2026年3月10日(火)号

原油100ドル突破でエネルギー対策=軽油の価格凍結を延長へ

 アヌティン政府は3月9日、中東紛争による世界的なエネルギー価格の高騰に対応するための短期・中期のエネルギー対策を協議する緊急会議を開催した。ピパット・ラチャキットプラカーン副首相兼運輸相は、軽油の小売価格の凍結措置をさらに5、6日延長する方針を明らかにした。一方、ガソリン価格については急な値上げを避けるため段階的に引き上げる方針だ。政府は補助金、石油基金の緊急借り入れ、省エネ政策、エネルギー供給の多角化を組み合わせることで、世界的なエネルギー危機の影響から家計や企業を守り、国内エネルギー供給の安定を確保する方針だ。
 会議はアヌティン首相が主宰し、ピパット氏のほか、エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相、アッタポン・ルークピブン・エネルギー相、、ダヌチャー・ピチャヤナン国家経済社会開発評議会(NESDC)事務局長らが出席した。アヌティン首相は軽油価格を15日間凍結するよう指示していたが、この措置はあと5日で期限を迎える。延長は、次の対応策を検討するまでの一時的措置となる。ガソリンの価格は、PTTを通じて段階的に調整される。
 エークニティ氏は、世界の原油価格が上昇を続けるなか、化石燃料への依存を減らすため迅速な対応が必要だと述べた。その一つがエタノール燃料の利用拡大だ。エネルギー省は、サトウキビやキャッサバから生産されるエタノール燃料の利用拡大を進め、農産物の付加価値向上と代替エネルギーの拡充につなげる。石油備蓄については、輸入がなくなっても90日以上持ちこたえられると説明した。
 世界の原油価格が1バレル当たり100㌦を超えるなか、政府は燃油価格の補助を続けるため、石油基金の資金調達で商業銀行からの借り入れを検討している。石油基金は現在、軽油への補助金で1日当たり約7億バーツを支出している。
 エネルギー政策企画事務局(EPPO)のワタナポン・クロワット事務局長は、ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー危機が発生した2022~2023年と同様の資金調達を検討していると述べた。3月9日時点で、軽油には1㍑当たり11.73バーツの補助金が支払われている。ガソホール95、ガソホール91、E20にはそれぞれ3.06バーツ、3.06バーツ、4.03バーツの補助金を出している。タイの石油消費量は1日当たり約1億5300万~1億5500万㍑で、うち軽油が6300万~6500万㍑、ガソリン系燃料が3100万~3300万㍑を占める。
 あるエネルギー当局者によると、基金の収支尻が悪化し、負債が大きく膨らんだ場合、燃料価格の上昇を抑えるため物品税の引き下げも検討される可能性がある。原油価格の高騰、備蓄の減少、入荷遅延が重なれば燃料配給制の導入もあり得るという。1973年と1979年のオイルショック時には配給制が導入された。ただし、エネルギー事業局によると、現時点でタイ向け石油輸送に大きな影響は出ていない。
 タイにおける発電燃料の主力は天然ガスで、約60%を占める。天然ガスの60%は国内生産、15%はミャンマーからの輸入、残り25%は輸入液化天然ガス(LNG)に依存している。LNG価格も原油価格に連動して上昇している。
 タイ発電公団(EGAT)のナリン・ポーワニット総裁は、カタールからホルムズ海峡経由で輸入されるLNGを中心に監視する24時間体制のモニタリングセンターを設置したと述べた。EGATは、ラムパーン県のメーモ石炭火力発電所、主要ダムの水力発電所、さらにラオスからの電力輸入の拡大など代替電源の確保も進めている。
 3月9日、イランの石油貯蔵施設が攻撃を受けたとの報道を受け、世界の原油価格が1バレル当たり110㌦前後まで急騰した。バンコク銀行(BBL)の上級副頭取兼チーフエコノミストのコープサック・プートラクン氏は自身のFacebookで、イランへの攻撃が第2段階に入ったようにみえ、報復のリスクが高まっている点を特に懸念していると指摘した。こうした展開は、港湾、石油タンカー、製油所、ガス処理施設、石油貯蔵施設など、中東全域の重要な石油関連インフラを脅かすおそれがある。
 コープサック氏は、「世界の原油価格は今やコードレッドの領域に入った。価格がすぐに落ち着かなければ、世界経済に深刻な影響を与えかねない」と述べた。
 原油価格がさらに上昇すれば、ロシア・ウクライナ戦争初期と同様の状況になる可能性がある。当時は原油価格が1バレル当たり120~130㌦まで上昇し、2022年3月から7月まで、100㌦を上回る水準が続いた。この期間には、世界各国で経済的混乱が広がった。インフレ率が急上昇し、生活費が高騰、各国中央銀行は急速な利上げを実施し、資産価格は広範に下落した。タイも大きな影響を受けた。国内の燃料価格が急騰し、政府は価格安定のため大規模な介入を余儀なくされ、数千億バーツ規模の財政負担が発生した。

