工業部門信頼感指数=25年12月は前月比で低下
タイ工業連盟(FTI)が1月21日に発表した2025年12月の工業部門信頼感指数は88.2となり、前月の89.1ポイントから低下した。国境衝突や政策の不透明感、バーツ高や大気汚染など複合的な要因が企業心理を冷え込ませたと分析した。一方で、政策金利の引き下げや年末消費の伸びは下支えした。3か月先の先行指数はやや持ち直した。新政権の経済戦略や国内産業保護策の行方が注目されるなか、政府に対しバーツの安定やEUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)への対応の強化を求めた。
指数の低下は、複数の要因によるもので、とりわけタイ・カンボジア国境周辺での衝突により、ウボンラチャタニ、スリン、ブリラム、シーサケート、サケーオ、チャンタブリ、トラート各県の国境地域における経済活動が停滞したことが挙げられる。これに加え、下院解散の発表を受け、政府の政策の継続性に対する懸念が高まった。とりわけ、「コンラクルン・プラス」の第2フェーズやタイと米国の貿易交渉の行方が不透明となっている。前期に生産を前倒しした反動や、年末年始の連休に伴う稼働日数の減少により、製造業の生産活動は鈍化した。また、中国、日本、アセアン諸国など、一部の主要貿易相手国の景気動向を背景に、輸出も減速する傾向にある。このほか、多くの地域で発生しているPM2.5による大気汚染が屋外活動や国民の健康に影響を及ぼしていることも信頼感低下の要因の一つ。米国の政策金利引き下げを背景としたバーツ高により、輸出業者の収入は減少した。一方で、バーツ高により外国人観光客のコストは増大しており、観光部門全体に影響を及ぼしている。
12月には経済を下支えする複数のプラス要因もみられた。年末年始の繁忙期入りと、「コンラクルン・プラス」が12月31日で終了するのを前にした駆け込み消費により、消費活動が押し上げられ、年末の地方経済における支出喚起に寄与した。金融政策委員会(MPC)は、政策金利を年1.50%から年1.25%へ0.25%引き下げたことは、企業部門と家計の金融コスト負担の軽減につながった。石油基金は、軽油の基金拠出金を1㍑当たり20サタン引き下げることを決定し、さらに一部の事業者が軽油とガソリン価格を1㍑当たり50サタン引き下げた。12月24日から実施され、生活費負担と企業のコストの軽減に寄与した。
また、洪水被災者支援金、稲作農家支援金、脆弱層支援給付金などの政府による生活支援策も、家計の負担軽減と購買力の下支えに一定程度寄与し、短期的な経済の下支え要因となった。
FTIの47の産業部会に属する1330社の事業者を対象に実施した12月の調査結果によると、懸念が高まっている要因は、国内経済(61.7%→62.8%)、世界経済(56.5%→57.4%)、為替レート(49.5%→50.4%)、エネルギー価格(26.2%→28.6%)。一方、懸念が低下した要因は、政府の政策(42.3%→40.3%)、資金アクセス(26.4%→25.3%)、貸出金利(20.4%→17.1%)となっている。
向こう3か月の信頼感指数は95.7となり、11月の94.9ポイントから上昇した。複数のプラス要因によるもので、オンライン・プラットフォームを通じた輸入商品の課税強化がその一つ。従来、1500バーツ未満の商品は免税対象だったが、今年1月1日からは1バーツから課税される措置が導入され、海外からの低価格商品の流入を抑制し、タイ国内事業者に対する不公正な競争を是正すると期待されている。
また、新政権の発足により、政策の方向性が明確化し、経済活動全体が前進することで、景気の回復が加速するとの期待感も指数上昇の要因となった。
ただし、引き続き注視すべきマイナス要因ある。停戦合意が締結された後も、タイ・カンボジア国境情勢が再度緊張する可能性への懸念が残る。EUが導入する炭素国境調整メカニズム(CBAM)が今年1月1日から適用開始され、規制への対応コストや温室効果ガス排出量報告の負担が増大する。炭素排出に対する課税は2027年から開始される予定で、影響が懸念されている。

◆政府への提言
クリアンクライ・ティアンヌクン会長[=写真]は記者会見で、政府・通貨当局に対し、為替レートの安定を図り、バーツ高の進行を抑制するよう求めた。外為市場、資本移動、金市場、デジタル資産市場における取引を継続的に監視するとともに、監督・規制を強化し、投機的取引や為替の過度な変動を抑制することが重要だと指摘した。あわせて、実体経済の活動と整合しない取引を防止する措置も講じる必要があると述べた。
また、CBAMが1月1日から全面施行されたことを踏まえ、対応を促すための支援も政府に求めた。炭素排出削減と温室効果ガス排出量報告の作成に関する技術的助言を行なう専門家や資金面での支援、国内における使用済み原材料の循環利用を促進する仕組みの整備、クリーンエネルギーの利用促進などを注文した。
電子政府調達システム(e-GP)を通じた中小企業からの調達比率を50%に引き上げるよう提案した。あわせて、これを政府機関の業績評価指標(KPI)とすることで、中小企業の市場機会を拡大し、政府調達へのアクセスの向上につなげるべきだとした。
◆MiT制度の厳格化と透明性向上
クリアンクライ会長は会見の席で、国内生産品の使用促進(Made in Thailand:MiT)を選挙公約の一つとして重視する複数の政党に謝意を表した。現在、タイの工業部門は、海外からの低価格商品の流入や原産地偽装(トランシップメント)の問題に直面しており、タイの事業者と国内のサプライチェーンに深刻な影響を及ぼしている。同会長は、新政権のもとでMiTプロジェクトが具体的に実行に移されれば、タイの産業の競争力強化に向けた重要なメカニズムになると指摘した。
FTIはこれまで、政府調達プロジェクトにおいてMiT製品の使用比率を30%以上とするよう政府に継続的に提言しており、経済システムにおけるタイ製品への需要創出を図ってきた。また、MiT認証書は、物品の調達方法を定めた省令に基づく政府調達において重要な役割を果たしている。MiTマークの認証をFTIから取得した国内生産品を使用する応札者は、他の応札者に対して最大5%加点される仕組みとなっている。現在、この制度は政府機関から高い信頼を得ており、各年度におけるMiT製品の調達額は1000億バーツを超えている。
クリアンクライ会長は、「FTIは製品管理を重視し、MiT認証発行に関する審査を一層厳格化することで、適正に事業を行なうタイの事業者の権利を保護している」と述べた。FTIは必要に応じて認証の再審査または取消しを行なう権限を有しており、認証が取り消された場合、その商品は永久に認証対象外となるほか、当該企業は2年間、すべての製品についてMiT認証を申請する権利を失うとしている。
MiT認証書の検証システムについても高度化・改善を行ない、より近代的で高い信頼性を備えたものとした。購入者や関係機関は、24時間いつでも自ら認証書の真正性を確認できるようになっている。確認方法は主に2つあり、1つめは認証書に表示されているQRコードをスキャンする方法で、FTIの中央データベースに接続し、最新のステータスを表示する。2つめは、ウェブサイト [www.mit.fti.or.th]を通じ、認証書番号や会社名を入力することで、製品情報と認証書の有効期限を確認する方法。偽造文書の使用による被害を防止するとともに、不正ななりすましや違法行為が発見された場合には、FTIに通報することができる。
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