2024年6月26日(水)号

直接電力供給契約=パイロット事業開始を決定

 タイ政府は、再生可能エネルギーによる電力を取引する直接電力供給契約(ダイレクトPPA)のパイロット・プロジェクトを開始する。6月25日にセーター首相を議長に開いた国家エネルギー政策委員会の会議で決定した。2000メガ㍗の枠を設け、世界的な大企業にプロジェクト参加を呼び掛ける。このプロジェクトからの電力は国の電力システムと切り離し、電力公団が買い取ることはない。
 温室効果ガスの排出削減に寄与する再生可能エネルギー(再エネ)による電力需要は増えており、ダイレクトPPAは脱炭素と再エネの安定供給を両立させる新たな再エネ調達モデルとして注目されている。
 チャイ・ワチャロン政府報道官は、外国企業のタイへの投資を誘致するために、首相がクリーン・エネルギーの推進を重視していると述べた。特にクリーン電力への需要が大きいデータセンター関連産業では、直接契約の形で再エネ電力を売買できるよう求める声が強まっていた。外資系のデータセンター会社は、タイでデータセンターを開設するにあたって、再エネ電力の使用を親会社が方針にしているケースが多い。
 ダイレクトPPAでは、再エネ発電事業者と電力の需要家が事前に合意した価格と期間で再エネ電力の売買契約を結ぶ。実際には発電事業者からの電力を需要家に届ける第三者を介して電力を売買する(Third Party Access/TPA)ことになる。同日の会議では緊急課題としてダイレクトPPAに取り組むことを決め、年内の実現を目指すことを確認した。
 会議では、エネルギー省とエネルギー事業監督委員会(ERC)に対し、TPAサービスを通じたダイレクトPPAのパイロット・プロジェクト実施が、電力3公団と電力消費者に及ぼす影響を調査するよう指示した。ERCには、①送配電システム・サービス料金(Wheeling Charge)、②ネットワーク・システム接続サービス料金(Connection Charge)、③電力システム保障料(System Security Charge/ Ancillary Services Charge)、④電力量管理サービス料(Imbalance Charge)、⑤政策経費(Policy Expense)とその他の関連する費用からなるTPAサービス料のガイドラインを年内にまとめるよう指示した。
 会議では、2016年3月11日の国家エネ政策委の決定に基づき、バイオマス発電所の契約を加算方式から固定価格買取制度(FiT)に変更して契約を更新する場合の電力買取についても承認した。価格は1ユニット(㌔㍗時)あたり2.28バーツ。商業運転を開始しているバイオマス発電所が発電機などの耐用年数(20年)を通じて電力供給を継続できるようにするためで、合わせてバイオマス向けの再エネ発電証書(Renewable Energy Certificate/REC)の交付と再エネ電力生産から生じるカーボン・クレジットの発給も決定した。

再エネ発電第2フェーズ=応募資格を修正へ

 エネルギー事業監督委員会(ERC)は、再生可能エネルギー発電の事業者募集の第2フェーズの実施要項を修正する。プーンパット・リーソムバットピブン事務局長によれば、第2フェーズでは、第1フェーズで再エネ発電所開発の権利を獲得できなかったエネルギー会社のみが入札に参加できる条件がつく。これには民間側から修正を求める声が数多く上がっている。
 新任のプーンパット氏は、再エネ需要が高まり、多くの企業が再エネ事業への多様化を目論むなか、条件の修正はすぐにも行なうべきだと述べている。国家エネルギー政策委員会に条件修正を求める考え。
 再エネ発電第2フェーズの募集枠は3.6ギガ㍗。プーンパット氏は準備を進めているものの、年内に開始できるかどうかはまだ未定だと述べている。第2フェーズ開始が遅れているのは、第1フェーズのいくつかの発電所プロジェクトをめぐる係争が主因となっている。

米国の人身取引報告書=タイは「Tier2」のまま

 米国国務省による最新の人身取引報告書が公表され、タイは3年連続で第2階層(Tier2)にとどまり、Tier1への昇格はならなかった。報告書は「2000年人身取引被害者保護法」に基づいて2001年から毎年作成、公表されている。各国・地域の人身取引対策の状況について、深刻度に応じてTier1~3に分類している。最新の報告書は、3年前にTier2監視国から昇格したタイが、その後も人身売買の廃絶に努力していると評価したが、Tier1への昇格にはまだ不充分と指摘した。
 Tier2は人身取引被害者保護法に基づく対応の最低基準を完全には満たさないが、重要な努力がなされている国・地域、Tier2監視リストは、2と同様の国・地域だが、人身取引の被害者数が多い、または増加している国・地域を指す。Tier1は人身取引への対応の最低基準を完全に満たす国・地域。
 アセアンではベトナムとマレーシアがTier2監視国からTier2に昇格、ブルネイはTier3に降格、シンガポールとフィリピンはTier1となっている。なおTier3の国・地域には米政府による国際援助や国際金融機関からの資金援助に制約が設けられるなど、制裁が加えられる可能性がある。人身取引対策が最も遅れているTier3には、中国、ロシア、北朝鮮、イラン、ミャンマー、カンボジアなど21か国・地域が分類された。
 タイでは人身売買や強制失踪の捜査と摘発の件数や救済した被害者の数が増えている。移民労働者の強制労働に関する裁判件数の増加、国内13か所に犠牲者身分照会窓口を設置した点も評価された。報告書では人身取引形態の一つに強制労働を挙げている。
 一方で問題点として、近隣諸国を活動拠点とするコールセンター詐欺団に拉致された被害者の救出後の処理で、出入国管理法違反の罪に問われ、身柄を拘束されるケースを挙げている。国内各所で当局の対応にバラつきがあり、中には収賄に手を染める悪質な担当官もいる。報告書は特に北部国境地域でこの傾向が顕著だと指摘した。悪質な担当官の取締強化と、拉致されて国境を越えた被害者に対する適切な対応を提言している。
 ワラーウット・シラパアーチャー社会開発・人間安全保障相は、提言を真摯に受け止め、Tier1昇格を目指して改善に引き続き取り組んでいく意向を表明した。

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