2025年3月19日(水)号

PTTがエネルギー転換加速へ=エタン輸入とCCS技術に注力

 PTT社は、エネルギー産業を巡る環境が目まぐるしく変動する中、投資の縮小は行なわないものの、判断は慎重に進める方針を示している。コンクラパン・イントラジェン社長兼CEOは、系列の石化企業のPTTグローバル・ケミカル社(GC)が、米国から40万㌧のエタンを輸入する計画を進めていることを引き合いに出し、多額の投資を伴わずにコスト削減を図る選択肢を模索し続ける考えを明らかにした。
 エタンの輸入については、今後15年間にわたり年間40万㌧を米国から輸入することで、米国企業と合意。ラヨン県にある自社のオレフィン工場はエタン仕様であるため、新たな設備投資は不要だ。米国から輸入するエタンの使用開始は2029年を予定している。
 同社長兼CEOによれば、アセアン域内の他社工場はナフサ仕様で、エタン仕様に転換するには数億㌦規模の投資が必要になるという。
 タイ湾での天然ガス産出量の減少が見込まれる中、石化の基礎母材の確保が喫緊の課題となっている。
 コンクラパン氏は、「ここ2、3年で事業の安定を図ることがますます難しくなってきている。足元を見てしっかりした基盤を作ることが急務。持続可能な事業環境を整備することで、世界の流れに乗り遅れずに、企業としての成長を維持しなければならない」と強調する。
 発電部門では、グローバル・パワー・シナジー社(GPSC)が化石燃料依存度の引き下げに取り組んでいる。ラッタコーン・カムパナットサンヤーコーン持続可能性担当上級副社長は、三菱重工業と共同で、水素を化石燃料の代替エネルギーとして利用する可能性の研究を進めていることを明らかにした。
 三菱重工は、発電事業者が天然ガスの一部を水素に置き換えて発電できる技術を開発している。天然ガスに水素を30%の割合で混合燃焼する「コファイアリング技術」を確立しており、水素100%での発電技術開発を進めている。2030年までに水素のみを燃料とするタービン発電機を市場に投入する計画。
 天然ガスはクリーンエネルギーへの移行期において重要な役割を果たすエネルギー源で、今後30年を見据えてその位置づけを再考する。2050年実現を目標にしていたネットゼロに関しても、現実的な視点で柔軟に対応する方針を示している。
 PTTは三洋化成工業との提携も模索しており、サトウキビやキャッサバを原料とする新たなバイオベース原料を開発し、ラヨン県の石化プラントに供給する計画を立てている。
 ラッタコーン副社長は、「日本企業との協力プロジェクトは、協議を開始した段階で、PTTの環境目標達成に向けた第一歩になる」と述べた。提携が実現すれば、再生可能エネルギーと環境負荷の少ない原材料を活用する企業へとシフトし、持続可能な事業モデルの確立に向けて大きく前進することになる。
 PTTは、低炭素化事業の一環としてEV生産への進出を試みたが、競争環境での優位性が確保できないと判断。現在は、PTTオイル&リテール社(OR)が進めるEVバッテリー充電ステーション事業にシフトしている。
 低炭素化への貢献策として、200万ライの植林はコスト面で効果的だが、植樹スペースの確保に課題があるため、現在は二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)と水素燃料の開発に注力している。政府は2030年までに水素燃料のエネルギー構成比を5%とする目標を定め、当面は中東からの安価な水素を活用しつつ、開発を進める。
 CCSについては、アーティット天然ガス田で年間100万㌧規模の実験を開始しており、将来的には500万㌧規模の導入を目指す。一方、原子力発電の分野では、小型モジュール炉(SMR)の導入可能性をGPSCが調査している。
 PTTグループは、短期的には将来性の乏しい事業から早期に撤退し、EBITDA(金利・税・減価償却前利益)を改善する方針を打ち出している。3年以内にグループ全体で300億バーツ以上の水準を達成することを目標に掲げている。
 また、デジタル化を推進することで、2年後には20億バーツ以上の増収を見込む。
 中期的には、液化天然ガス(LNG)の貯蔵ターミナルの拡張を進め、LNG取引による収益増も視野に入れている。現在、タイは年間1000万㌧のLNGを輸入しており、今後も需要の伸びが予測されるため、貯蔵ターミナルの拡充によって取扱量の増加を図る。

電子タバコの取り締まり=首相が断固とした決意

 ペートンターン首相は3月18日、ノンタブリ県バンブアトーン郡を訪れ、違法電子タバコの取り締まりの進捗状況を確認した[=写真]。首都警察捜査課がノンタブリ県行政機構と連携して実施した特別捜査「Operation Smoke Out」で、ノンタブリ県内10か所の拠点を一斉に捜索した結果、約26万点の電子タバコ、リキッド、関連機器など時価にして約1億3000万バーツを押収した。


 首相の現場視察には、ヂラポン・シントゥプライ総理府相、プロムミン・ルートスリデート首相秘書官をはじめ、関係機関の担当者が同行した。首相は今回の捜査にあたった関係者の尽力をねぎらい、違法電子タバコの輸入業者、販売業者、法の執行を怠った政府関係者に対して厳格な法的措置を講じるよう強く指示した。密輸ネットワークを徹底的に解明し、違法取引の根絶を図るため、さらなる捜査の拡大を求めた。
 教育省と高等教育・科学・研究・技術革新省には、生徒・学生に電子タバコの危険性について正しい知識を提供するよう指示した。学校や大学の教師や教育関係者は、未成年者の使用を防ぐ責務があるとし、教職員が電子タバコを使用していることが発覚した場合、懲戒処分の対象になると述べた。

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