BOIがEV産業を後押し=アセアンの生産拠点の地位を維持
投資委員会(BOI)のナリット・トゥードサティラサック事務局長[ =写真]は6月9日、EV産業の振興が、長期的な経済の強化とアセアン地域における自動車生産拠点としてのリーダーシップの維持に必要不可欠なことを強調した。国際的な激しい競争の中で、タイの事業者が恩恵を受けるためのサプライチェーンを構築するためで、外資の投資がタイにどのような利益をもたらすのかという疑問の声が上がっていることを受けた発言。

◆EV振興は自動車産業における東南アジアのリーダーの地位に応える
BOIは、EV産業への投資奨励は、内燃機関車(ICE)からEVへの世界的な産業転換の中で、タイが東南アジアにおける自動車生産のハブとしての地位を維持するために重要だと明言する。インドネシア、マレーシア、ベトナムなど多くの国がEV産業への投資誘致を競っており、タイもあらゆる技術分野(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、レンジエクステンデッドEV、バッテリーEV)で生産拠点となることを目指している。
国家EV政策委員会のもと、BOI、財務省、工業省、エネルギー省、タイ工業連盟(FTI)、タイEV協会(EVAT)など複数の機関が連携し、継続的な政策と支援策を通じて進めている。その結果、MG、長城汽車、GACアイオン、長安汽車、オモダ&ジャクー、フォトン、ヒュンダイなどの世界的なEVメーカーが、タイを地域の主要な生産拠点とすることを決定した。
これらの投資は生産能力の向上、タイ人の雇用創出、国内のサプライチェーンの強化、輸出増に寄与する。また、タイを研究開発の拠点とする動きもあり、たとえば長安汽車はタイに大型の研究センターと地域統括オフィスを設立すると発表している。
さらに、政府は国内の既存自動車メーカーのEVへの移行を支援することにも重点を置いている。ハイブリッド(HEV)、マイルド・ハイブリッド(MHEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)生産に対する投資優遇を設けており、マツダ、日産、三菱、いすゞといった既存メーカーが、さまざまな形式のEVの生産と輸出に向けた投資計画を発表している。
◆あらゆる側面での利益創出:投資・雇用・タイのサプライヤーのレベルアップ
EV産業への投資は、自動車組立、主要部品やシステムの製造、充電ステーションの設置といった各分野において、まだ初期段階にある。利益はすぐに得られるわけではなく、時間をかけて成長し、波及していく。とは言え、現在すでにEV政策はさまざまな分野で具体的な成果を生み出し始めている。
・質の高い雇用の創出
MG、長城汽車、BYD、GACアイオン、長安など、タイに新規参入したEVメーカーは、ほとんどが過去1年以内に生産を開始したばかりだが、現在すでに9600人以上の雇用を生み出している。そのうち85~95%がタイ人で、技術者、エンジニア、管理職まで幅広い職種を含む。また、EV製造技術に関する知識を備えるよう、タイ人従業員への訓練も実施されており、今後タイの重要な知的財産となる。
たとえば、最も多く雇用しているEVメーカーであるBYDは、5900人以上を雇用しており、そのうち88%がタイ人だ。2026年までに8000人に増員する計画があり、そのうち95%がタイ人になる見通し。
・タイのサプライヤーの育成
BOI、物品税局、工業省は、タイの部品メーカーの育成計画や、国内での主要部品の使用義務(バッテリー、トラクションモーター、PCUインバーター、減速ギア、エアコン用コンプレッサー、バッテリーマネジメントシステム、走行制御ユニットなど)を定めている。現在、EVメーカーは平均で40~60%のローカルコンテンツ比率を達成しており、タイのサプライヤーへの技術研修、コンサルティング、エンジニアの共同作業なども進められている。たとえば、BYDはすでにタイのサプライヤー35社と提携し、415品目で国内部品の登録を済ませている。
・EVエコシステムの構築
主要部品の国内調達条件に加え、BOIは、充電ステーション、バッテリー交換ステーション、使用済みバッテリーの処理など、インフラの共同開発を義務づけており、産業と環境の持続可能性を支える仕組みを形成しつつある。
◆BOIのサプライチェーン構築における役割
BOIは、国内におけるEV産業のサプライチェーン構築を重視しており、世界のメーカーとタイの事業者との連携を急いでいる。さまざまな活動を実施しており、たとえば毎年開催される「サブコン・タイランド」や、過去2年間で10回以上開催されたEVメーカーとの「Sourcing Day」などがある。各回にはタイのサプライヤー200~300社が参加し、タイの部品メーカーが世界的なEV企業と出会う出発点となっている。部品調達の期間短縮や、タイのサプライヤーとの深い協力関係の構築が可能となり、総額406億バーツを超えるビジネスマッチング効果が見込まれている。
BOIはまた、タイの部品メーカーが国際的なサプライチェーンに参入できるよう支援している。通常は①部品メーカーの登録(Supplier Registration)②部品メーカーの監査(Supplier Audit)③認定サプライヤーとしての登録(Approved Vendor List)④試作部品の開発(Candidate Supplier)⑤発注手続きの実施(Nominated Supplier)という5つの主要ステップを経る。
ナリット事務局長は、世界の自動車産業がさまざまな種類のEVへと移行する今、長年にわたり地域と世界の自動車生産拠点であったタイは、EV産業でも主導権を握り、関連技術を持つ企業を最大限に誘致する必要があると指摘。それによって、自動車産業の基盤、雇用、関連産業の維持が可能になり、またタイ人エンジニアや熟練労働者が新しい技術とともにスキルを高め、成長する機会にもなると語った。
◆優遇措置の付与と厳格な監査
BOIは、EVメーカーに対する優遇措置の付与について、すべての事業者に対して同一の基準を適用しており、国内での主要部品の使用、タイのサプライヤーとエコシステムの育成といった明確な条件を設けている。審査も厳格に行なっている。
特に輸入関税の免除については、生産ラインに関連する機械設備に限定して付与され、建設資材、衛生設備、オフィス機器の輸入には優遇特典を与えていない。BOIは、すべての機械リストを事前に精査し、その機械が認可を受けた生産ラインに実際に使用されることを確認した上で、権利行使を許可している。
また、投資が完了した後には、実際の工場での生産ラインを確認し、各種条件や関連機関の許認可の状況も含め、投資内容の正確性を改めて検証することになっている。
◆投資奨励:持続可能な経済を動かす原動力
過去3年間(2022年から2025年3月)における投資奨励に関するデータは、BOIが支援したプロジェクトが経済全体に広範なプラスの影響をもたらしていることを示している。51万人以上の雇用を創出し、国内原材料の年間使用額は3兆バーツを超え、輸出額は年間5.8兆バーツまで拡大すると見込まれている。原材料の供給業者やタイのサプライチェーン上の事業者に多くの収益をもたらすことを意味し、とりわけ自動車・同部品、電気・電子産業において顕著になっている。
ナリット氏は、「BOIの投資奨励は、国の未来を支える産業を構築するために行なっている。たとえばBCG(バイオ・ササーキュラー・グリーン)分野、EVと主要部品、半導体・先端電子機器、デジタル・AI分野、さらにはタイを国際ビジネスのハブとする取り組みなどがある。経済のつながりを生み出し、タイ国民にチャンスを与えるシステム構築に注力している。タイがこれら新産業への投資を呼び込めなければ、多くの雇用やビジネスの機会を失う。BOIが透明性をもって事業を推進し、国と国民に最大の利益をもたらしていく」と締めくくった。
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