2026年10月22日(木)号

25年の貧困率3.27%に低下=地域・資産・教育格差は根強く

 国家経済社会開発評議会(NESDC)が公表した「2025年のタイにおける貧困・不平等状況分析報告書」によると、2025年の貧困人口は前年比111万人減の230万人となり、総人口に占める割合は前年の4.85%から3.27%へ低下した。農業部門の賃金上昇や政府の生活費支援策が貧困率の改善に寄与した。一方、所得格差には一定の改善がみられるものの、地域間の経済格差や資産の偏在、教育機会の不平等など構造的な問題は依然として根強い。貧困線をわずかに上回る「貧困予備群」も360万人に達しており、経済的に不安定な生活を送る国民がなお多い実態が浮き彫りとなった。
 2025年の貧困線は、1人当たり月額3044バーツに上昇した。貧困線は生活に必要な食糧やその他の商品・サービスに対する支出を基に算出されるもので、これを下回る人々が貧困人口に分類される。
 貧困率改善の主な要因は、農業部門の労働賃金が前年比4.88%上昇し、非農業部門の1.35%を大きく上回ったことだ。貧困層には農業従事者が多く、賃金の上昇が家計の購買力改善につながった。政府による各種支援策も家計の資金繰りを補い、生活費負担の軽減に寄与している。
 2025年に貧困層が政府から受け取った生活保護などの支援金は、1人当たり月額平均346バーツ増加した。支援金の水準は貧困線の20.38%に相当し、2023年の9.15%から大幅に上昇。政府による現金給付や生活費支援が貧困層の消費を下支えしたことを示している。
 労働者の貧困状況も改善した。特に貧困労働者の割合が最も高い農業部門では、2024年の8.72%から2025年には6.05%へ低下した。労働賃金の上昇に加え、ラニーニャ現象の影響による良好な気象条件が農業生産を支えた。十分な水資源が確保されたことで主要農作物の生産量は18%増加し、生産資材コストも安定し始めた。
 一方、運輸、情報通信、金融、医療など、テクノロジーや高度なサービスに関連する現代的サービス部門では、貧困労働者の割合が2024年の0.64%から2025年には0.40%へ低下し、産業別で最も低い水準となった。同部門の労働者は比較的高い収入と安定した雇用を得やすく、専門技能を必要とする職種に加え、関連する支援業務でも多様な雇用機会が生まれている。
 ただし、NESDCは貧困人口の減少が必ずしも国民の経済的安定を意味するわけではないと指摘。貧困予備群の存在、地域格差、扶養・債務負担、資産と教育機会の偏在という4つの構造的な脆弱性に警鐘を鳴らしている。
◆貧困予備群360万人、生活悪化で転落リスク
 第1の課題は、貧困線をわずかに上回る「Near Poor(貧困予備群)」の存在だ。2025年には約360万人が該当し、総人口の4.88%を占めた。
 貧困予備群は、1人当たりの消費支出が貧困線を上回っているものの、その差が20%以内にとどまる人々を指す。収入の減少や物価上昇、失業、予期しない経済危機などに直面すれば、容易に貧困層へ転落する危険性がある。
 NESDCは、こうした人々の生活基盤が依然として脆弱なことから、貧困層への支援だけでなく、貧困予備群が生活水準を維持できるようにする対策も重要と指摘している。
◆南部の貧困率6.57%、地域格差が継続
 第2の課題は地域間の経済格差だ。貧困問題は依然として都市部以外の地域に集中している。
 2025年の市街区域(テーサバン)外の住民の貧困率は4.32%で、市街区域内の約2.15倍となった。都市部と地方では雇用や所得、公共サービスへのアクセスに差があり、経済的な機会の不均衡が続いている。
 地域別では南部の貧困率が6.57%と最も高く、東北部の4.23%、北部の4.18%が続いた。一方、貧困人口の絶対数では東北部が全国の33.22%を占め、最大の集中地域となっている。
 県別ではメーホンソン県の25.37%が最も高く、パッタニ県の21.21%、ヤラー県の18.05%が続いた。これらの県では経済活動や雇用機会、公共サービスへのアクセスなどに制約があり、貧困問題が長期化する要因となっている。
 NESDCは、地域の産業構造や生活環境に応じた対策を講じ、地域間の経済機会の格差を縮小する必要があると指摘している。
◆貧困世帯の扶養負担101.64%、債務も重荷に
 第3の課題は、高い扶養負担と生活費・農業向け債務への依存だ。
 貧困世帯の扶養比率は101.64%に達し、非貧困世帯の62.81%を大きく上回った。生産年齢人口1人に対して、子供や高齢者などの扶養対象者が1人以上いる計算となり、働き手の経済的負担が重くなっている。
 債務の構成にも貧困世帯の脆弱性が表れている。貧困層の負債の87.62%は、日常の消費や農業生産のための借入が占める。このうち消費向けが45.24%、農業向けが42.38%となっている。
 借入金が日常生活の維持や農業生産に充てられる一方、所得の一部を返済に回さなければならず、家計の貯蓄や新たな投資に使える資金が限られている。こうした状況は、予期しない支出や収入の減少に対する家計の対応力を弱める要因となっている。
◆金融資産の47%が高所得層に集中
 第4の課題は資産と教育機会の不平等だ。国内の金融資産は依然として高所得層に集中しており、所得上位10%の層が金融資産全体の47.00%を保有している。
 一方、貧困層では教育機会の制約が所得の向上を妨げる要因となっている。貧困層の73.57%は最終学歴が小学校卒業以下で、より高い収入を得られる職業への就業機会が限られている。
 貧困世帯の子供の教育関連支出をみると、通学のための交通費が全体の42.76%を占める。教育費のなかでも通学に伴う負担が大きく、学校へのアクセスが家計に重い負担となっている実態が示された。
 NESDCは、資産保有や教育機会の格差が世代を超えて引き継がれることで、貧困からの脱却が一段と難しくなる可能性を指摘。教育へのアクセス改善や技能開発、安定した就業機会の確保が重要になるとしている。
◆現金給付中心から所得創出・技能開発へ
 こうした分析を踏まえ、NESDCは政府に対し、短期的な影響を緩和する現金給付中心の政策から、所得創出や技能向上に重点を置く「対象を絞った政策」への転換を提言した。
 貧困層や貧困予備群が抱える課題は所得水準や居住地域、家族構成、就業状況などによって異なる。このため、一律の支援ではなく、それぞれの生活環境や経済的な脆弱性に応じた施策を講じる必要があるとした。
 また、地域の特性に応じた経済開発を進め、都市部に集中する経済機会を地方へ広げる一方、災害や経済危機などの状況変化に対応できる「Adaptive Social Protection(適応型社会保護)」の仕組みを構築することも重要と指摘した。
 NESDCは、短期的な生活支援だけでなく、安定した収入を得るための能力向上や雇用機会の拡大を重視し、世代を超えて続く不平等の連鎖を断ち切る必要があると提言している。

