ、パイナップル、天然ゴム、ロンガン、ドリアンなど。米は水不足で全国的に作況が悪化したほか、旱魃を避けて乾季米の作付を控える農家が多かった。キャッサバは旱魃で作況が悪化しただけでなく、昨年の旱魃による苗木不足が解消しておらず、生産減につながった。パイナップルも成長期の水不足で生育不良が増えた。ゴムは病害のほか、南部地方でパーム椰子に転換した農家が増えた。ロンガンは天候不順による作況不良とドリアンなどへの転換が進んだことで減少した。ドリアンは水不足と天候不順で着花率が低下した。結実しても収穫前に落果してしまうケースも多かった。
 一方で生産が拡大した作物もある。トウモロコシ、サトウキビ、パーム椰子、マンゴスチン、ランブータンなどの生産が増えた。トウモロコシは昨年の価格高騰が今季の作付増につながった。水不足のため稲作からの転作もあった。サトウキビは旱魃で収穫期が第2四半期にずれ込んだことが当期の生産を押し上げた。収穫までの日数が長期化したことで品質も向上した。パーム椰子は気温上昇により収穫を前倒しする農家が増えた。価格が下落する兆候を見せたこともこの動きを促した。マンゴスチンは昨年収穫を見合わせて果樹の育成を優先した農家が多かったことから、今年は大幅な生産増となっている。ランブータンはトラート県の収量が増えた。
 畜産部門の総生産は0.6%増だった。国内外の需要が堅調に推移し、農家の飼養技術の向上が効率改善につながった。養豚はアフリカ豚熱(AFS)対策で飼育現場での衛生管理の改善が進み、生産増につながった。ただ生体価格が上昇してこないため、零細農家が飼育頭数増に踏み切れない状態が続いている。養鶏は観光業の回復に伴う需要増で生産拡大に踏み切る農家が増え、生産を押し上げた。
 生産が縮小した畜産部門に採卵養鶏がある。慢性的に生産過剰の状態で、採卵数を調整しなければならない状況になっている。酪農も縮小した。飼育コストの高騰で廃業する酪農家が増えたほか、飼育頭数を減らしたり、肉牛へ転換したりする農場も少なくなかった。
 水産業は4.6%減。養殖漁業では価格が続落しているバナメイ・エビの生産が引き続き減少したほか、飼料コストの上昇でティラピアやプラーチョン(雷魚)なども減産となった。天然漁業では気候変動による海水温の上昇で漁獲量が減った。燃料費が高騰したことも漁船の操業の障害になった。
 農業サービス部門は1%減。トラクターによる耕起やコンバインによる収穫サービスが主で、いずれも作付・収穫の減少で受注量が減った。
 林業は2.7%増。老いたゴム樹を伐採して材木化するほか、新たな苗木の植え付けを請け負う事業が活発だった。ゴム樹は家具の材料として中国からの引き合いが増えた。ユーカリの木はウッドペレットの原料としての需要が増え、日本や韓国にも輸出されている。

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