2024年8月6日(火)号

日産自動車タイ=ハイブリッド車優遇策に参加

 日産自動車タイランドの藤木稔大CEO[=写真右]はこのほど、タイのメディア向けに会見し、2025年以降に3~5車種の新モデルをタイ市場に投入すると述べた。またタイ政府が新たに設けるハイブリッド車(HEV)生産に対する投資優遇プログラムへの参加を表明、30億バーツ以上を追加投資すると明言した。


 今年4月に就任した藤木CEOは、日産がタイで70年以上の歴史を持つブランドであり、日産にとって今後もタイは重要な市場だと述べた。また、タイ市場が困難な時期にあることを認め、それを乗り越えるために、①ブランド②製品③ネットワーク④顧客満足の4つのアプローチで多くの課題に取り組んでいくと説明した。
 日産のブランドはすでにタイに定着しているものの、製品、技術、顧客満足度の向上によりブランド力をさらに強化していく。製品に関しては、販売するモデルに多くの選択肢があるわけではないが、25年以降は新型車を相次ぎ投入する予定。日産独自のハイブリッド技術の「Eパワー」を含む様々な選択肢を用意する。
 バッテリーEVの価格は魅力的な水準に下がり、タイ国内市場では熾烈な競争が生じている。タイ政府も2030年までに国内で生産される自動車の30%をEVとする「30@30政策」を打ち出している。藤木氏は、日産がタイ市場に長く関わってきたものの、EVがどの程度のスピードで普及していくのかは誰にもわからないと指摘。分析には時間がかかるため市場の変化を注意深く見ていくとした。
 一方で、HEVに関しては、政府がこのほど優遇政策を打ち出した。藤木氏は、日産もHEV奨励プログラムには関心があるとし、現時点では投資の詳細は未定であるものの、プログラムに参加する方針を示した。タイの新車市場が収縮傾向にあるなか、HEVの販売台数は伸びている。藤木氏は「日産はこの分野で優れた技術を持っている」と述べ、少なくとも政府が示した追加投資の最低基準を超える投資を予定していると明言した。
 国家EV政策委員会が7月26日に決定した「EV産業への移行支援策」では、ハイブリッド車の物品税率を二酸化炭素排出量が1㌔㍍走行につき100㌘未満で6%、100㌘超120㌘以下では9%に引き下げる。ただしこの税率の適用を受けるためには24~27年に30億バーツ以上の追加投資が必要。また国内で生産または組み立てられた主要部品を使用することも条件。26年からは国産バッテリーを使用し、その他の重要部品も28年以降は国内で生産または組み立てられたものを使用する必要がある。
 今年1~6月の日産のタイでの新車販売台数は5487台で、前年同期の9233台から40.6%減と低迷している。市場全体の減少率の24.2%を上回る下げとなっており、日産の市場シェアは1.8%まで低下した。現在、日産のショールームは141か所で、23年時点の161か所から減少している。藤木氏は経営目標について、実現可能な範囲で目標を設定していくとし、市場シェアは3%に引き上げることを当面の目標に据えた。

7日、14日の憲法裁判断=タイ政局流動化の可能性も

 タイの政界は今年最大の国家行事である7月28日の国王陛下72歳(6周期)誕生日の慶祝式典を終え、憲法裁判所の判断次第で今後の政局が流動化するおそれのある8月を迎えた。焦点は7日の前進党解党請求と14日のセーター首相の国務大臣資格問題をめぐる憲法判断となる。
 前進党は昨年の総選挙で最多議席を獲得したが、ピター・リムジャルンラット党首が上下両院合同での首相指名で敗れ、第2党のプアタイ党が前進党を外した連立政権を発足させた。
 前進党の現有議席は148。7日に憲法裁が示す判断は、解党か選挙委員会(EC)による請求却下の2つしかない。この裁判で問題になっているのは同党が刑法典第112条(不敬罪)の改正法案を下院に提出したこと。「国王を元首とする民主主義統治体制」を転覆させる、または敵対する行為にあたるかどうかが問われている。解党となった場合には執行部メンバーの被選挙権が剥奪される。執行部メンバー以外の議員(143人)は60日以内に他政党に移籍できる。この場合、政界では下院に議席を持たない「ティンガーカーオ・チャオウィライ党」に移籍するとの噂が流れている。
 14日のセーター首相の大臣資格裁判は、憲法裁の判断次第で政局が大きく変動する。この裁判は4月の内閣改造で、裁判官への贈賄で実刑となったことのあるピチット・チュンバーン氏を総理府大臣に任命したことが、国務大臣の倫理規定に抵触するとして、40人の上院議員(当時)が憲法裁に訴えた。
 首相が大臣資格を失った場合、プアタイ党の別の首相候補であるチャイカセーム・ニティシリ氏、ペートンターン・チナワット党首、与党第2党党首のアヌティン・チャーンウィラクン氏のいずれかが指名されることになりそう。一方、首相の大臣資格に問題なしとの判断が下った場合、セーター首相は続投するが、大規模な内閣改造や連立組み替えの可能性がささやかれている。
 プアタイ党の事実上のオーナーであるタクシン元首相をはじめ、政局を左右する重要人物が表舞台にいないことがタイ政治を見えにくくしている。仮釈放中のタクシン元首相は8月31日に刑期を終える。

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