2024年8月27日(火)号

失業率が2年ぶりに上昇=NESDCの社会状況報告

 国家経済社会開発評議会(NESDC)事務局が8月26日に発表した第2四半期の社会状況報告によれば、雇用が減少し、失業率はわずかに上昇した。農業部門の雇用の減少によるもので、非農業部門の雇用は増加している。ダヌチャー・ピチャヤナン事務局長は今年残り期間の雇用について、景気の回復にともない拡大する可能性が高いと見ている。
 第2四半期の就労者数は3950万人で、前年同期比0.4%減となった。農業部門の雇用が5%減少したためで、非農業部門の雇用は1.5%増だった。失業率は1.07%となり、第1四半期の1.01%、前年同期の1.06%から上昇した。失業率の上昇は2年ぶりで、新型コロナのパンデミックからの回復期に入って以降で初めて。失業者は43万人。過去に就労経験のある失業者が増える一方、新卒の失業者は特に大卒で減少した。
 観光業の回復が雇用を支えており、宿泊・飲食業の雇用は前年同期比で4.9%増と引き続き順調に増加している。製造業の雇用も輸出状況が上向いたことにともない改善した。
 NESDC事務局は今後注視すべき点として、デジタル技術とオートメーションによる雇用への影響を挙げた。影響を軽減するため労働者のスキル開発を提言している。分析的思考と創造的思考に加え、テクノロジーに対するリテラシー、特にAIスキルの重要性を強調した。
 マイクロソフトがLinkedInと共同で実施した調査によれば、タイの経営者の74%は、経験豊富だがAIスキルが不足している者よりも、経験は少ないがAIスキルを備えた者を雇用すると回答している。
 中小企業の資金繰り難と経済的なリスクの高まりが雇用に及ぼす影響も懸念している。不良債権の増加を受けて金融機関は中小企業向けの融資を削減している。中小企業向け融資の不良債権は昨年末時点で7.2%に達し、コロナ前19年時点の4.6%から大幅に上昇している。金利の上昇も経営コストに影響し、資金流動性を維持する上での制約になっている。こうした状況は中小企業の倒産や労働者解雇の増加につながる可能性があるため、持続可能な形で購買力を生み出す政策実施の必要性を指摘している。
 多雨による洪水が農産物や農業所得に及ぼす影響も目配りが必要になっている。5月上旬から雨季に入り、一部地域では大雨が続き、洪水被害が多発している。農業・協同組合省の報告によれば、7月16日から8月1日までの期間に15県で洪水被害が発生し、4万7944人の農民が影響を受けた。被災した農地は30万8238ライ。洪水被害の拡大は農家の債務返済能力に影響を及ぼす。

SEC、SET、AMLO=株取引犯罪抑止で協力覚書

 証券取引等監視委員会(SEC)事務局、タイ証券取引所(SET)、資金洗浄防止取締事務局(AMLO)は8月26日、SET本部ビルで証券取引をめぐる犯罪の抑止と取締に関する協力覚書を取り交わした[=写真]。署名式に立ち会ったピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相は、株式市場にダメージを及ぼす株価操作の予防措置について、株式市場が切望していたもので、市場に対する信頼感の改善に寄与するとコメントした。


