BOIが投資奨励を成果重視へ転換=実投資・国内付加価値を重視
投資委員会(BOI)は9月11日、エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相[=写真]を議長に開いた本会議で、経済構造改革に対応した新たな投資奨励方針を承認した。投資額や認可件数だけでなく、実際の投資実行や国内で生み出す付加価値を重視する。投資奨励企業の資本市場参入を支援する「BOItoIPO」も導入し、高い成長力を持つ企業の国内での資金調達と事業拡大を後押しする。また、この日の会議では17件、総額1210億バーツ超の投資プロジェクトを「タイランド・ファストパス」の対象に追加したほか、大型投資3件、総額96億4000万バーツへの投資奨励も認可した。

ナリット・トゥードサティラサックBOI事務局長によれば、新方針では、BOIがタイ経済の構造改革を支える役割を一段と強める。投資によって国内原材料の付加価値向上、タイ企業のサプライチェーン参入、高度技能人材の雇用、研究開発、技術移転など、タイ国内にどの程度の利益が生まれるかを重視する。
今回の見直しは、7月のBOI本会議での意見集約を受けたもの。「どのような価値を生み出すか」「どの産業を奨励するか」「どのように実行するか」の3点を主要課題とした。投資奨励を経済構造改革の手段として活用し、国の競争力向上と具体的な経済効果につなげる。
BOIの成果指標も見直す。国の主要目標と連動させ、戦略面と業務効率の双方から実際に生じた成果を測る。投資認可にとどまらず、実際の投資実行までつなげることを重視し、恩典の内容も各事業が国内にもたらす価値と連動させる。奨励対象の選定では、世界市場の需要、タイ経済にとっての戦略的重要性、国内産業の強みや潜在力を考慮する。成長機会が大きく、早期に形成・強化すべき産業への支援を重点化する一方、付加価値が低い事業、世界需要が縮小している事業、国内への経済効果が限定的な事業については奨励を段階的に縮小する。
関係機関の支援策とも連携し、投資家の事業立ち上げから実際の投資まで一体的に支援する。
ナリット事務局長は、関係機関と共同で「Joint KPI」を設定し、重要案件を継続的にフォローすると説明した。12年以内にタイを高所得国へ移行させ、国際競争力を世界上位20位以内へ引き上げるほか、経済成長率を年3%超、投資比率をGDPの30%超へ高める目標を支える考えを示した。
◆「BOItoIPO」を導入
会議ではBOIの投資奨励を受けた企業の株式市場上場を支援する「BOItoIPO」措置を承認した。BOI、タイ証券取引所(SET)、証券取引等監視委員会(SEC)が連携し、成長力を持つ企業が資本市場へ参入するための支援ルートを設ける。
BOIは追加の恩典を付与し、資本市場関係機関は上場準備やSET、オルタナティブ・インベストメント市場(mai)、スタートアップ向けの「LiVEx」への上場手続きを支援する。
タイで、外国企業が国内に生産拠点を設け、事業を拡大した後、タイ市場への上場に成功した例がある。デルタ・エレクトロニクス(タイランド)やカルコンプ・エレクトロニクス(タイランド)などが該当する。
「BOItoIPO」は、こうした企業を増やす狙いがある。特にニューエコノミー分野の企業がタイ国内で資金調達し、投資を継続できる環境をつくる。
追加恩典は2つの企業群に分ける。
ニューエコノミー企業でSETの認定を受けた場合、法人所得税を追加で3年間免除するか、5年間50%減税する。一般企業は、法人所得税を追加で2年間免除するか、3年間50%減税する。具体的な恩典は事業カテゴリーによって異なる。
ナリット事務局長は、投資奨励政策と資本市場を結びつけることで、成長企業がタイ国内で資金を調達し、継続して事業を拡大できると説明した。タイの投資家にも、高い成長力を持つ企業に投資する機会が広がる。上場企業にはガバナンスや情報開示の高度化も求められるため、投資奨励企業の透明性向上にもつながるとした。
◆ファストパス、17件を追加
BOIは、投資奨励を申請済みの17件を「タイランド・ファストパス」の対象に追加した。対象企業は15社で、投資額は1210億バーツ超。タイ人1万4000人超の雇用を計画する。内訳は、飼料2件で88億バーツ超、加工食品2件で243億バーツ超、電子・電機10件で839億バーツ超、自動車・部品3件で43億バーツ超。
これまでにファストパスの対象となった戦略産業の重要投資は25件、23社で、投資額は2230億バーツ超。質の高い雇用1万3000人超を計画する。
25件はいずれも投資奨励を認可済み。このうち11件は、関係機関からサービス基準期間(SLA)内に必要な許認可を取得した。残る14件は申請中、または今後申請する予定となっている。
対象案件ではすでに210億バーツ超の実際の投資が生じている。
今回の追加で、ファストパス対象は計42件、投資額3440億バーツ超となる。タイ人2万7000人超の雇用を見込む。
ファストパスでは、関係機関による許認可を迅速化し、事業開始までの障害を減らす。投資の早期実行を通じ、雇用、国内原材料・部品の使用、技術移転、産業競争力の向上につなげる。
◆シン・ケー・ユアンへの恩典停止を解除
会議は、鉄鋼ビレット製造事業で投資奨励を受けているシン・ケー・ユアン・スチール社への恩典一時停止措置を解除した。BOIは2025年4月11日、工業省の提案を受け、同社への恩典を一時停止していた。
工業省が工場法と工業製品規格法への違反を確認し、法令に適合させるため全工場の操業停止を命じていた。このため同社が是正し、工業省から操業再開を認められるまで恩典を停止することとしていた。
工業省は2026年8月28日付の文書で、同社が工場を法令に適合させる改善を完了したと通知した。工場局は同年6月5日付ですでに操業再開を認めている。これを受け、BOIは工場局が操業再開を認めた6月5日に遡って従来の恩典を再適用する。今後も工業省など関係機関と連携し、同社の事業運営を継続して監視する。
この日の会議は大型投資3件、総額96億4000万バーツへの投資奨励も認可した。
ウインド・マハサラカム1社は、マハサラカム県で風力発電事業を拡張する。発電能力は90MWで、タイ発電公団(EGAT)へ電力を販売する。投資額は31億7200万バーツ。
プレシジョン・プラスチック社は、アユタヤ県で無菌プラスチック包装・包装部品の生産を拡張する。30年以上にわたり無菌プラスチック包装の製造・販売を手掛けている。投資額は20億3300万バーツ。
シューキャン(タイランド)グループのシューキャン(タイランド)社は、ラヨン県ノンラローク工業団地で電子回路基板(PCBA)の生産を拡張する。中国四川省成都市に本社を置く同グループの主要顧客が、タイで光トランシーバーの生産拠点を拡張していることに対応する。生産ライン全体に表面実装技術(SMT)を採用する。投資額は44億3500万バーツ。
ナリット事務局長は、今回認可した3案件について、クリーンエネルギーの安定確保、タイ企業の生産基準向上、高度電子産業の基盤拡大など、国内経済への具体的な効果が期待できる投資だと説明した。
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