2024年8月28日(水)号

7月の物品輸出15.2%増=伸び率は28か月で最高

 商業省が8月27日に発表した7月の物品輸出額は257億2060万㌦で、前年同月比15.2%増となった。前月のマイナス成長から上向き、伸び率は過去28か月で最高となった。石油/金地金/武器を除いた輸出額は9.3%増。プーンポン・ナイヤナパコン商業政策戦略事務局長によれば、8月の輸出も引き続き拡大する見通し。残り5か月間の輸出額が月間240億㌦に達すれば、通年の物品輸出額は前年比2%増を見込める。
 プーンポン事務局長によれば、世界的にインフレ率が低下したことで各国の消費者の購買力が上昇したことや、欧州を中心に貿易相手国の雇用増による消費の回復が輸出増につながった。特に米国、中国、アセアン、EUの主力市場向けが伸びている。中国経済の回復は世界経済にプラスになる。
 1~7月期の輸出額は前年同期比3.8%増。石油/金地金/武器を除いた輸出額は4.0%増となった。
 7月の物品輸入額は270億9380万㌦で、前年同月比13.1%増。貿易収支は13億7320万㌦の赤字となった。貿易赤字は3か月ぶり。1~7月合計の輸出額は1710億1060万㌦で前年同期比3.8%増、輸入額は1776億2650万㌦で同4.4%増。貿易収支は66億1590万㌦の赤字だった。
 7月の農産物/アグロインダストリー製品の輸出額は8.7%増で、前月のマイナス成長から上向いた。農産物は3.7%増、アグロインダストリー製品は14.6%増。
 天然ゴムの輸出額は55.4%増で、9か月連続で増加した。米は15.6%増で、増加は2か月連続となった。冷蔵・冷凍鶏肉・同調製品は13.6%増で、前月のマイナス成長から上向いた。水産缶詰・同加工品は20.4%増で、3か月ぶりに増加に転じた。ペットフードは26.6%増で、増加は10か月連続となった。動植物油脂は308.4%増となり、3か月連続で増加した。一方で、生鮮・冷蔵・冷凍・乾燥野菜は25.9%減、タピオカ製品は6.5%減、砂糖は39.1%減、飲料は10.4%減だった。
 1~7月の農産物/アグロインダストリー製品の輸出額は4.0%増。
 7月の工業製品の輸出額は15.6%増で、前月の減少から上向いた。石油関連製品が28.0%増となり、前月のマイナス成長から上向いたほか、コンピュータ・同部品は82.6%増と4か月連続で増加した。ゴム製品は13.8%増で、3か月ぶりに増加に転じた。電話機・同部品は34.1%増で、プラス成長は14か月連続。エアコン・同部品は3か月ぶりに増加に転じ、27.8%増となった。
 一方で自動車は12.8%減、集積回路は8.7%減、半導体/トランジスタ/ダイオードは16.6%減、エンジンは15.0%減だった。
 1~7月の工業製品の輸出額は3.8%増。
 仕向け地別に見ると、7月の主力市場向け輸出は16.2%増だった。米国、EU(27)、CLMV向けがそれぞれ順に26.3%増、17.1%増、19.8%増となったほか、中国向けとアセアン(5)向けは9.9%増、17.8%増となり、前月の減少から増加に転じた。日本向けは2.5%減と引き続き減少した。
 プーンポン事務局長は、今後の物品輸出を下押しするリスク要因としてバーツの上昇、海上運賃の高騰、主要国の選挙後の通商政策の不透明さを挙げている。

不良債権が増加傾向=6月末時点の比率は2.84%

 タイ中央銀行が8月27日に発表したところによれば、6月末時点の商業銀行の貸出残高は前年同期比で0.3%減となった。大企業向け融資が横ばいとなった一方、中小企業向けの融資は引き続き減少した。また信用リスクの高まりを受け、家計向けの貸付も伸びが鈍化している。不良債権(NPL、ステージ3)は5408億バーツへと微増した。家計向け貸付の焦げ付きが目立ち、不良債権比率は2.84%となった。要注意債権(ステージ2)の貸出残高に対する比率は6.50%で、3か月前から上昇した。
 スワニー・ジェサダーサック金融機関監督担当総裁補[=写真左]によれば、中小企業向け債権の不良化は特に年商5000万バーツ以下の小規模企業向けで増加している。家計向けの貸付では住宅ローンの拒否率が上昇しており、所得が月間3万バーツを超える層向けや500万バーツ以上の住宅購入に対するローンも、融資が拒否されるケースが増えているという。家計向け貸付の不良債権比率は3.13%に上昇した。家計向け貸付は自動車ローンや住宅ローンなど、すべてのポートフォリオで悪化している。スワニー氏は、月収が3万バーツを超える者や500万バーツ以上の住宅ローンで、不良債権が増加傾向にあることを低所得層向け債権よりも懸念している。


