2024年6月10日(月)号

国家エネルギー計画大綱=9月施行に向け公聴会開始

 エネルギー省は気候変動に伴う低環境負荷型エネルギーへの段階的な移行を見据えた国家エネルギー計画大綱を策定する。従来の電源開発計画(PDP)、代替エネルギー開発計画(AEDP)、エネルギー保全計画(EEP)、天然ガス運営管理計画(ガス・プラン)、石油燃料運営管理計画(オイル・プラン)の5計画を統合するもので、最新の5計画に関して公聴会を開き、幅広い意見を集約した上で大綱につなげる。
 先に公聴会の準備が整ったPDPとガス・プラン(いずれも計画期間は24~37年度)については、6月12、13両日に政府機関、国営企業、民間企業の代表を集めた公聴会を実施して意見を聴取する。17日と19日に各地方の一般国民の意見もオンラインで収集する。17日は午前が中部地方、午後が東北地方、19日は午前が南部地方、午後が北部地方の住民を対象とする。さらに19~23日の5日間はフェイスブック上でも意見を募る。
 残りの3計画(AEDP、EEP、オイル・プラン)については現在、エネルギー事業局、代替エネルギー開発・エネルギー保全局が準備中で、6月中に公聴会を終える予定。その後、策定された計画大綱原案は同省エネルギー政策運営委員会と国家エネルギー政策委員会、国家経済社会開発評議会(NESDC)の承認を経て、早ければ今年9月にも施行される。
 エネルギー政策企画事務局のウィラパット・キアッティフアンフー事務局長[=写真]によれば、PDPは電力安全保障、発電コストの適正水準維持、環境負荷の3点を重視したものになっている。特に発電コストについては、電力料金を1ユニット(㌔㍗時)あたり4バーツ以下に抑制することを目標に掲げた。代替エネルギーの利用増は発電コストを押し上げるため、目標はハードルが高いとの声もある。
 電力安全保障に関しては年間の停電時間を0.7日(17時間)以下に抑制する。また国民の節電を奨励するための措置も実施することで、1000メガ㍗の節電を実現、電力需要ピーク時の消費量低減も進める。環境負荷に関しては、水力発電、浮体式太陽光発電、電力貯蔵機能付き太陽光発電など先端技術を使った低環境負荷型発電の構成比の引き上げを図る。発電容量600メガ㍗規模の小規模原子力発電所の開発も検討している。同事務局長は、原子力発電については技術進歩もあり、安全性が飛躍的に上がっていることを強調している。


 PDPでは計画最終年となる2037年に電力需要が5万5000~5万6000メガ㍗に達すると予測している。従来予測は3万6000メガ㍗だったが、計画に従って発電容量のさらなる拡充が必要になる。特に北部と南部では慢性的な電力不足が続いている。
 新たな発電所の建設は2030年までにカーボン・ニュートラル、50年までにゼット・ゼロを実現するというタイ政府の国際公約と整合する必要があるため、代替エネルギーの比重を高めたものになる。従来計画で36%だった再生可能エネ発電の構成比を最新のPDPでは51%に引き上げる。太陽光発電が2万メガ㍗と、再生可能エネ発電全体の30%を占めることになる。
 ガス・プランは、需要を満たすのに充分な天然ガスの調達と、関連インフラの安全性・安定性・効率性を維持することを目的とするもので、長期的には天然ガスの需要が減少すると予測している。1日あたりの需要量は2024年における48億5900万立方フィートから、計画最終年の37年には47億4700万立方フィートまで減少する見通し。天然ガス火力発電で水素を5%混焼することや再生可能エネ発電の構成比が上がることが理由。また圧縮天然ガス(CNG)仕様車が減少傾向にあることも天然ガスの需要減につながる。
 一方、産業用のガス需要は依然堅調で、計画期間中も増加する見込み。タイ湾からのガス産出量が減少する見通しの中で、液化天然ガス(LNG)の輸入は増える。カンボジアとの領海主張重複海域におけるガス産出量については計画からは除外した。両国間の交渉など不確定要素が多いためで、計画期間中に産出が可能になった場合には計画を修正する。

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