2025年10月30日(木)号

1~9月のBOI投資申請=外資の投資予定額9800億バーツ

 投資委員会(BOI)事務局は10月29日、1~9月の投資申請額が前年同期比でほぼ倍増し、1兆3745億5300万バーツに達したと発表した。申請件数は2622件で、前年同期比23%増。主導分野はデジタル、電子機器、電気製品産業で、世界的なデジタル経済の拡大や高度テクノロジー機器需要の高まりが追い風となった。外国からの投資額は9800億バーツを超えた。開かれた中立的な投資環境とグローバルな連携に適した拠点としてタイが強い信頼を得ていることを示すものとなった。
 ナリット・トゥードサティラサック事務局長は、タイへの投資動向について、安定した成長が続いていると述べた。投資申請の増加は、タイ経済の堅固な基盤、投資受け入れ体制の整備、長期的な成長ポテンシャル、東南アジア域内における戦略的投資拠点としての地位の高さを裏づけているとした。
 BOIによると、1~9月における投資申請額が最も多かったのは「デジタル産業」で、特にデータセンター事業が中心となり、デジタルサービス向けのソフトウェア・プラットフォーム開発やデジタルコンテンツ事業など、デジタル経済の基盤となる投資が活発だった。投資額は6127億6800万バーツ(119件)。
 2番目に多かったのは「電子・電気機器産業」で、PCBやハードディスクドライブ、各種の電子部品、セルレベルのバッテリーやスマート家電の製造が含まれる。投資額は1840億7800万バーツ(382件)。
 第3位は「再生可能エネルギー発電」で、太陽光、風力、バイオマス発電などへの投資が増加し、742億1200万バーツ(300件)に達した。
 第4位は「自動車・同部品産業」で、自動車・二輪車の生産ラインの改修、タイヤや自動車部品、航空機部品の製造などが中心で、709億8500万バーツ(229件)を数えた。
 第5位は「農業・食品産業」で、食品加工、飼料、天然原料からの抽出物、ゴム製品、農業廃材の再利用製品などに関する投資が増え、472億バーツ(228件)を数えた。
 第6位は「石油化学・化学製品および工業用プラスチック製品」で、投資額は367億6600万バーツ(230件)。
 第7位は「医療関連産業」で、病院や専門医療センター、医療機器製造などへの投資が250億8600万バーツ(89件)あった。
 第8位は「観光業」で、ホテルや観光地開発などの投資があり、159億バーツ(21件)となった。
 外国直接投資(FDI)も力強く拡大しており、申請件数は1947件(前年同期比38%増)、合計投資予定額は9853億3700万バーツ(同82%増)に達した。投資額上位5か国・地域は、①シンガポール(3598億バーツ)②香港(2372億6400万バーツ)③中国(1428億8700万バーツ)④英国(1002億9500万バーツ)⑤日本(737億5400万バーツ)の順。
 特にシンガポールと英国からの大規模データセンター投資、香港からのEV/エネルギー貯蔵システム用セルレベル・バッテリー生産への投資が顕著で、これらは高度技術産業を支える重要なインフラとなる。こうした投資動向は、外資のタイ経済の長期的成長に対する信頼を示していると述べた。
 地域別では、投資の大半が東部地域に集中しており、投資額は8552億2800万バーツ(1431件)に達した。次いで中部地域が3003億バーツ、東北部2856億バーツ、北部2594億バーツ、南部2444億バーツ、西部1266億バーツとなっている。
 また、既存事業の効率化を促進する「スマート&サステナブル・インダストリー」政策に基づく投資申請も増えている。1~9月には402件(前年比49%増)、投資予定額3765億2000万バーツ(前年比81%増)に達した。インダストリー4.0への移行、デジタル技術の導入、機械の刷新による生産効率向上、自動化・ロボットの活用、省エネルギー、再生可能エネルギーの利用、環境負荷の軽減といった分野を中心としている。
 投資奨励の認可段階における統計では、1~9月に認可された案件は2413件、投資額は1兆1147億9800万バーツにのぼった。これらのプロジェクトにより、年間約6100億バーツ相当の国内原材料の使用、17万5000人以上のタイ人の雇用創出、年間1兆4000億バーツ超の輸出額増が見込まれている。一方、BOI証の発行段階では2050件、投資額9476億6100万バーツとなった。
 ナリット事務局長は、今年1~9月の投資統計からはタイへの投資の波が継続的に押し寄せていることが分かると述べている。特にデータセンターなどの基幹インフラ事業、半導体、電子回路、セルレベル・バッテリーといった高度技術産業分野への投資が顕著で、タイの自動車、電子産業のサプライチェーンを強化する中核となると述べた。投資の増加は、雇用の拡大、技能・技術開発、輸出促進、国内原材料利用の拡大に寄与する。BOIとして、政府のクイックビッグウィン政策のもと、「Thailand FastPass」の仕組みを活用し、重要プロジェクトをできる限り早期に実際の投資につなげ、経済への波及効果を具体的に生み出していくと語った。

アセアン・中国首脳会議=自由貿易協定(ACFTA 3.0)推進

 10月28日、マレーシアのクアラルンプールで、第28回アセアン・中国首脳会議に先立ち、「アセアン・中国自由貿易圏(ACFTA)3.0改定版」に基づく貿易拡大協定の署名式が行なわれた。タイ側はスパチー・スタムパン商業相が署名に臨んだ。その後、アヌティン首相兼内相が首脳会議に出席した[=写真]。


 首相は、長年にわたるアセアンと中国の関係を評価し、地域の平和・安定・繁栄を推進する重要な原動力だと述べたうえで、中国が2026年を「アセアン・中国年」とし、包括的戦略的パートナーシップ(CSP)締結5周年を記念するとの提案を歓迎した。
 首相は、アセアン・中国関係をさらに深化させるための3つの重要方針を提示した。
 第1に、経済統合の推進。中国の技術進歩は、アセアンのサプライチェーン強化、新たなビジネス機会の創出、グリーン成長、デジタルトランスフォーメーション、スマート農業の推進に寄与できるとし、ACFTA3.0と地域的包括的経済連携協定(RCEP)の実効性向上を支持する考えを示した。また、香港特別行政区の積極的な関与により、地域貿易と経済統合を一層強化できると述べた。
 第2に、安全保障上の越境課題への対応を挙げ、特に国際的な犯罪、オンライン詐欺、人身売買、越境汚染(ヘイズ)などの脅威に対し、アセアンと中国は法執行協力、情報共有、能力強化を通じて連携を深め、地域住民の安全と福祉を守る必要があると強調した。
 第3に、地域の平和と安定の維持を挙げた。タイが一貫して平和と対話の道を重視していると述べ、中国の地域における平和推進と建設的な関与を評価する姿勢を明らかにした。
 首相は、ミャンマー情勢について、真の和解と持続的平和をもたらす条件づくりを支援する用意があると表明した。南シナ海問題については、地域全体の懸念であるとし、信頼醸成と「南シナ海行動規範(COC)」の実効的かつ明確な交渉推進を支持すると述べた。COCは国際法と国連海洋法条約(UNCLOS)に即して策定されるべきだと強調した。
 発言の締めくくりに、アセアンと中国は、多面的に結びつき、安定と平和を共有する未来を共に築くことができると述べ、地域住民と次世代のための協調的発展を呼びかけた。

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