SETが3か年戦略計画=資本市場の信認回復目指す
タイ証券取引所(SET)は、タイ株式市場への新たな資金流入を促すため、暗号資産の上場投資信託(ETF)や金のパーペチュアル(無期限)契約を含む新たな投資商品の導入準備を進めている。2028年までの3か年戦略計画の一環で、市場の魅力と競争力を高める狙いだ。
アサデート・コンシリ所長[=写真]は、SETが現在直面している課題を看過しているわけではないと強調する。タイ資本市場に対する信認の低下、出来高の縮小、新たな産業分野の企業が上場してこない状況、海外市場やオルタナティブ資産との競争、さらには政治の不確実性、景気減速、国際紛争など、増大するさまざまなリスク要因を多角的に分析した結果、タイの資本市場が再び魅力ある投資先となるため、大きな転換を図る必要があるとの結論に至ったと説明した。海外市場や代替資産との競争が激化するなかで、「イノベーション志向で成長性の高いニューエコノミーの企業が上場しやすい環境を整える必要がある」と述べ、上場規則の見直しを進める方針を明らかにした。

デリバティブ分野では、タイ先物取引所(TFEX)に大きな成長余地があると指摘した。株式市場には約350万の投資家の口座がある一方、TFEXの投資家数は約25万人にとどまり、売買代金は3年連続で減少している。
アサデート氏によると、取引所はデリバティブ市場の流動性と投資家の参入を促すため、戦略的パートナーの模索を進めている。昨年は金取引への関心が高まり、TFEXの金先物が高い売買高を記録したが、現行の契約単位は個人投資家には依然として大きいと説明。「契約単位を引き下げ、アクセス性を高めることで、個人投資家の参入を促す」と述べた。
SETはまた、満期のない金のパーペチュアル商品を導入する計画で、投資家はロールオーバーを行なわずにポジションを保有できる。ロング/ショート双方の取引が可能となり、金投資における柔軟性が高まる。
このほか、SETが推進する「Jump+プロジェクト」には、上場企業800社超のうち100社以上が参加し、企業価値や市場での認知度向上に取り組んでいる。SETは、より多くの企業の参加を促すため、応募期限を2026年初めまで延長した。
3か年計画では、市場の魅力(Attractiveness)の創出、流動性(Liquidity)の向上、上場企業の価値(Valuation)の引き上げに加え、何よりも信認の回復を重視し、あらゆる分野で積極的に取り組むとともに、すべての関係者に新たな機会を創出していく。「信頼に基づく、包摂的な機会へのゲートウェイ」を掲げた3か年戦略計画は、以下の3つの主要戦略で構成される。
1.機会創出を加速し、流動性を高め、信認を強化する(Exciting Markets with Confidence)
・ファンドフローの呼び込み:パートナーと連携し、投資家の売買回帰を促すとともに、新たな投資家層の拡大を図る。2025年以降、複数の要因により流動性が低下したことを踏まえ、新商品としてボンド・コネクト・プラットフォーム、暗号資産ETF(Crypto ETF)を導入するほか、DR(預託証券)とL&I(ライフ&インシュランス)ETFを拡充し、多様なニーズを持つ投資家層に対応する。同時に、あらゆる資産の投資ポートフォリオを一元管理できる新たなアプリケーションを開発し、投資家の利便性を高める。さらに、国内外でロードショーを実施し、海外からの投資を呼び込むとともに、外国投資に関する規制の見直しを進め、投資障壁の解消を図る。
・上場企業の質の向上:監督当局と連携し、IPOに関する規則や手続きを見直して迅速化を図り、質の高い企業をタイ証券取引所へ呼び込むことで、海外株式市場との競争力を高める。あわせて、投資委員会(BOI)や東部経済回廊(EEC)開発プロジェクトと協力し、ニューエコノミー企業、外資系企業、中小企業、スタートアップの資本市場参入を促す。一方で、既存の上場企業についても付加価値創出を重視し、「JUMP+」プロジェクトを通じた事業計画の可視化を継続するとともに、上場企業のコーポレートガバナンスの強化を進める。
・TFEXの強化による投資戦略の拡充:先物・オプション市場を株式ポートフォリオの補完手段として本格的に活用することを促し、投資戦略の多様化を図る。短期デリバティブ(ショートデート商品)や暗号資産関連商品など、新たなデリバティブ商品の導入を進め、投資機会を拡大する。あわせて、マーケットメーカーとプロフェッショナル・トレーダーの活動を通じて取引の流動性を高め、国内外の証券会社と連携しながら、投資家ベースの裾野を広げていく。
2.連携を強化し、成長を拡大する(Grow Business with Stakeholders)
・SETクライメート・エコシステムの構築:パートナーと連携し、上場企業におけるSETカーボンの利用を拡大するとともに、上場企業のサプライチェーン、銀行、銀行の取引先へと活用の範囲を広げる。事業のニーズに包括的に対応できるよう機能の拡充を進め、SETカーボンを利用する上場企業を新たに100社増やすことを目標とする。あわせて、すべてのセクターで共通のデータ標準を用いた国家レベルの中央カーボンデータベースの構築に向けた重要なメカニズムを目指す。さらに、カーボンクレジット取引のためのインフラ整備を支援し、気候変動法への対応に向け、あらゆるセクターの準備を後押しする。
・マーケットデータとアクセスの高度化:AIを活用し、内部利用と所外向けサービスの双方でニーズに応えるデータ開発を進めるとともに、国際水準に比肩するサービス提供のための方針を整備する。
3.インフラを強化し、人材育成を推進する(Great Process and People)
・インフラ開発とサービスの高度化:2027年のサービス開始を見据え、新たなクリアリングシステムを開発し、システム全体の効率性を高める。あわせて、QRコード・シーラー、eプロキシ、eドキュメント、投資家ポータルなど、TSDの電子サービスを高度化する。
・人材育成の基盤整備:組織と事業の方向性に沿った人材育成を推進し、開かれた組織文化とテクノロジーの活用を促進する。イノベーションや新たなビジネスモデルの創出を通じて産業の変化を先導し、持続可能性への意識を組織全体に浸透させる。
SETは、これら3つの戦略の実行を通じ、タイ資本市場が再び国の経済を牽引する重要な役割を果たすことを期待している。アサデート所長は、あらゆるセクターを資本市場へと結び付け、すべての人に行き渡る持続可能な投資機会を創出するという、SETの強い決意を改めて示すものだと語っている。
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