第27回アセアン+3首脳会議=3つの重要課題で協力強化提言
ペートンターン首相は10月10日午後2時、ラオスのビエンチャンで開催された第27回アセアン+3首脳会議に出席し、強靱で持続可能で繁栄した東アジア地域を促進する上での3つの重要課題を強調する声明を発した。オンライン詐欺などの国境を越えた犯罪、気候変動、金融の安定を課題に挙げ、団結して対処していく必要性を訴えた。
アセアン+3は1997年のアジア金融危機を契機に発足し、地域のセーフティネット強化に向けた協力で重要な役割を果たしてきた。アセアンと日中韓のGDPは世界全体の25%を超え、アセアン+3の協力には大きなポテンシャルがある。今年の会議のテーマは「連結性と強靭性の強化」。
ペートンターン首相はオンライン詐欺がデジタル・エコシステムに対する国民の信頼感を損なう要因になっていることを指摘し、タイがサイバー犯罪やオンライン詐欺に対処するアセアン+3のプロジェクトを支援する用意があると述べた。国境を越えた犯罪を抑制するため、法執行機関の協力の強化を訴え、アセアン+3高官会議で昨年に採択された協力計画の実施を支援するとした。
2つ目の課題に食糧安全保障と水資源管理の強化を挙げた。気候変動がもたらす課題に早急に対処する必要があると指摘。アセアン+3緊急米備蓄機関(APTERR)の事務局がタイにあることから、米の追加備蓄を支援するAPTEERの拡大を支援する用意があると表明した。またスマート農業、水管理技術分野における能力開発と知識交換を支援するとした。
緊急米備蓄の取組を主導してきたのは日本で、石破茂首相はアセアン食料安全保障情報システムの組織強化を含め、食料安全保障分野での協力について議論を主導していく意向を表明した。
3つ目の課題は金融の安定の促進で、1997年のアジア通貨危機を教訓として設立されたチェンマイ・イニシアティブを発展させた「チェンマイ・イニシアティブ・マルチ」(CMIM)を通じた緊急資金へのアクセス、アジア債券市場イニシアティブに基づく現地通貨建て債券の発行などの現地通貨の使用を促進するアセアン+3のメカニズムをサポートする。今年5月には日本の主導で、チェンマイ・イニシアティブの下、緊急融資ファシリティ(Rapid Financing Facility)の創設で合意している。
首相は来年にタイがアジア協力対話(ACD)の議長国を務め、第4回首脳会議をタイで開くことも伝えた。
一方、石破茂首相は地域の安定と繁栄のため、アセアン+3の協力を発展させたいと述べた。日本が「日・アセアン包括的連結性イニシアティブ」の下、ハード、ソフトの両面で、質の高い強靱なインフラの整備に取り組んでいることを示した。また、新たな課題であるグリーン・トランスフォメーション(GX)やデジタル・トランスフォメーション(DX)に関する協力も進め、地域の連結性・強靱性の強化に努めると表明した。アセアン感染症対策センターへの日本人専門家の派遣などを通じた地域の感染症の面での強靱性の強化にも言及した。
アセアンはこの日、午前中に中国、韓国、日本とも個別に首脳会議を開催した。ペートンターン首相は中国との首脳会議では経済統合と連結性、人的交流、安全保障の3分野の協力を強調した。アセアン・韓国首脳会議では首相がアセアンを代表して声明を発した。アセアン・日本首脳会議では、デジタル、グリーン・エネルギー、イノベーションでの相互協力の強化を提案した。
第27回日・アセアン首脳会議
10日午前11時40分に始まった日・アセアン首脳会議で、石破首相は日本とアセアンが半世紀にわたる信頼関係を構築してきたことを指摘し、関係をさらに強固にする強い決意を伝えた。日本は、自由、民主主義、法の支配など諸原則を共有し、世界の成長センターであるアセアンと共に未来を創り、未来を守っていきたいと述べた。また昨年の日・アセアン友好協力50周年特別首脳会議で、日本とアセアンが「信頼のパートナー」として打ち出した三本柱の協力が進展していることを評価した。「日・アセアン包括的連結性イニシアティブ」の下、デジタル、交通インフラ整備、電力連結性などハード・ソフト両面の幅広い分野でプロジェクトが進展し、地域金融協力も推進していると述べた。
アセアン各国首脳はDX、GXといった新たな分野を含め日本との協力深化への高い期待を表明した。
ペートンターン首相はDXの重要な部分であるAIや電子商取引など新興のデジタル分野への日本企業の投資を期待していると述べた。零細・中小企業(MSME)のスキル開発で日アセアンの協力の強化を訴えた。テクノロジーの急速な発展が国民に多くの恩恵をもたらした一方で、悪用の可能性も広がっていることを指摘し、サイバーセキュリティ分野の人材育成のための日・アセアン協力センターを通じてサイバー・セキュリティを推進し、サイバー犯罪に対抗する必要があるとの見解を披露した。
GXの推進では、環境に優しい次世代自動車産業に向けた日・アセアン共創イニシアチブの実施を歓迎し、タイは新エネルギーへの移行を推進すると述べた。合わせて日本が主導するアジア・ゼロ・エミッション・コミュニティで、さらなる協力を期待していると述べた。
イノベーションによる経済成長の推進では、研究分野の交流を含む科学技術、イノベーションにおける協力拡大で日本の支援に謝意を表明した。今後も農業技術や食品、地元産品の高付加価値化で協力していきたいと述べた。
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