 証券取引犯罪の防止と取締における協力を強化し、資金洗浄防止法を根拠法とする法の執行を徹底するため、関係機関の連携をより緊密なものにする。株式市場を監督する機関であるSEC事務局は、株価や出来高についてのSETからの情報をもとに不正行為の有無をチェックし、資金洗浄防止法の執行機関であるAMLOに通知する。その後AMLOが調査を引き継ぎ、資金洗浄防止法の枠組みに基づいた措置を講じる。
 ピチャイ氏は、市場の信頼を揺るがす犯罪行為に対し、投資家からは規制当局の仕事が遅いと批判されてきたと指摘。これまでは株式市場における犯罪を効果的に防止、抑制できなかったが、3者の協力で投資家の信頼感は改善すると述べている。株式取引に関する犯罪が発生した場合に3者が相互に情報を交換、共有することで、プロセスの重複がなくなり、迅速な法の執行が可能になると期待している。
 ウィシット・ウィシットソラアットSEC委員長は株式市場について、企業が国内外の投資家から資金を調達する場であり、そこで生じる犯罪は投資家に直接的な損害を与えるだけでなく、市場の評判を損ない、経済全般に広範な影響を及ぼすと指摘した。市場の信頼感を高める重要な要素は、優れたガバナンス、明確で有効な規制メカニズム、不正行為に対し効率的、迅速に法を執行することによる不正行為の抑止力だと強調。3者の協力は不正行為に対する法の執行の効率性と有効性を高める重要な一歩になると述べた。
 SET指数の過去のピークは1800ポイントで、SETの株式時価総額が22兆~23兆バーツを数えた時期もあったが、現在のSET指数は1300ポイント台にとどまっている。指数が100ポイント下落するごとに時価総額は1.2兆~1.3兆バーツ減少する。タイ株の大半はタイ人が保有しているため、ピチャイ氏はSET指数が200ポイント上昇して1500ポイント台に戻すだけで、タイ人の富は2.5兆バーツ増えると述べている。

大規模治水プロジェクト=新政権で構想復活へ

 近く正式に発足するペートンターン政権は、雨期の洪水と乾季の旱魃に対応するための大規模治水プロジェクトを復活させる方針だ。2011年の大洪水を受けて当時のインラック政権が計画したものの、その後の政変などもあって構想倒れに終わっていた。
 プームタム・ウェーチャヤチャイ副首相兼商業相(首相代行)が8月24日、ペートンターン首相と共に深刻な洪水被害が発生したナーン県を訪問した際にインラック政権が計画した治水プロジェクトを復活させる考えを明らかにした。当時の計画における総費用は2兆~3兆バーツだったことを示した上で、今実施すれば費用は5兆~6兆バーツに跳ね上がるかもしれないが、優先課題として取り組む価値はあると語った。ペートンターン首相が被災者を心配し、新政府の発足を待つ今は何もできないことを歯がゆく思っていると紹介する一方、自身が首相代行を務める暫定政府はできる限りのことをしているとした。
 プームタム首相代行は、新政権が発足すれば治水プロジェクトが真っ先に検討に付されると述べている。プアタイ党政権による国政運営を影で差配するタクシン元首相は22日の講演で、洪水と旱魃の慢性的な問題に対処するためのメガプロジェクトを新政府は実施する必要があると語っている。元首相は27日にチェンライ県を訪問して被災者を慰問した。
 内務省災害予防軽減局によれば、北部地方のチェンライ、ナーン、パヤオ、ペチャンブン、プレーの5県の冠水した地域はまだ水が引いていない。今週も26日から29日にかけて大雨の予報で、ピン川、ワン川、ヨム川、ナーン川の氾濫が予想されている。災害予防軽減局は北部12県(メーホンソン、チェンマイ、チェンライ、ラムパーン、パヤオ、プレー、ナーン、ウタラディット、ターク、スコータイ、ピッサヌローク、ペチャブン)、中部8県(カンチャナブリ、ナコンナヨック、プラチンブリ、チョンブリ、ラヨン、チャンタブリ、トラート、プラチュアップキリカン)、南部6県(ラノーン、パンガー、プーケット、クラビー、トラン、サトゥン)に洪水、地滑り、暴風雨の恐れがあるとして注意を呼び掛けている。
 チャクラポン・セーンマニー総理府相によれば、国家水資源事務局は8月26日に関連機関との会議を開いて被害状況を確認するとともに対策について協議した。同総理府相は、推定される降水量が2011年と同水準になるかどうかは今後の調査分析を待つ必要があるが、今年の水量は事前情報よりは明らかに多いと述べている。

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