スイスとFTA活用=中小企業の供給網参入を支援

 スパチー・スタムパン副首相兼商業相は10月16日、商業省本庁舎でスイス連邦経済事務局(SECO)のヘレーネ・ブードリガー・アルティエダ事務局長率いる財界代表団と会談し、貿易・投資分野での協力拡大について協議した[=写真]。2027年1月1日の発効を目指すタイ・欧州自由貿易連合(EFTA)間のFTAの活用に向けた準備を進め、ビジネス機会の創出や技術移転、タイ企業、特に中小企業(SME)のグローバル企業のサプライチェーンへの参入拡大を図る方針を示した。


 訪問団にはスイスの有力企業の経営幹部らが多数参加した。食品・飲料大手ネスレは、タイで新たなコーヒー工場の建設やペットフード事業などへの継続的な投資を計画している。総合物流大手キューネ&ナーゲルは、クラウドやデータセンター関連のサプライチェーンにおけるタイの潜在力を評価し、倉庫管理や航空貨物輸送分野への投資を計画している。
 医薬品・医療技術大手のノバルティスとロシュは、医療研究やイノベーション分野での協力拡大が期待される。先進材料技術企業のエリコンは、タイの航空・半導体産業に対応した投資拡大に関心を示している。
 このほか、エコノミースイス、スイスメム、スイスレール、SIFEM、SERV、スイス・グローバル・エンタープライズ(S-GE)、DKSHなど、スイスの経済団体や経済支援機関の代表も参加した。産業、技術、輸送システム、金融、貿易・投資促進など、幅広い分野での協力拡大が期待される。
 スパチー副首相は、FTAの成功は交渉の妥結だけでなく、企業が協定を実際に活用できるかどうかにかかっていると強調した。商業省はタイ企業、特に中小企業が国際基準に沿って商品・サービスの品質を高め、世界的なネットワークを持つ有力企業と連携できるよう準備を進めている。国際的なサプライチェーンへの参入機会を拡大し、国内での付加価値創出につなげる。
 また、先端技術・イノベーション産業や再生可能エネルギー分野への投資誘致にも力を入れ、知識・技術の移転、労働者の技能向上、双方のビジネス機会の創出を重視する方針を示した。貿易・投資の双方で「相互利益」を追求し、タイの競争力強化とスイス企業の事業機会拡大を通じ、持続可能な経済成長を実現する必要性を強調した。
 双方はまた、知的財産権の保護、通関手続き上の障害削減、事業活動の円滑化に向けたデジタルシステムの活用、明確な連絡窓口の設置など、貿易・投資に適したビジネス環境の構築についても協議した。情報照会や事業運営上の課題解決を円滑に行なえるようにする。

[経済ニュース]
QUICK=21日にmai上場

クルンシーがJCB新カード=2027年に新規2万枚発行目指す

REICとJREI=不動産情報分野で協力強化

タイとフランス=エネルギー協力強化

タイとシンガポール=スタートアップ支援で連携

タイ・EUのFTA年内妥結へ=オランダと市場開放・投資協議

FTIとTCEB協力=国際見本市で輸出・投資拡大へ

外国人投資額、1~9月7%増=シンガポールが投資額首位

クルンシーは1~9月3.9%増益=大企業・アセアン融資が拡大

出国税の徴収は未決定=財務省、計画変更も可能

エークニティ財務相=APECでSTI戦略提示

アジア・ホテル=ttbがグリーンローン

セーナーがSAMと提携=賃貸積立、月4500バーツから

アナンダがクリスティーズと提携=高級ヴィラ12棟を海外販売

[社会ニュース]
プライマリ・ケア予算を拡充=全国76県108郡が対象

ノミニー土地保有疑惑1397件=違法分は強制売却へ

中国研修旅行巡り詐欺疑惑=生徒62人ら、警察に捜査要請

「ネネ・ロイヤル」商標出願で波紋=第三者が先願、知的財産局が調査

カバの餌やり失敗動画が話題=動物園が練習用の模型を設置

[トピックス]
IMF・世銀年次総会が閉幕=金融安定・投資促進で協力強化

[トピックス]
詐欺に強靱な金融サービスのためのバンコク・ブループリント

[データ]
工業経済事務局(OIE)の工業生産

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