エルニーニョ再来で米生産急減=農業被害620億バーツ、所得減も
クルンタイ銀行調査部(クルンタイ・コンパス)がこのほど公表したレポートは、2026年後半から2027年半ばにかけて発生するエルニーニョ現象により、タイの農業部門が620億バーツを超える被害を受けると予測している。米が最も大きな影響を受ける農産物となり、生産量は540万㌧減少し、被害額は430億バーツを超える見通し。農家の所得の減少に加え、精米業者のコスト上昇や食品インフレを押し上げる要因となる可能性がある。
クルンタイ・コンパスは、2026年後半から2027年半ばにかけて再び発生するエルニーニョ現象により、タイの農業部門が620億バーツ超、GDPの0.31%に相当する被害を受けると試算した。
中でも米が最も大きな影響を受ける主要農産物となり、生産量は540万㌧減少する見通しだ。農家の所得や精米業、食品産業への影響が懸念されることから、気候変動リスクの高まりに備え、関係者が早急に対応する必要があると提言している。
クルンタイ・コンパスは、2026~27年に再び発生するエルニーニョの影響を受け、タイの農業部門が国内で最も大きな打撃を受ける産業になるとの見方を示した。農業は国内の総用水量の75%を消費しており、他産業に比べて降雨不足や旱魃の影響を受けやすいためだ。
特に、タイの耕作地の80%超は灌漑区域外にあり、降雨に依存した農業が中心となっている。また、大半の農家は小規模経営で、資金力や水管理能力に限界があることから、旱魃への対応力は依然として十分とは言えない。
こうした状況から、タイの農業はエルニーニョ再来の影響を最も受ける可能性が高い。
エルニーニョ再来を示す重要な指標の一つが、南方振動指数(Southern Oscillation Index=SOI)の継続的な低下だ。2026年4月と5月のSOIは、それぞれマイナス11、マイナス14となり、平均ではマイナス13となった。エルニーニョが明確に形成され始めていることを示している。
さらに、エルニーニョの発生頻度も高まっている。従来は約5年ごとに発生していたが、2015年以降は約3年ごととなり、直近ではわずか2年で再発した。このため、農業部門は旱魃から十分に回復する時間を確保できなくなっている。
◆中部ダムの貯水量が危険水準下回る
国内の水事情にも警戒すべき兆候が現れている。2026年6月6日時点のデータでは、中部地方のダムで利用可能な貯水量は28%にとどまり、危険水準とされる30%を下回った。
水不足は、タイの主要農産物である米の生産に大きなリスクをもたらす。特に、2026年末に市場へ出荷される雨期米と、2027年前半に収穫期を迎える中部地方の乾期米への影響が懸念される。
クルンタイ・コンパスは、ベースケースで、エルニーニョによるタイ農業への被害額は620億バーツとなり、GDPの0.31%に相当すると試算した。
最も大きな影響を受けるのは主要農産物の米で、生産量は540万㌧減少し、被害額は430億4600万バーツに達する見通しだ。農業全体の被害額の3分の2を超える。このほかサトウキビは生産量1200万㌧減少、被害額107億1100万バーツ、キャッサバは生産量310万㌧減少、被害額80億9800万バーツと試算した。
農産物の減産を受け、多くの農産物価格は上昇する見込みだ。しかしクルンタイ・コンパスは、価格上昇だけでは生産量減少による損失を補うには不十分とみている。
2026年の農業所得指数は前年比約8%低下する見通しだ。主因は、米の生産量が約18%減少すると予想されていることにある。
2027年も農業所得は約2%減少する見込みで、生産量の減少と価格下落圧力が重なることが背景にある。
米の減産は精米業にも波及する。供給が逼迫し、籾の買い入れコストが上昇すると見込まれるためだ。クルンタイ・コンパスは、精米所へ搬入される籾の量が約18%減少すると予測している。これに伴い、籾価格は1㌧当たり7305バーツから約8000バーツへと約10%上昇する見通しだ。
一方、精米価格は輸出市場での競争があるため約7%しか引き上げられず、利益率は圧迫される。エネルギーコストも依然として高水準にあることから、営業利益率(OPM)は、大規模精米業者で0.7ポイント、中規模で0.6ポイント、小規模で0.3ポイント、それぞれ低下すると予測した。
エルニーニョの影響は、主に2つの経路を通じてタイ経済へ波及する。
一つは、生産量の減少による農家所得の落ち込みで、家計の購買力を押し下げる要因となる。
もう一つは、農産物原料価格の上昇によって食品産業や農産物加工業のコストが上昇し、食品の物価を押し上げる可能性があることだ。
