2024年5月27日(月)号

日経フォーラムで首相講演=3つの課題で協力呼びかけ

 日本を訪問したセーター首相は5月24日午前、東京の帝国ホテルで開催された第29回日経フォーラム、アジアの未来で「不確実な世界におけるアジアのリーダーシップ」と題して講演した[=写真]。世界が地政学的対立、テクノロジーと環境の急激な変化、さらには新型コロナ流行という大きな変化と課題に直面したことをアジアが役割を果たす機会と捉え、一緒に問題を解決するための協力における3つの課題を提示した。

◆貿易と投資
 第1の課題は貿易と投資。経済の成長は平和と安定の基盤であり、社会と人の発展を促すものであることから経済成長は重要な影響を及ぼすと指摘。過去10年間に地政学的対立の影響から生産拠点を本国や近隣諸国、安全なパートナー国に移転させる現象が起きており、世界の経済成長の停滞を引き起こしていると述べ、アジア地域はこうした新たな状況に対応していく必要があると語った。アジアは新型コロナのパンデミックにより最も大きな打撃を受けた地域の一つである一方で、最も急速に回復している地域の一つでもあり、世界が抱える様々な課題と向き合うことができるとした。またアジアの影響力と戦略的重要性は徐々にではあるが確実に増大しており、アジアは世界貿易機関(WTO)の多角的貿易体制の下、自由で開かれた、公正、非差別的、透明かつ包括的な貿易・投資環境を促進する必要があると訴えた。
 アジア地域がアセアン+1の自由貿易協定などの協力を通じて長い道のりを歩んできたことを示し、世界人口の3分の1を占める最大級のFTAが実現することで、アジアにおける経済協力の可能性はさらに高まると述べた。首相はタイが19か国と15のFTAを締結しており、最近ではスリランカと締結し、EUやEFTAを含む7つのFTA交渉が進行中であることを示した。タイがOECD加盟を申請し、日本が支援を約束してくれていることへの感謝の意も表明した。

◆グリーン・トランジション
 首相は第2の協力課題としてグリーン・トランジション、気候変動への対応を挙げ、すべての当事者の協力が必要だと述べた。温室効果ガス排出を削減するためのタイ政府の継続的な取り組みの一環として、気候変動法を制定することを示し、気候変動・環境省を設立する構想も明らかにした。タイの気候変動対策には大きな進展が見られることを示し、グリーン水素や二酸化炭素回収技術への投資を歓迎すると呼び掛けた。
 首相はまた、タイが包括的なEV産業のサプライチェーンを構築しようとしていることを示し、2030年までに国内で生産される自動車の30%をゼロエミッション車とする「30@30」政策を紹介する一方、EVへの移行期間中もエンジン車を生産する日本の自動車メーカーを引き続き支援していくと約束。タイの自動車工業を牽引してきた日本の自動車メーカーが長年にわたり果たしてきた重要な役割を忘れはしないと強調した。
 クリーンで環境に優しいエネルギーの利用を促進するアセアンの協力についても触れ、再生可能エネルギーの利用拡大に向け、域内の送電システムを連携させるプロジェクト(アセアン・パワーグリッド)が進んでいることを紹介した。タイがクリーン・エネルギーの利用を増やす計画を有していることを示し、40年までに電力の少なくとも50%を再生可能エネルギーとする目標を示した。
 クリーン・エネルギーのエコシステムの構築にあたっては民間部門と金融機関が重要な役割を果たす。タイは21年からグリーン・ボンドを発行しており、今年は約10億㌦規模のサステナビリティ債を発行する予定だと語った。

◆DX
 第3の課題として、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を挙げた。DXは経済をつなぐだけではなく、完全なデジタル社会も創り出すと述べ、タイではデジタルに精通した国民がすでに移行に向けて動き始めていることを示した。特にコロナ禍を機にQRコードを使った決済が普及し、フードデリバリーやオンライン・ショッピングで欠かせないものになっていることや、タイの決済システムが国境を越えて多くの国と接続されていることを紹介した。これにはタイ人に最も人気の観光地である日本も含まれることを付け加えた。またアセアンでは世界初の地域協定となるデジタル経済枠組協定 (DEFA)について交渉中であることを紹介した。
 首相はこれら3つの課題への協力が、アジアの望む世界をつくるとし、誰もこの目標を一人で達成することはできないことからアジアの各国が責任を共有しなければならないと訴えた。アジアは、成長を促し、グローバル・システムへの信頼を回復させるため、協力して主導的役割を果たしていかなければならず、それこそが「アジアの世紀」を一層強固なものにするとし、今こそ実行に移す時であり、タイは日本とともに進むと講演を締めくくった。

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