2024年12月19日(木)号

中銀の金融政策委員会(MPC)=政策金利据え置き決定

 タイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)は12月18日に開いた政策決定会合で、政策金利を年2.25%に据え置くことを全会一致で決定した。前回会合では0.25%幅の利下げを多数決(5対2)で決定したが、金利引き下げ局面入りしたわけではないと説明していた。足元の景気がMPCの見通しに沿って回復を続けていることからも、現在の金利は景気、インフレ、金融の安定に対し中立的な水準と判断した。今年の経済成長率は2.7%、来年は2.9%と予測した。
 MPCの書記を務めるサッカポップ・パンヤーヌクン総裁補は、タイ経済が海外との競争の激化という課題に直面し、主要国の経済政策をめぐり不確実性が高まっていることを指摘したものの、観光関連サービス業の拡大からMPCの予想に近い成長を遂げることができたと述べた。競争力が低下している産業部門の回復が遅れていることは認めた上で、現在の金利は潜在的な経済成長に資する水準にあるため、据え置きを決定したと説明した。
 インフレ率が誘導目標に向かいつつあることから、長期的な経済と金融の安定を維持するとともに、今後増大する不確実性に対応するため金融政策の余地(ポリシースペース)を維持する必要があるとした。
 タイ経済の現状について、今四半期は経済全体が好転していると述べた。第3四半期の経済成長率は3.0%に達し、MPCの予想以上に拡大している。特に物品輸出の伸びが上振れしている。MPCは第4四半期の成長率が4.0%まで加速すると予測している。今年上半期(1~6月)の成長率は1.9%にとどまったが、下半期は3.5%に加速する見通し。24年通年の成長率は2.7%となり、23年の1.9%から加速する。
 MPCは25年の成長率を2.9%と見積もった。上半期は2.9%、下半期は2.8%の成長率になると予測した。24年はサービス輸出と民間消費が経済を牽引したが、25年はサービス輸出と民間消費に加え、物品輸出、政府支出、民間投資が満遍なく経済成長に寄与すると見積もっている。民間消費は2.4%増、民間投資は2.2%増、政府消費は1.5%増、政府投資は5.1%増と予測した。
 今年下半期に3%を超える経済成長率が来年には3%を下回るのは、不確実性が増していることを考慮したためで、特に来年下半期の経済は多くの課題に直面すると予想している。来年の経済成長率が低下すると予測した中でも金利を据え置いたが、サッカポップ氏は景気の拡大にブレーキを踏むものではなく、状況に応じて金融政策を調整する用意はあると強調した。
 信用収縮に関しては、一部産業の投資資金ニーズの減少とコロナ危機時の借入金の返済が銀行貸出の減少の理由だと説明している。業況が回復している観光業やその他サービス業で収入の増加による負債の圧縮が続いているとした。ただし中小企業向けの貸出の減少については、競争が激化している製造業分野で信用リスクが増大していることを認めている。MPCは今後も与信動向と経済活動への影響に目配りし、脆弱な層の債務負担軽減策の「あなたは闘い、私たちは助ける」の政策効果を追跡していくとした。
 バーツの対ドルレートはMPCの前会会合以降、弱基調で推移している。米国の金利の先行きに対する市場の見方の変化が理由。タイ国債の利回りは政策金利に連動して低下した。MPCは主要国の政策から変動幅が拡大する見通しにあるグローバル・マネーマーケットの動向とタイの金融市場への影響を注視していく。

トヨタ会長が首相と会談=ハイブリッド車生産に550億B

 ペートンターン首相[=写真右]は12月18日午前10時、首相官邸を表敬訪問したトヨタ自動車の豊田章男代表取締役会長[=写真左]を歓迎した。首相は、メーカーと消費者の経済的利益のバランスをとり、自動車産業のニーズに合わせて政策を調整する用意があると述べ、日本の自動車メーカー支援を約束した。


 豊田会長はタイで60年以上にわたって事業を手掛けてきたトヨタに対するタイ政府の長年の支援に感謝の意を表した。トヨタにとってタイが重要な生産拠点であることを強調し、タイでの生産基準や自動車の品質は日本で採用しているのと同じものを採用していると伝えた。
 会談ではタイにおける自動車工業の振興策について意見を交換した。首相は自動車メーカーに便宜を図る用意があることを示し、特に市場のニーズに沿ったハイブリッド車(HEV)の生産を支援する方針を伝えた。
 首相を委員長とする国家EV政策委員会は今月初め、ハイブリッド車(HEV)とマイルド・ハイブリッド車(MHEV)に対する税制優遇措置を決定している。「電気自動車産業への移行支援策」と名付けた措置で、国内で生産されるHEVまたMHEV仕様の乗用車と座席数10人以下のバンに対する物品税率を2026年以降7年間にわたって据え置く内容。ただし2024年から27年までの期間に30億~50億バーツ以上を追加投資することが条件になっている。
 CO2排出量が1㌔㍍走行につき100㌘未満のハイブリッド車の物品税率は6%、100㌘超120㌘以下では9%に引き下げる。ただしこの税率の適用を受けるためには24~27年にかけて30億バーツ以上の追加投資が必要。
 マイルド・ハイブリッド車の物品税率はCO2排出量が1㌔㍍走行につき100㌘未満で10%、100㌘超120㌘以下では12%とする。ただし24~26年に少なくとも10億バーツ、2028年までに50億バーツ以上を追加投資することが条件。
 11月に日本を訪問して自動車各社のトップと会談したエナナット・プロムパン工業相によれば、トヨタはハイブリッド車生産の設備改良と増強と主要部品の生産で、タイに550億バーツの投資を計画している。雇用創出と技術移転に期待している。
 首相との会談を終えた豊田会長は官邸で行なわれた総理大臣工業賞の授賞式にも出席。タイ国トヨタ自動車は最優秀賞、工業省(MIND)アンバサダー賞、未来産業・サービス賞(チャチュンサオ県ゲートウェイ工場)の3つの賞を受賞した。

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