2026年11月6日(金)号

財務相、K字型成長の是正へ=重点7産業を推進、11日に改革戦略

 エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相は、成長の恩恵が一部の産業や企業に集中するタイ経済の「K字型成長」を是正し、幅広い産業や国民が成長の恩恵を受ける「V字型成長」への転換を目指す方針を示した。官民連携によって7つの重点産業を育成し、GDP成長率3%超、GDPに対する投資比率30%への引き上げを目指す。11月9日に重点産業の重要業績評価指標(KPI)、11日には財務省の業務改革戦略を発表する。
 エークニティ氏が11月4日、サイアム・パラゴンで開催された「THE STANDARD ECONOMIC FORUM 2026:Reinvent Thailand」で、「高所得国へのタイの道筋」をテーマに講演した[=写真]。


 同氏は、世界の分断が進むなか、タイは各国をつなぐ役割を担い、その立場を生かして海外からの投資を呼び込んでいると説明した。一方、投資が拡大しても国民がその恩恵を十分に実感できない背景には、成長産業と低迷する産業の二極化が進むK字型の経済構造があると指摘した。
 エークニティ氏は「タイは幸運にもK字型の成長を維持している。AI産業によって上向きの部分が残っているためだ」と述べた。世界には経済が下向きの「A字型」に陥っている国も少なくないとし、自身の役割はK字型の下側を引き上げ、V字型の成長に転換することだと強調した。
 このため、投資委員会(BOI)を活用して次世代産業への投資を誘致するとともに、タイ企業や国民が新たな事業に参加できる環境を整える。特に労働者の技能開発とタイ人の雇用創出を重視し、その成果をKPIで評価する方針だ。新たな技能を必要とする分野では、すでに12万人以上の雇用を創出したと説明した。
 BOIの投資促進策についても、従来の投資申請額を重視する評価から、実際に行なわれた投資や雇用創出、技能開発などの成果を重視する方式へ転換する。タイの中小企業が海外企業のサプライチェーンに参入できるよう支援し、投資拡大の恩恵を国内に広げる。
 産業高度化戦略「Reinvent Thailand」では、民間部門が主導的な役割を担い、経済問題解決のための官民合同委員会と連携して7産業を重点的に振興する。対象は①農業・食品加工、②自動車、③小売・商業、④スマートエレクトロニクス、⑤医療・ウェルネス、⑥観光、⑦クリエイティブ・エコノミーの7分野。官民の協力を通じて既存産業の高度化と新産業の育成を進め、成長の恩恵を幅広い層に広げる。
 また、投資手続きを迅速化する「タイランド・ファストパス」によって投資上の障害を取り除いた結果、第3四半期に実際に行なわれた投資は27%増加したと説明した。
 政府は高所得国への移行に向け、3つの数値目標を掲げる。第1はGDP成長率を3%超に高めること。第2はGDPに対する投資比率を現在の22%から30%へ引き上げること。第3は今後4年間で国際競争力ランキングを現在の26位から世界上位20位以内に高めることだ。
 エークニティ氏は、こうした目標の達成には、投資額の拡大だけでなく、実際の雇用創出や技術移転、タイ企業の事業機会拡大につなげることが重要だと指摘した。また、タイが長年抱えてきた構造的な問題を解決するには、政府と民間部門の協力が不可欠だと強調。民間部門をサッカーの攻撃陣に例え、自身は各産業の取り組みを調整し、支援する中盤の役割を担うと説明した。
 重点7産業の振興に向けたKPIは11月9日に発表する。官民合同委員会の4つの小委員会が、投資促進や人材育成、規制改革などの取り組みについて具体的な成果目標を示す予定だ。一方、財務省は11月11日、業務改革に向けた「STI・DEE」戦略を発表する。
 同戦略は「Stabilize Today(現在の安定化)」「Transition Now(今すぐ移行)」「Invest for Tomorrow(未来への投資)」を基本方針とし、経済の安定維持と構造転換、将来に向けた投資を並行して進める。さらに「Disclosure(情報開示)」「Easy(簡便化)」「Efficiency(効率性)」の3つの要素を盛り込み、行政運営の透明性と利便性、効率性を高める。
 情報開示では、行政の透明性を高めるため、過去5年間の政府調達に関するデータを公表する。簡便化ではデジタル技術を活用し、国民が行政サービスを利用する際の手続きを簡素化する。
 効率性では、施策の費用対効果や実効性を重視し、政府部門が効果の高い事業を選択して実施する仕組みを整える。
 エークニティ氏は、重点産業の育成と行政改革を並行して進めることで、投資拡大の成果を国内経済全体に波及させ、タイの高所得国への移行を目指す方針を強調した。

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