アヌティン氏が首相指名で勝利=311票獲得で過半数を大幅に上回る
国会下院は9月5日、プームチャイタイ党のアヌティン・チャーンウィラクン党首[写真]を首相に選出した。311票を獲得し、過半数に必要な247票を大きく上回った。対立候補のプアタイ党のチャイカセーム・ニティシリ氏は152票にとどまった。このほか27人の議員は棄権した。アヌティン氏は民衆党や支持者に感謝の意を表明したうえで、「時間は限られており、すべての日を最大限に活用しなければならない。休日はない」と述べ、職務に全力を尽くす決意を示した。連立パートナーとの閣僚人事交渉については、すでに準備が進んでいると明らかにした。

首相指名の採決は、プームチャイタイ党のナン・ブンティダー・ソムチャイ議員の要請を受け、当初8番目だった議題を繰り上げるかどうかの討議を経て実施された。プームチャイタイ党幹事長でブリラム選出のチャイチャノック・チッチョーブ議員がアヌティン氏を正式に推薦し、プアタイ党はソラウォン・ティエントーン幹事長がチャイカセーム氏を推薦した。
アヌティン氏の獲得した票にはプアタイ党からの9人の造反議員、タイサーンタイ党の6議員、民主党の4議員などが含まれる。
一方、チャイカセーム氏を支持したのはプアタイ党、プラチャーチャート党とその他政党の一部議員にとどまった。棄権した27人は民主党20人、アヌティン氏本人、下院正副議長、ルアムタイ・サーンチャート党の3議員。
アヌティン氏の当選が確定したことで、閣僚ポストをめぐる交渉は本格化している。プームチャイタイ党は12ポストを獲得すると予想され、アヌティン氏は、そのうち3ポストを外部からの人材を充てると述べた。財務相にはエカニット・ニティタンプラパート財務相理財局長、エネルギー相にはPTT社の元CEOのアッタポン・リクピブン氏、外相には元外務省次官で駐英大使を務めたシハサク・プアンケートケーオ氏の名前を挙げた。アヌティン氏は3人を報道陣に紹介し、それぞれの閣僚候補の適性を語った。また現職のチャトゥポン・ブルットパット商業相は留任の見込み。
連立パートナーにはクラータム党、パランプラチャーラット党、ルアムタイ・サーンチャート党のスチャート・チョムクリン氏率いる派閥、サクダー・ウィチーエンシルプ氏率いるプアタイ党離党組、ニポン・ブーニャマニー氏率いるグループが含まれる。クラータム党とパランプラチャーラット党の双方が国防相ポストを狙っているとされ、クラータム党のタマナット・プロムパオ最高顧問や元国防省次官のナット・インタラチャローン大将の名前が候補に浮上している。
プアタイ党はFacebookへの投稿で、議会の伝統に従って野党として活動する用意があると表明した。
新政権には有能な人材のチームが必要だが、下院解散までの時間は限られる。タイ・カンボジア間の領土紛争が経済に打撃を与えており、タイ工業連盟によると、数か月に及ぶ対立は企業の信頼感を損ない、7月の工業部門信頼感指数は、2024年10月以来の最低水準に落ち込んでいる。国境貿易は停滞し、解決に要する時間への懸念が地元製造業者の間に広がっている。
足元のタイ経済は減速しており、米国による19%の相互関税の影響にも苦しむ。産業界は、新政権がこうした問題に対処しなければ、経済はさらに減速すると警告している。
観光業も失速しており、海外からの観光客に歓迎され、安全で開かれた国であることを示す必要がある。新政権は、グローバルな広報キャンペーンによりタイの強みを訴え、観光立国としての評価を高めることが求められる。ある経済人は、新政府は今年最終四半期の経済を押し上げる「クイックウィン」政策を採用すべと提言した。国内観光の刺激は迅速に実施でき、明確で測定可能な成果をもたらすとした。
経済界は、政治的安定と長期的な競争力の強化が重要だとし、あわせて新首相が合意に基づき総選挙を期限内に実施することを期待している。クーデターやそれに類似する動きは投資家の信頼を損ない、経済成長を妨げると警告した。
新政権は政策の継続を最優先とし、透明で公正な投資環境を整備すべきとの提言もある。汚職に断固とした姿勢で臨むことがタイの信頼性を高め、隠れたコストを削減し、国内外からの投資を呼び込むとした。
経済成長を刺激するための1500億バーツの経済刺激予算の執行が優先課題で、アヌティン氏の任期が4か月に限られるため、新たな政策よりも政治の安定を重視すべきとの意見もある。米国との関税交渉も課題で、投資家の信頼の維持が不可欠。南部ランドブリッジやエンターテインメントコンプレックスのような大型案件は短期政権下では進展しないことから、既存予算を最大限活用し短期的な成長を促す一方、外国人投資家に政治の安定を示すことが重要になる。
デジタル産業は、新政府がデジタル技術への投資を継続し、特にクラウドコンピューティング、AIの分野で能力を高めることを期待している。企業は、地政学的緊張の影響を最小限にするため、自国の技術を選好しており、タイはデータセンターなどの自前のインフラを構築し、外部依存を減らすべきで、さらにAIの研究開発への投資、外国資本や人材の誘致によってデジタル競争力を強化する必要があると提言している。
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