2025年5月7日(水)号

4月のインフレ率は-0.22%=13か月ぶりマイナス

 商業省が5月6日に発表した今年4月のインフレ率は前年同月比でマイナス0.22%となり、13か月ぶりにマイナスに転じた。主因は、ガソホール価格が下落したことや電力料金が前年同月から引き下げられ、低所得層を対象とした電気料金補助策が継続されたことにある。また、気候条件の改善により農産物の供給が増えたことが、鶏卵、ライム、パクチーなど農産物価格の下落につながった。これらの農産物は前年には干ばつの影響で高値を記録していた。コアインフレ率は0.98%の上昇を記録した。
 タイのインフレ率は2023年10月から2024年3月までマイナスが続いていたが、その後はプラス値に戻していた。インフレ率が再びマイナスに転じたとはいえ、プーンポン・ナイヤナパコン商業政策戦略事務局長によれば、インフレ指標に含まれる全品目のうち58%は引き続き価格上昇を示している。これを理由に、タイ経済がデフレ状態にあるわけではないとしている。1~4月のインフレ率は0.75%の上昇となっている。
 4月のマイナスインフレは、非食品・飲料物価が1.45%下落したことが主な要因。特にエネルギー(ガソホール、ガソリン、電力料金)、パーソナルケア(シャンプー、石鹸、スキンケア用品、ボディパウダー)、清掃用品(洗濯洗剤、食器用洗剤、床拭き用洗剤)、衣類(男性用ズボン、Tシャツ、シャツ)などが値下がりした。一方で、軽油、家賃、美容などは上昇している。
 食品・非アルコール飲料物価は1.63%上昇した。特に豚肉、鶏肉、魚介類(ナマズ、サバ、エビ)、インスタント食品(おかずかけご飯、惣菜、麺類)、非アルコール飲料(インスタントコーヒー、ホット/アイスコーヒー、炭酸飲料)、調味料(植物油、乾燥ココナッツ、缶入りココナッツミルク)、米・小麦粉・ベーカリー類(もち米、焼き菓子)、果物(バナナ、パイナップル、スイカ、ココナッツ)、砂糖関連製品(菓子、黒糖)などが値上がりした。ただし、野菜(ライム、インゲン、キュウリ、パクチー、白菜、唐辛子)、鶏卵、焼き鳥などの価格は下落している。
 生鮮食品とエネルギーを除いたコアインフレ率は0.98%上昇し、3月の0.86%から加速した。1~4月平均では0.91%となった。
 プーンポン事務局長は、5月のインフレ率について、4月と同程度のマイナスが続く見通しにあることを明らかにした。背景には、ドバイ原油価格が前年同期比で大幅に下がっていることがあり、これに伴い国内のガソホール価格も下落する。
 第2四半期のインフレ率はマイナスが続く可能性があるものの、物価やサービス価格が広範囲にわたって継続的に下落しているわけではなく、価格の低下は主に供給側の要因によるものとなっている。カシコンリサーチセンターはコアインフレ率が依然としてプラス圏にあることから、デフレには該当しないとしている。商業省は、第2四半期の平均インフレ率を0.1~0.2%と予測しており、第1四半期平均の1.08%からは低下する見通し。
 政府は生活費支援政策として、5月から8月までの電力料金を前年比で1ユニットあたり0.20バーツ引き下げる予定で、軽油価格も段階的に下がる可能性がある。ガソホールの価格についても、世界市場での原油価格の下落圧力により、値下がりが想定されている。
 農業面では、天候の安定により農作物の出荷量が増えており、生鮮野菜や鶏卵などの価格は引き続き下がる見通し。
 年後半には、前年の原油価格が低水準だったローベース効果からインフレ率はわずかながら再びプラス圏に戻る可能性がある。カシコンリサーチは、通年平均のインフレ率0.5%と予測した。ただし、米国の関税政策の不透明が企業活動や雇用を通じて国内需要に悪影響を及ぼすリスクがあるほか、経済刺激策もインフレ率に影響を及ぼす可能性がある。
 商業省は6月初旬に発表予定の5月のインフレデータを分析した後、新たなインフレ予測を公表する予定。
 一方、4月の生産者物価指数(PPI)は110.2(基準年2015年=100)となり、前年同月比で3.2%減少した。農産品・水産品の生産者物価が6.5%下落した。前年の高値を背景に米、サトウキビ、飼料用トウモロコシ、キャッサバ、天然ゴム、野菜(ライム、唐辛子、ニンニク)、牛生体の価格が下落した。鉱業製品は3.0%減。原油・天然ガス、金属鉱石の価格が下落した。工業製品は2.8%減。主に石油製品(軽油、航空燃料、重油、LPG、ガソホール91/95)、化学製品、鉄鋼などの価格が下落した。
 加工段階別では最終製品は0.6%上昇したが、中間製品は8.5%減、原材料は8.5%減だった。
 4月の生産者物価は前月比では0.4%下落した。1~4月平均は1.1%減。

LINEマン・ウォンナイ=5年間で100億バーツを投資

 LINEマン・ウォンナイは今後5年間で100億バーツを投じ、スタートアップ数社の買収や、生成AIを中心とした先端技術の導入に力を入れていく方針を明らかにした。4月29日にバンコクで開催されたアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)主催のイベント「AWSサミット・バンコク2025」に登壇したヨート・チンスパクンCEO[=写真]が発表した。今回の投資は、顧客サービスの質的向上を目的とした生成AIの開発や導入が中心になる。


 同社は、AWSのクラウドサービスを活用しており、1日あたり100件以上のオンデマンド決済を処理している。過去5年間で80億バーツを投じており、その多くがクラウドコンピューティングとAI技術への投資だった。社内には100人以上のAI専門技術者とデベロッパーが在籍しており、500人の技術者が日常的にサービス改善に取り組んでいる。
 「市場競争が激しくなる中、顧客が当社のサービスを利用する体験の質をいかに高めるか、そしてコスト構造をいかに明確にするかが重要だ」とヨートCEOは語る。オンライン・フードデリバリー市場では、フードパンダが5月23日をもってタイ市場から撤退することを発表しており、1年以内に価格競争が沈静化し、業界の二極化が進むと予想している。その「一極」を自社が担うとの見方を示しながらも、フードパンダの買収には関心がないという。なお、ロビンフッドを運営するジップインソイが買収に関心を示しているとの報道があるが、「仮に買収が実現しても規模は小さく、当社にとって脅威ではない」と述べた。
 シンガポールの調査会社、モーメンタム・ワークスによれば、2023年のタイのフードデリバリーの市場規模は42億㌦に達した。市場シェアはGRABが46%、LINEマン・ウォンナイが40%、ショッピーフードが7%、フードパンダが5%、ロビンフッドが2%とされ、すでに二極化の様相を呈している。
 同CEOは年内にスタートアップ1、2社の買収を予定していることも明らかにし、年内に収支は均衡し、来年には株式公開(IPO)を視野に入れていると語った。現在の収益の約8割はフードデリバリー事業によるもので、配車サービスも堅調に拡大しており、今後1年以内に利益計上が可能になるとの見通しを示した。
 また、LINEペイサービスの急成長を背景に、フィンテック分野でも事業の拡大を図っている。ヨートCEOによると、フィンテック市場の規模はフードデリバリー市場の10倍に達しており、スタートアップの買収を足がかりに、今後5~7年でこの分野でも存在感を高めていく方針を示した。

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[レポート]
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[データ]
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[信頼感指数データ]
消費者信頼感
工業セクター信頼感

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