2024年11月21日(木)号

家計債務の利払い猶予=230万口座、1.31兆バーツ

 パオプーム・ローチャナサクン財務副大臣[=写真]は11月20日、家計債務の再構成計画の概要を明らかにした。財務省理財局による国有財産の賃貸契約プログラムの発表会見での発言。対象となるのは債務返済が滞っている230万口座で、簿価にして1兆3100億バーツ。主に商業銀行の住宅、自動車、商工ローンが対象で、政府とタイ中央銀行は商銀に課している金融機関再建開発基金(FIDF)拠出金の減額で商銀をサポートする。


 家計の債務問題と不良債権はタイ経済が抱える大きな問題の一つ。家計の債務残高はGDPの90%前後の水準にある。購買力に影響を及ぼし、長年にわたる経済の低迷の一因になってきた。政府はタイ中銀、国家経済社会開発評議会(NESDC)事務局、経済3団体合同常任委員会(JSCCIB)と協力してこの問題の解決策を探ってきた。家計債務リストラ案はペートンターン首相が委員長を務める経済対策委員会が19日に開いた会議でも検討され、大筋で同意を得ている。
 パオプーム副大臣によれば、再構成の対象になるのは今年10月末時点で不良化してから1年未満の住宅、自動車、商工ローン。利払いは3年間停止する。住宅ローンは負債額が300万バーツ以下、自動車ローンは同80万バーツ以下、商工ローンは300万バーツ以下が債務リストラへの参加条件になる。対象は約230万口座で、総額は1兆3100億バーツ。プログラムに参加するためには登録が必要で、詳細は中銀が追って発表する。
 リストラ対象となる債務の内訳は、住宅ローンが46万口座、4830億バーツ、自動車ローンが140万口座、3750億バーツ、商工ローンが43万口座、4540億バーツ。パオプーム副大臣は「このグループは何らかの援助を与えれば、債務返済能力を取り戻すことができると判断した債務者。助けないと破産してしまう」と説明した。モラルハザードを防ぐため、債務返済延滞の有無は10月末時点に設定した。
 パオプーム副大臣によれば、このプログラムに国家予算は使わない。政府は商銀に課しているFIDF拠出金を預金残高の0.46%から0.23%に引き下げることで、商銀の負担を軽減する。FIDF拠出金は97年の金融危機で破綻した銀行/ファイナンス会社への公的資金注入で生じた負債の返済原資で、新型コロナのパンデミック期にも0.23%に引き下げたことがある。銀行が提供する拠出金はFIDFの損失肩代わりのために発行された国債の減債基金に組み込まれる。拠出金の引き下げによりFIDFの損失解消のスケジュールに狂いが生じるが、パオプーム副大臣は管理可能で、FIDF債務問題の解決策を政府が検討していることを明らかにした。
 中銀のスワニー・ジェサダーサック総裁補によれば、商銀が支払うFIDF拠出金は年間約700億バーツ。FIDFの負債はまだ5800億バーツ残っている。0.23%に引き下げると拠出金は350億バーツに減り、年間160億バーツの支払利息を除くと元本の返済に充てることができるのは200億バーツに満たない。元本の返済が遅れると利払い費も減らない。
 銀行は中小事業者向けの融資を渋っており、与信残高は減少している。中小事業者が融資を受けられないでいる問題に関し、パオプーム副大臣は金融機関が借り手の債務返済能力を懸念していることが問題だと指摘。この問題はタイ信用保証公社(TGC)のポートフォリオ・ギャランティ・スキーム(PGS)を通じて解決を図るとした。政府がTGCの設置法を改正して国家信用保証機構(NaCGA)を設置し、信用保証制度を拡充する政策を進める考えを示している。

低迷続く住宅市場=来年以降に回復の兆し

 不動産情報センター(REIC)は今年第2、3四半期の住宅市場が依然として低迷していることを明らかにした。ただし政府による景気刺激先が効果を生み始めたことで状況は改善に向かい始めている。今年1~9月のあらゆる住宅の購入者への引き渡し戸数は前年同期の27万650戸から7.4%減の25万580戸で、名義変更額は7669億7100万バーツから8%減の7053億8900万バーツとなった。政府が登記手数料の0.01%への引き下げ対象を従来の販売価格300万バーツ以下から700万バーツ以下に拡充したことで、この価格帯の引き渡し戸数は増えている。特にコンドミニアムで顕著に表れた。
 今年第3四半期のコンドミニア件の引き渡し戸数は前年同期の2万9041戸から3万1247戸へと7.6%増加した一方で、名義変更額は806億7300万バーツから792億8400万バーツへと1.7%減少した。700万バーツ以下の物件の名義変更の増加が理由。この価格帯に限れば、引き渡し戸数は2万7391戸から2万9883戸へと9.1%増を記録、金額も559億3300万バーツから6%増えて592億7100万バーツに達した。
 一方、低層住宅の第3四半期の引き渡し件数は6万5905戸から5万9381戸へと9.9%減少した。名義変更額も7%減の1739億6800万バーツとなっている。ただし低層住宅では1000万バーツ以上の高級住宅の引き渡し戸数が1625戸から1715戸へと5.5%増えた。金額も343億9200万バーツから6.5%増えて366億4200万バーツとなっている。全てのタイプの住宅を合わせた第3四半期の引き渡し戸数は9万4946戸から9万628戸へと4.5%減少した。金額は5.4%減の2532億5200万バーツ。
 カモンポップ・ウィーラパラ所長代行は登記手数料の引き下げ枠の拡大は引き渡し戸数と金額の落ち込みを緩和する効果があったと分析している。第1四半期の引き渡し戸数は13.8%減、金額は13.4%減だったが、第2四半期には戸数が4.5%減、金額が5.7%減となっており、第3四半期も収縮幅は縮小している。
 中古住宅を除く首都圏の未売住宅の推移を見ると、今年第3四半期末時点で市場に供給されている物件数は22万9182戸で前年同期比7%増、販売見込み額は1兆3946億3000万バーツで、同23.1%増となっている。うち新規発売は1万3277戸、販売見込み額は1150億4700万バーツで、それぞれ35.8%、21.3%減少した。販売した物件は1万3382戸、811億4300万バーツで、26.7%、35.8%それぞれ減少した。
 売れ残りは10.2%増の21万5800戸、販売見込み額は27.3%増の1兆3134億8700万バーツ。販売価格200万バーツ以下を除き、あらゆる価格帯で増加した。月当たり吸収率は1.9%で前年同期実績の2.8%から下落した。完売までに要する期間も32か月から49か月に伸びている。
 REICの予測では今年通年の全国の引き渡し戸数は35万545戸で、前年比4.4%減となる見通し。うち低層住宅が6%減の24万3088戸、コンドミニアムが0.6%減の10万7456戸。名義変更額は3.3%減の1兆127億600万バーツで、うち低層住宅が3.4%減の7170億5200万バーツ、コンドミニアムが2.9%減の2957億700万バーツと予測した。
 通年の新規住宅ローン与信額は11.4%減の6008億1200万バーツにとどまる見通しだが、25年には2.3%回復して6145億バーツに達すると予測した。来年の引き渡し戸数は3.7%増の36万3600戸と予測した。内訳は低層住宅が4.7%増の25万4520戸、コンドミニアムが1.5%増の10万9080戸。名義変更額は3%増の1兆433億バーツで、うち低層住宅が3.2%増の7397億バーツ、コンドミニアムが2.7%増の3036億バーツと予測した。

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