エナジー・アブソルート（ＥＡ）＝創業者のソムポートＣＥＯ辞任
再生可能エネルギーのＳＥＴ上場企業、エナジー・アブソルート社（ＥＡ）が激震に揺れている。7月12日に創業者のソムポート・アフナイＣＥＯが横領容疑で証券取引等監視委員会（ＳＥＣ）の告発を受けて辞任した。ＥＡは15日に記者会見を開き、新たな取締役会長の任命や、チャチャワン・ヂアラワノン氏ほかを新たに取締役として迎える人事を発表した。
ＳＥＣは12日、ソムポート氏と取締役のアモン・サップタウィクン氏、ポンラート・テーチャラタノーパート氏を特別事件捜査局（ＤＳＩ）に告発した。ＥＡの太陽光発電事業進出にともなう海外からの機器やソフトウェアの調達で34億6564万バーツの会社資金を横領した疑い。事件は資金洗浄防止取締事務局（ＡＭＬＯ）も捜査する。これを受けソムポート氏とアモン氏は取締役からの辞任を表明。取締役会が両氏の辞任を承認した。
ＥＡは15日に開いた記者会見で、ソムチャイヌック・エントラクン氏（元財務省次官）がＣＥＯ代行に就任する人事を発表した。合わせてチャチャワン氏、ワス・クロムクリアン氏、チャトラポン・シープラトゥム氏を取締役に迎えたことを明らかにした。また取締役会の定数増を株主総会に諮った上で、スパン・モンコンスティ前タイ工業連盟（ＦＴＩ）会長を取締役に迎えると発表した。これによりＥＡの取締役は13人になる。元商業銀行幹部のワス氏はアモン氏に代わって最高財務責任者に就任する。
ソムチャイヌック氏はこの日の会見で、ＥＡをめぐるネガティブなニュースの影響を受けていることを認めた上で、本業は好調に推移していることを強調した。ソムポート氏とアモン氏に対する告発については、事実調査委員会を社内に設置し、速やかに取締役会に報告すると説明した。後任となるＣＥＯについては適任者を探している最中で、７月中に決定するとした。
ワス氏は、今年第3四半期と第4四半期に返済期日を迎える債務について、金融機関からの借入金が32億バーツ、社債が55億バーツあることを明らかにした上で、太陽光発電所や風力発電所からのキャッシュフローで返済可能だと強調した。社債の新規発行についても計画を進めるとしたほか、銀行も金融支援を継続していると述べている。予定する新規の社債が完売できなかった場合も、銀行が不足分をカバーすると説明した。
経営幹部の不正告発を受け、ＥＡはタイ証券取引所（ＳＥＴ）のＥＳＧ指定銘柄から除外された。また15日にはＥＡ株の取引を停止する「ＳＰ」サインが出ている。タイ債券市場協会（ＴＢＭＡ）も7月23日から12月12日にかけて償還日を迎える社債に警告サインを掲示した。ＴＲＩＳレーティングはＥＡの発行体格付と無担保社債の格付を「Ａ－」から「ＢＢＢ＋」に引き下げ、格付の方向性は「ネガティブ」とした。
ＥＡはバイオディーゼル製造から事業を興した。バイオディーゼル生産のパイオニアで、現在も大手の地位にある。その後に進出したのは再生可能エネルギー発電で、発電容量90メガ㍗に及ぶ当時としては最大級のメガソーラーを開発した。太陽光発電事業を経て風力発電にも進出。2013年にＳＥＴ上場を果たし、創業からわずか10年の新興企業でありながら「優良銘柄」としてもてはやされた。7年前にＥＶ充電ステーション、リチウムイオン・バッテリー生産、商用ＥＶ組み立てから成るＥＶ事業への進出を始めている。
15日の会見に同席したソムポート氏は、自身の個人的な問題で会社の信用を傷つけたことを謝罪した。ＥＡの事業自体は順調で、既存プロジェクトの多くが利益を上げていることを示し、先に粉飾決算で経営破綻の実態が明るみになったスターク・コーポレーションとは異なることを訴えた。
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