 一方、商業銀行の第2四半期の合計純利益は760億バーツを数え、前四半期比で11.8%増を記録した。銀行の業績は全体として安定しているが、一部の銀行は債権の質の劣化を受け、貸倒引当金を積み増している。金融機関リスク分析担当のアチャナー・ラムサム・シニアダイレクター[=写真右]は、タイの商業銀行の総資産利益率(ROA)がアセアン域内で最低水準にあることを指摘している。
 商業銀行の業績は全体として改善している。純利益は前四半期比11.8%増、前年同期比で2.7%増となった。子会社からの配当収入の増加が利益増に貢献している。ただし引当金の積み増しや非金利収入の減少から減益決算となった銀行もある。第2四半期の純金利収入は1730億バーツで前四半期比0.8%増、前年同期比では5.0%増となった。総収入の28%を占める非金利収入は前四半期比で15.8%増だった。
 引当費用は510億バーツで前四半期比9.6%増、前年同期比7.1%増となった。現時点で銀行システムは今後生じる不良債権に対処できるとアチャナー氏は指摘し、安定性についての心配は不要だと述べている。商銀の利益確保能力を純金利マージン(NIM)、自己資本利益率(ROE)、総資産利益率(ROA)から見ると、全体として良好な水準を保っている。タイの銀行のNIMはアセアン域内では中位レベルにあるが、ROAは低く、ROEは域内で最低水準になっている。
 「責任ある融資(RL)」に基づく債務者支援に目を向けると、今年上半期に債務再構成を受けた債務者は490万人で、対象となる債務の総額は1.5兆バーツに達している。商業銀行に対する債務が5300億バーツ、国営銀行に対する債務が9700億バーツ。
 スワニー総裁補は、構造的な問題や競争力の低下から業績が悪化する傾向にある中小企業や、所得の回復が遅れて財務が脆弱な一部家計の債務返済能力には引き続き目配りする必要があると指摘している。不良債権は徐々に増加すると予想しているが、管理可能なレベルにあり、不良債権が急増する「不良債権の崖」は生じないとした。

洪水対策予算91億バーツ=対策本部設置を閣議決定

 政府は8月27日に開いた閣議で総額91億バーツの洪水対策予算を認可した。24年度中央予算の緊急予備費から内務省に56億1600万バーツ、農業・協同組合省に25億6600万バーツ、天然資源・環境省に10億500万バーツを配分する。1000万バーツを超えない小規模事業を中心に3省合計で3032事業を実施する。
 一方、灌漑局はチャイナート県にあるチャオプラヤ・ダムの放水量を毎秒1400立米に引き上げると発表。下流域の水位が上昇するため、低地に住む者に水位を監視し、洪水に備えるよう呼びかけた。
 内務省災害予防軽減局によれば、8月16日から27日にかけてチェンマイ、チェンライ、パヤオ、ナーン、ラムパーン、プレー、スコータイ、ペチャブン、ウドンタニ、ラヨン、プーケット、ヤラー、ナコンシタマラートで河川の氾濫、暴風雨、地滑りなどの被害が発生している。これら13県の68郡281区1529か村が被災し、3万3597世帯が影響を受け、22人が死亡、19人が負傷している。
 プームタム・ウェーチャヤチャイ首相代行は、この日の閣議で洪水の被害状況の報告を受け、今後の対策実施のための洪水対策本部の設置を命じた。プームタム氏を本部長とし、アヌティン・チャーンウィラクン副首相兼内相、タマナット・プロムパオ農業・協同組合相や関係機関の長で構成する。対策本部は被災者の救助に取り組むほか、水位が低下してからの被災者の救済、長期的な治水計画の検討を進める。
 ピチャイ・チュンハチラ副首相兼財務相によれば、政府貯蓄銀行(GSB)、農業・農協銀行(BAAC)などの政府系特殊金融機関は被災者援助のため、元本返済の一時猶予、金利の引き下げに応じる。
 北部地方上部の氾濫水はスコータイ県まで下ってきている。ペートンターン首相は30日にもスコータイ県を訪問し、被災者を慰問すると明らかにしている。
 北部の水が首都圏に到達するのは9月2日と推定されている。チャッチャート・シティパン都知事は27日、ボートに乗ってチャオプラヤ川の護岸壁を実地検分した。2011年の大洪水後に堤防をかさ上げしており、増水による氾濫の懸念はないという。都知事は氾濫水の南下による大洪水は心配していないが、チェンライ県で生じた記録的な豪雨がバンコクでも生じた場合に広範な内水氾濫が避けられないことを懸念している。
 27日現在、チャオプラヤ川の流量はナコンサワン県で毎秒1169立米まで増えている。ロッブリ川、パーサック川が合流するアユタヤ県では、チャオプラヤ川の流量は毎秒1192立米を観測した。
 専門家は2011年の大洪水の再来を予想していない。11年のチャオプラヤ川の最大流量はナコンサワンで毎秒4686立米、チャオプラヤ・ダムで同3721立米を記録している。

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