SETとアユタヤ銀行=中小企業のESG対応を支援

 タイ証券取引所(SET)とアユタヤ銀行(クルンシー)は、中小企業の持続可能な成長に向けた基盤作りを支援するため、「持続可能な金融エコシステム」の構築に向けた協力体制を強化する。上流工程であるESG(環境・社会・ガバナンス)の知識提供から、温室効果ガス排出量の管理・報告ツールとしての「SETCarbon」プラットフォームの活用支援までを網羅するもので、具体的な排出削減に向けた「トランジション・プラン(移行計画)」の策定を促すことで、中小企業の将来的なサステナブル・ファイナンスへのアクセス向上と競争力の強化を目指す。


 SETのソラポン・トゥラヤサティアン副所長[=写真左]は、「カーボンデータは、低炭素経済への移行を推進するうえで不可欠な要素だ。特に世界の貿易ルールや環境規制が厳格化するなか、金融機関や投資家は資金配分の判断において気候変動リスクを重視している。質の高いデータ構造を構築し、金融部門と連携させることが、タイ企業の長期的な備えとなる。今回のクルンシーとの協力により、サプライチェーンの重要な担い手である中小企業が、体系的なデータ管理ツールを通じて厳格化する環境規制に対応できるよう支援する」と述べた。「SETCarbon」は単なる報告ツールではなく、実際の資金調達やビジネスの移行支援に役立てられる。現在、同システムの利用者数は約380アカウントに達し、過去6か月で30%以上増加している。利用者の85%は上場企業だが、残り15%は非上場組織であり、ニーズの高まりが伺える。クルンシーとの提携により、同行の顧客である非上場企業の参入拡大を見込んでいる。
 アユタヤ銀行中小企業事業本部のドゥアンカモン・リンプワンティップ本部長は「クルンシーは、中小企業が低炭素ビジネスへ具体的に移行できるよう支援することに注力している。多くの事業者が知識や実践的なガイドラインを必要としていることを認識し、これまで継続的に『Krungsri ESG Academy』を開催してきた。今年はSETからの支援を受けて『SETCarbon』プラットフォームを導入する。これにより、事業者は温室効果ガス排出量を体系的に管理できるようになる。収集されたデータは、タイ温室効果ガス管理機構(TGO)の基準に基づいた検証や登録が可能となり、将来的なサステナブル・ファイナンス獲得における信頼性を高めることになるだろう。また、排出削減のための製造工程やサービスの改善を希望する事業者に対し、最初の2年間は年3.5%という特別固定金利のローンを提供し、環境投資への負担を軽減する体制も整えている」と説明した。
 「SETCarbon」システムと今回の提携についての詳細は、タイ証券取引所サステナビリティ・サービス開発部 (電話020099844または02009 9597)、もしくはクルンシー・ビジネスセンター (電話026262626;月〜土 08:00-20:00 ※祝祭日・銀行休業日を除く)まで。

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