2026年1月6日(火)号

米国のベネズエラ侵攻=バーツ、株価、金への影響

 新年最初の取引日となった1月5日の外為市場では、米国によるベネズエラ侵攻を主因とする世界的な金価格の上昇に支えられ、バーツが対ドルで上昇した。カシコンリサーチセンター(Kリサーチ)は、世界の金価格の急騰と、タイ国債市場への継続的な資本流入により、バーツが押し上げられていると分析した。バーツは今週、1ドル=31.00~31.60の範囲で取引される見通しだ。
 Kリサーチによると、5日正午時点で、外国人によるタイ国債の買い越し額は14億バーツに達した。株式市場でも外国人投資家の関心が再び高まり、SET指数は昨年末比1.62%高の1280.05ポイントでこの日の取引を終えた。ベネズエラでの紛争が他の大国を巻き込む形で拡大しない限り、タイ株式市場への影響は限定的にとどまるとの見方が支配的だ。
 Kリサーチは、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに踏み切るとの見方が広がっており、これが他通貨に対するドル安を招くとの期待から、バーツには引き続き上昇圧力がかかっていると指摘した。FRBが示しているドットプロットは2026年に1回の利下げの可能性を示唆しているが、市場は2回、または最大3回の利下げを見込んでいる。
 ただし、米国によるベネズエラ侵攻とマドゥロ大統領の拘束を背景とする地政学的リスクの高まりにより、米ドルを含む世界のマネーマーケットでボラティリティが高まる可能性が高い。米国とベネズエラの動向は、米ドルや商品市況、とりわけ金と原油に影響を及ぼす可能性があるため、注視する必要がある。短期的には地政学的リスクが高止まりする可能性が高い。米国がベネズエラの政治情勢や石油産業に、より大きな影響力を行使できるようになった場合、世界の原油価格に影響を及ぼす可能性がある。
 タイ開発研究所(TDRI)の研究者のノナリット・ピソンヤブット氏[=写真]は、米国のベネズエラ侵攻が世界の原油価格を押し上げ、バーツ安を招く可能性がある一方、地政学的な激動で経済・外交政策の運営は、より複雑になるとした。短期的には、世界の原油価格に一定の変動をもたらす可能性はあるが、今年は世界の原油供給が需要を上回る見通しで、価格が急騰する大きなリスクはないとした。また、ベネズエラへの米国の介入は、世界的な主導権を維持しようとする意思の表れであり、その結果、米ドルは以前のように弱体化する可能性は低いと述べた。米ドルが価値を維持する限り、バーツが以前のように上昇する可能性は低いと予想した。ノナリット氏によれば、米国がベネズエラに関与することで、他地域への関与の度合いが低下する可能性がある。タイにとって、タイ・カンボジア国境紛争や米国との関税交渉といった未解決の課題に取り組む好機が生まれる可能性があるという。


 国際経済学者のアット・ピサンワニット氏は、ベネズエラ危機が世界の原油価格や地政学的緊張に影響を及ぼす可能性があると指摘。原油価格については、2つのシナリオが考えられるという。短期的には、米国の石油会社がベネズエラの石油部門の運営を引き継いでから6か月から1年以内に、生産量が現在の日量90万バレルから、10万~20万バレル増加し、輸出は日量60万バレルになる可能性がある。この変化により、世界の原油価格は上下双方に変動するとした。しかしOPECがすでに世界市場の需要を上回る生産を行なっていることから、1年後には、世界の原油価格は下落基調になる可能性が高いとした。
 地政学的には、ベネズエラ侵攻は米中間の新たな貿易摩擦を引き起こす可能性がある。中国国家石油公司(CNPC)や中国石油化工集団(シノペック)はベネズエラに投資しており、中国は同国の原油輸出の最大70%を購入している。アット氏は、タイは自国の立場を慎重に考える必要があり、長年の中立政策は妥当だが、エネルギー供給の中東依存からの多様化、より安全な輸送ルートの確保、輸出市場の拡大など、リスク管理を一層強化する必要があるとした。
 金のトレーダーは、金価格が1オンス当たり4549㌦の過去最高値を再び試す可能性があり、国内の金地金価格は1バーツ重量当たり6万7000バーツまで押し上げられる可能性があるとみている。金相場は2025年末に一時下落したものの、通年で60%超上昇し、12月26日には1オンス当たり4549.71㌦の過去最高値を記録している。金相場は例年、1月に強含むが、現在は、米国がベネズエラでの軍事作戦を強化し、他国でも同様の動きを示唆していることから、地政学的リスク要因が加わっている。国内では、バーツ相場が1ドル=31.30バーツ前後で底堅く推移する見通しで、金地金価格は1バーツ当たり6万7000バーツに達する可能性がある。

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