2024年9月6日(金)号

SET指数1400ポイント回復=バーツは1ドル=33バーツ台に

 9月5日のタイ株式市場は海外の株高に連動して続伸し、SET株価指数は1400ポイント台を回復した。新内閣の発足、ワユパック・ファンドの売り出しとデジタルマネー給付政策継続の方針発表を好感して、幅広い業種の株価が上昇した。外国人投資家が買い越すなど、海外投資マネーの流入から外為市場ではバーツの対ドルレートが再び1ドル=33バーツ台に上昇した。
 5日のSET指数終値は1404.28ポイント。前日比38.79ポイント、率にして2.84%上昇した。この日の最高値は1406.49ポイント。売買代金は800億バーツを超えた。米国の経済指標が市場の予想を下回る状況が続いており、米連邦準備制度理事会(FRB)が大幅利下げに踏み切るとの観測が浮上。米長期金利が低下し、投資家はドルを売ってリスク資産での運用を増やし始めた。この動きを受け、外為市場では日本円やユーロが対ドルで上昇し、円高連動でバーツも上昇した。この日の中銀参照レートは1ドル=33.818バーツ。
 ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相は、株価の上昇についての記者団の質問に対し、株式市場の反応が政治情勢によることは明らかだと答えている。国会下院がプアタイ党のペートンターン・チナワット党首を首相に選出した8月16日時点のSET指数(1289.84ポイント)からでは116.65ポイントの上昇となった。5日の株式市場では外国人投資家が74億8460万バーツを買い越しており、22年12月以来、1年9か月ぶりの高水準を記録した。
 投資アナリスト協会(IAA)のパイブーン・ナリントランクン会長は5日の株価急騰の主因について、投資家が新内閣の発足に素早く反応し、デジタルマネー給付に代表される政府の景気刺激策への期待が株価を押し上げたと分析した。今後、各種の政策のスケジュールが徐々に明確になっていくことで、株価の上昇は続くと見ている。
 アジアで現在の株価が昨年末時点を下回っているのはタイと中国だけであることも、タイ株の上昇余地が大きいことを示している。パイブーン氏は買い材料が今後も続けば、SET指数は利食い売りをこなしながら昨年末時点の1461ポイントまで戻すと予想している。またバーツ高もタイの政治情勢の好転を反映しており、FRBの利下げ観測にともなう世界的なドル安の流れの中、今後も強基調が続きそう。
 ある証券アナリストは、株式運用の官製投資信託「ワユパック・ファンド」の売り出し日程が明らかになったことも、株価の上昇につながったと分析している。ラワロン・セーンサニット財務省次官によれば、近くワユパック・ファンド1を通じて1500億バーツの投資マネーが株式市場に新たに流入する見通し。新政権への移行による延期がなければ、ファンドの投資口は個人投資家向けで9月16~20日に募集し、機関投資家向けは18~20日に売り出す予定。投資口募集のための目論見書は10日にも発表になる。ファンドは10月10日までにSETでの運用を開始する。
 運用対象となるのは時価総額が大きく、配当性向が年3%以上の優良株。5日の株式市場ではPTT、SCB、CPN、OR、HMPRO、LH、RATCH、EGCO、AOT、KTB、CPALL、SCC、MINT、CRC、ADVANC、GULFなどが大きく値を上げた。
 ワユパック・ファンドに続き、個人所得控除の税制優遇が付くタイESGファンドからも、第4四半期終わりには株式市場に1200億~1700億バーツ流入すると予想されている。

最低賃金の改定=全国一律400Bは見送り

 ピパット・ラチャキットプラカン労相は9月5日、最低賃金を全国で1日あたり400バーツに引き上げる政策は政権が代わっても変更しないと述べた。ただし経済界が強く反発する全国一律での引き上げは目標とするものの、この10月からの実施は断念する。特定の職種や産業分野を対象にした最低賃金の引き上げが10月1日に実施される予定で、詳細はまもなく発表されると述べた。

ピパット労相


 最大与党のプアタイ党は23年の総選挙で、27年までに最低賃金を600バーツに引き上げると公約している。
 最低賃金は今年1月1日から1年3か月ぶりに改定されたが、官労使の代表で構成する中央賃金委員会は今年3月26日の会合で再度の改定を決定。プーケット県全域、スラタニ県サムイ島、チョンブリ県パタヤ市、チェンマイ県チェンマイ市、バンコクのパトゥムワン区とワタナー区など10都県の一部地域における従業員50人以上の4つ星以上のホテルに限って400バーツへの引き上げを決定し、4月13日から施行した。
 セーター政府は今年10月1日から全国一律400バーツに引き上げる方針を示していた。しかし産業界が強く反発し、撤回を余儀なくされている。最低賃金は各県の賃金委員会が改定の是非と改定幅を中央に提出。中央が全国のバランスを見て調整し、各県ごとの最低賃金が最終決定される仕組み。中央賃金委の決定が最終で、内閣の追認を経て実施に移される。
 消息筋によれば、県賃金委が400バーツへの引き上げを提示しているのはプーケット、バンコク、サムットプラカンの3都県のみ。据え置きを提示している県は23県あるという。改定を提示している県の改定幅は2~42バーツ。
 各都県の提案は中央賃金委の小委員会が9月9日までに検討を終えることになっている。

カジノ合法化政策=新政権でも継続

 チュラパン・アモンウィワット財務副大臣は9月5日、カジノ併設の複合娯楽施設開発計画を新政権でも進める考えを明らかにした。公聴会が開催され、参加者の8割が計画に同意しているという。与党第2党のプームチャイタイ党のアヌティン・チャーンウィラクン党首はセーター政権時にカジノ解禁に反対していたが、プアタイ党が大麻の禁止薬物再指定を撤回するのと引き換えに、反対しない意向を伝えたとされる。
 チュラパン副大臣によれば、財務省が起草したカジノを合法化する複合娯楽施設法案は公聴会を開催済み。公聴会で出た意見を反映させるための法案の微調整を進めているところ。修正作業を終えれば内閣に提出し、閣議承認後に国会下院に提出する。
 タイでは公営競馬と政府宝くじを除くギャンブルは違法だが、地下賭博が横行している。地下経済は巨大で、これを地上に引き上げることで税収増につなげるというのが、現政権を差配するタクシン元首相の考え。タクシン政権では闇くじを合法化した下2桁、3桁くじを制度化した(後に違法判断が下され廃止)。
 財務省の調査によると、カジノを含む複合娯楽施設は主に賭博好きのタイ人を惹きつけると予想され、客の90%を占めると見積もられている。外国人観光客を呼び込む効果は少ない。東南アジアでは、カンボジア、シンガポール、ミャンマー、フィリピンがカジノを合法化している。カンボジアとミャンマーのカジノの客はタイ人と中国人が圧倒的に多く、賭博好きのタイ人は週末のたびに近隣国のカジノに出かけている。
 施設運営は許可制で、運営会社は100億バーツ以上の資本金が必要。ライセンスの有効期間は30年で、1回につき10年間の更新可能。ライセンス料は50億バーツで、ほかに毎年10億バーツを支払う。カジノへの入場料は1人あたり最高5000バーツ。

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