2026年8月19日(水)号

BOIが東部の投資基盤強化=水・電力・人材で官民連携

 投資委員会(BOI)は、ハイテク産業への投資拡大に対応するため、東部地域の投資のエコシステム構築に力を入れる。国家水資源事務局(ONWR)、エネルギー事業監督委員会(ERC)、タイ工業団地公団(IEAT)、国家科学技術開発機構(NSTDA)と連携し、水、電力、投資用地の制約解消や、人材育成・技術開発による既存生産基盤の高度化を図る。高品質で環境に配慮した投資の拡大につなげる。
 BOIは8月14日、パタヤのセンタラ・グランド・ミラージュ・ビーチ・リゾートで「Eastern Thailand: Unlocking the Next Investment Frontier」と題したセミナーを開催した[=写真]。冒頭、ナリット・トゥードサティラサックBOI事務局長は、地政学的対立、デジタル経済やクリーンエネルギーへの移行、世界的なサプライチェーン再編、AI、ロボティクス、半導体、EV、バイオテクノロジーなど先端技術の急速な成長により、世界の経済・投資構造が大きく変化していると指摘した。


 アセアンへの投資拠点分散が加速するなか、タイにとって大きな機会が生まれていると強調。質の高い投資を誘致し、地域の未来産業拠点へ発展するには、特に国内最大の投資受け入れ地域となる東部で各種制約を解消し、基盤を強化する必要があるとした。
 セミナーには、東部地域で投資奨励を受けた国内外の事業者500人以上が参加した。主な業種は自動車・同部品、機械、電気・電子、金属・材料、化学・石油化学、農業・食品、サービス/インフラなどで、幅広い業種が東部地域での投資機会に高い関心を示した。
 ナリット事務局長によると、東部地域は国の重要な経済戦略拠点で、投資申請額が最も多い。2023年から26年上期までの3年半で、投資申請は4566件、申請額は2兆6000億バーツを超え、全国の申請額の約半分を占めた。県別ではチョンブリが1兆2900億バーツ超で最も多く、ラヨンが8370億バーツ、プラチンブリが2350億バーツ、チャチュンサオが2280億バーツで続いた。業種別の投資額上位3分野はデジタル、電子・電気機器、自動車・同部品だった。
 東部地域は交通・物流網、工業団地、港湾、空港、各種インフラに加え、層が厚く多様な事業者やサプライチェーンを持つ。投資拠点としてだけでなく、タイと世界市場を結ぶゲートウェイとしてのポテンシャルも高い。
 一方、先端技術を使う製造業をはじめとする新たな投資には、従来産業とは異なる支援基盤が必要となる。インフラの拡充、クラスター型の投資用地、高度人材の確保などについて、環境や地域社会への影響を抑えながら新規投資を受け入れられるよう、関係機関が連携して計画・管理する必要があると指摘した。
 ナリット事務局長は、世界の投資がハイテク産業主導へ移る中、世界的な潮流に合致し、タイが高い潜在力を持つ6分野に投資誘致の機会があると説明した。
 (1)バイオ/グリーン産業。農業、食品、クリーンエネルギー、医療などタイが従来から持つ強みを基盤に、バイオテクノロジーを活用して高度化する。
 (2)xEV産業。既存の自動車産業を基盤に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、バッテリーEV(BEV)など幅広い電動車と、バッテリーやモーターなど主要部品の生産拠点を構築する。
 (3)半導体・高度エレクトロニクス産業。タイの強固な電子産業基盤を活用し、より付加価値の高い川上工程への移行を図る。
 (4)デジタル・AI産業。急速に発展する世界の重要技術として、幅広い産業の高度化を支える。
 (5)自動化システム/ロボット産業。ヒューマノイドロボットやフィジカルAIへの進化を見据え、既存の自動車部品や電子部品の生産基盤を活用してロボット産業のサプライチェーンへの参入を図る。
 (6)国際ビジネスハブ。地域本社、調達・配送センター、研究開発(R&D)センターの設立を促し、地域のビジネス拠点としてタイの役割を高める。
 BOIは関係機関と連携し、電力やクリーンエネルギー、用水システム、投資用地の拡張、ビザ・就労許可制度の改善など、投資案件の実行を妨げる障壁の解消に取り組んでいる。「タイランド・ファストパス」を活用して重要投資案件の手続きを円滑化するほか、「スキル・ブリッジ」や競争力強化基金を通じ、高度人材の育成を加速し、重点産業が必要とする人材の確保を図る。
 ナリット事務局長は「新たな投資の波を受け入れるには、変化する産業のニーズに合わせてエコシステムを構築することが不可欠だ」と述べた。今回のセミナーには、東部地域の投資環境で重要な役割を担うONWR、ERC、IEAT、NSTDAが参加し、水やエネルギーの安定供給、用地・インフラの準備、高度技術・人材について各機関の対応を報告した。
 ONWRのパイトゥーン・ゲンガーンチャーン事務局次長は、経済成長と投資受け入れに向けた東部地域の水管理方針について説明した。東部経済回廊(EEC)の水需要は2037年までに約36億1500万㎥に達し、24年比22%増えると予測する。特に産業部門の水需要は58%増える見込みだ。
 ONWRは水資源の開発、地域間の配水ネットワーク(Water Grid)の接続、ポンプや導水システムの拡充などを通じ、水資源の安定確保を重視する。産業部門や都市の拡大、EECへの新規投資による将来の水需要の増加に持続可能な形で対応する。
 ERCのカノック・セーンルアン事務局次長は、データセンターなど新産業への投資による電力需要の増加に対応するため、政府がエネルギートランジションへの準備を進めていると説明した。電源開発計画「PDP 2026」の草案には、データセンターによる約6800~8800MWの電力需要を盛り込んでいるという。
 直接電力購入契約(ダイレクトPPA)、グリーン電力料金(UGT)、IPS、タイランド・パワーマップなどの仕組みやエネルギーインフラの拡充、LNGターミナルの活用を通じ、産業部門の電力需要への対応やクリーンエネルギーへのアクセスを支え、国の競争力向上につなげる考えを示した。
 IEATのスーメート・タンプラサート総裁は、ワンストップサービスやデジタルライセンスなど、事業を展開しやすい環境づくりや、各種インフラを備えた工業団地の開発を通じ、実際の投資につなげるIEATの役割を説明した。業務の効率性や柔軟性を高めるため、デジタルツインなどの技術も導入している。
 未来産業を受け入れる環境づくりにも取り組み、再生可能エネルギーの利用を通じた「RE100」目標への対応を支援する。事業運営の効率化と長期的な持続可能な成長につなげる方針だ。
 NSTDAのEECi産業連携部門を担当するラウィーパット・プットポーン部長は、生産性向上と競争力強化に向けたタイ製造業の「インダストリー4.0」への高度化について説明した。同部門はラヨン県ワンチャン郡のEECiにある「持続可能な製造イノベーションセンター(SMC)」を通じ、事業者を支援している。
 同センターでは「Thailand Industry 4.0 Readiness Index」による工場評価、人材育成、適切な技術選定への助言、ソリューションの検証から実際の導入まで幅広いサービスを提供し、製造業のインダストリー4.0への移行を支えている。

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