クルンタイ・コンパスは、気候変動リスクへの対応を急ぐよう各方面に提言している。
企業は、契約栽培(コントラクト・ファーミング)や先渡し契約を活用して原材料の安定調達を図り、気候テック(Climate Tech)を導入して生産効率を高めるべきだとしている。
農家については、乾湿交互方式(AWD)など節水型の栽培方法を導入し、耐乾性品種を選択したうえで、気象予報を継続的に確認することを勧めている。
政府には、灌漑区域外の水インフラの整備を急ぐほか、早期警戒システムや気候リスクデータベースを整備し、タイ農業の長期的なレジリエンス(強靱性)を高める必要があると提言している。
クラビー県でノミニー企業を調査=120ライの土地取得、評価額20億バーツ
商業省、内務省、警察庁は7月24日、クラビー県でタイ人の名義貸し(ノミニー)を利用した不正な法人登記の合同取り締まりを行なった。外国人がタイ人名義を使って法人を登記し、外国人事業法などの規制を逃れる行為を摘発する。パラピー・スワンナチャウィ内務副大臣[=写真]が陣頭指揮を執った。

商業省事業開発局のプーンポン・ナイヤナパコン局長は、タイ人の名義を借りた法人登記は、外国人が外国人事業法の規制を免れ、国内で不正に事業を営む際に使う常套手段だと指摘した。外国人に禁止されている事業を営むだけでなく、登記した法人を隠れみのにして土地などの不動産を取得する違法行為も広がっていると説明した。
合同調査では、外国人が関与しているとみられる県内企業を中心に立ち入り検査を行なった。会社登記簿、株主名簿、決算書などの重要書類を確認したほか、事業資金の調達先、経営陣の構成、事業所の利用状況、株主と取締役の関係について関係者から事情を聴いた。
調査では複数の不審な事例が見つかった。2000年に設立された英国人が関与する企業では、タイ人が出資者として登記されていたが、登記後にこの人物が株主名簿から削除され、別のタイ人に入れ替えられていた。
さらに、同じタイ人の名前が県内3法人の株主名簿で交互に入れ替わり、いずれの法人でも同じタイ人が取締役を務めていたことが判明した。この法人はクラビー県内の土地22か所を自社名義で取得していた。総面積は120ライ、土地の評価額は計20億バーツを超え、これらの土地を公然と売りに出していた。
当局は今後、取得した情報を詳しく調べ、不正が確認された場合は土地所有権の剥奪を含む法的措置を取る。名義を貸すなど不正に加担したタイ人に対しても、関係機関が厳正に対処し、同様の違法行為の再発を防ぐ。
プーンポン局長は、名義貸しは外国人事業法に違反し、不正登記された法人による土地取得は土地法にも抵触すると説明した。刑法、資金洗浄防止法、国税法などに違反する行為が見つかった場合も、それぞれの法律に基づいて厳しく処罰すると述べた。
クラビー県は観光資源が豊富で、観光産業を中心に外国人の投資が盛んな県の一つとなっている。ホテル、リゾート、飲食店などに関わる外国人も多い。土地などの不動産取得が事業に欠かせない業種では、法規制を逃れて不正に取得しようとする動きが後を絶たない。
プーンポン局長は、外国人による不正な法人登記は、法律を守る国内法人との公正な競争を妨げると指摘した。税収の取りこぼしや、タイ経済に対する国内外からの信用低下にもつながるとして、取り締まりの重要性を強調した。
事業開発局のデータベースによると、7月22日時点でクラビー県内に登記された法人は4661事業所で、登録資本金は計337億2200万バーツとなっている。郡別ではムアン郡が2888事業所で最も多く、観光客の多いコランター郡が616事業所、ヌアクロン郡が307事業所、アオルック郡が266事業所、クロントム郡が205事業所、その他が379事業所だった。
このうち、外国人の出資比率が0~49.99%の法人は696事業所で、コランター郡が280事業所を占めた。外国人の出資比率が50%以上の法人は13事業所で、コランター郡には1事業所あった。
プーンポン局長は、今回の取り締まりは外国人投資を締め出すためではないと説明した。外国人による投資は歓迎するが、タイの法律を守り、公正で透明な法人登記と事業運営を行なう必要があると述べた。国際的に認められた基準に従うことが、公正な事業競争や国家経済の安定につながるとの認識を示した。
今回の検査で不正が確認された場合は例外なく厳しい措置を取り、不正が他の法人にも広がっていることが分かれば、捜査対象を拡大する方針だ。タイ人の名義貸しなどの不正行為を全国で取り締まり、根絶を図ると強調した。
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