工業信頼感、2月に改善=金利引き下げ・FDI拡大が下支え
タイ工業連盟(FTI)が3月18日に発表した2月の工業部門信頼感指数は90.0となり、1月の88.7ポイントから上昇した。金融緩和や外国直接投資の拡大、政府のコスト軽減策が企業心理を押し上げた一方で、エネルギー価格の上昇や地政学リスクなど先行きの不透明要因も残る。
クリアンクライ・ティアンヌクン会長[=写真]によれば、指数の上昇は複数の要因に支えられた。米連邦最高裁が相互関税措置を無効と判断したことに加え、米通商法第122条に基づき、すべての国に対して10%の関税を課す措置が発表された。その結果、タイの関税率は150日間引き下げられ、短期的に輸出業者のコスト負担の軽減につながっている。

タイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)は、政策金利を0.25%幅引き下げ、年1.00%とした。経済の回復を支援するもので、中小企業と家計の債務負担の軽減に寄与する。
外国直接投資(FDI)は拡大傾向にあり、1月の投資額は337億7900万バーツと、前年同期比46%増加した。タイ人の雇用は15%増加し、経済内の資金循環が拡大し、雇用の創出が促進され、国内の生産活動を支える要因とる。
政府の措置では、内閣が金融機関再建開発基金(FIDF)への拠出率を1年間の時限措置として、0.46%から0.32%へ引き下げると 決定した。金融機関のコストが低減され、融資の拡大や流動性の向上が期待され、特に中小企業の支援につながる。
中国正月(春節)期の消費は活発化する傾向にあり、消費額は約542億2100万バーツ、前年同期比5.0%の増加と見込まれた。特に食品・飲料、衣料品、印刷・包装産業における消費が押し上げられた。
しかしながら、2月には引き続き注視すべきマイナス要因も存在した。一部産業における稼働率が低位にとどまっていることで、繊維、家具、セラミック製品、農業機械、飲料などの産業が挙げられる。加えて、タイ・カンボジア国境沿いの森林火災の状況に対する懸念もあった。越境する煙害や大気汚染の問題を引き起こす可能性があり、住民の健康や国境地域における経済活動に影響を及ぼすおそれがある。
輸入については増加傾向がみられ、1月の輸入は前年同期比29.4%増加した。特に中国からの輸入は29.5%増えており、家電(22.12%)、コンピュータ・同部品(53.69%)、化学品(5.15%)の分野で増加が顕著だった。国内産業への圧力が高まるとともに、原産地偽装のリスクも増大するおそれがある。
◆エネルギー高騰と地政学リスク
3月の最新状況は、前月から一転して信頼感が悪化する傾向にある。国際的な紛争の長期化による影響によるもので、とりわけ米国・イスラエルとイランの戦争が、エネルギー価格と生産コスト全般に影響を及ぼしている。
政府は軽油価格の上限を、従来の1㍑あたり30バーツから33バーツへ引き上げ、段階的に調整を進める。企業と国民が徐々に適応できるよう配慮した措置で、産業界は価格がこの水準を超えなければ対応可能とみている。ただし、これを上回った場合、輸送コストが5~12%上昇し、製品価格が3~5%押し上げられる可能性がある。特に影響が大きい産業は、鉄鋼、アルミニウム、プラスチック、パルプ、ガラス、セラミック、石油化学、セメントなどで、エネルギーコストの上昇が製品価格の上昇圧力につながる。一方で、その他の産業への影響は限定的にとどまる。
海上輸送コストは航路の制約や輸送遅延により大幅に上昇しており、商品価格の上昇とインフレ圧力につながっている。エネルギーコストの面では、重油価格が従来の1㍑当たり7~8バーツから23~24バーツへと大きく上昇する見通しで、多くの産業、特に鉄鋼産業における主要燃料であることから、コスト圧力が一層強まる。その結果、企業はコスト管理を一段と厳格に進める必要に迫られている。
石油市場では価格の歪みも発生している。ガソリンスタンドでの販売価格と、ジョバー(中間卸業者)を通じた販売価格との間に、1㍑あたり最大11~12バーツの差が生じている。販売業者は資金繰りが悪化し、生産部門や農業部門への燃料供給が困難となり、一部地域では供給不足が発生し始めている。
こうした戦争の不確実性と石油価格の影響のもと、FTIは今後の物価動向について、3つの主要なシナリオに分けて評価した。
第1のシナリオは、軽油価格が1㍑当たり1~2バーツ上昇するケース。比較的低水準の上昇で、影響は限定的にとどまる。輸送コストは3~5%上昇し、商品価格もわずかに上昇する見込みだが、インフレ圧力は低水準に抑えられる。多くの企業はコスト管理が可能だが、中小企業は利益面で徐々に圧力を受け始める。
第2のシナリオは、軽油価格が2~4バーツ上昇するケース。影響はより広範に及ぶことになる。輸送コストは5~12%上昇し、多くの商品・サービスのコストが上昇する。天然ガス価格の変動により電力料金も1ユニット(kWh)あたり4バーツを超えて上昇する可能性があり、これがさらなるコスト増につながる。その結果、全体の物価は3~5%上昇し、インフレ圧力も0.5~1.0%程度まで高まる。特に中小企業はコスト増により資金繰りの問題に直面し始める。また、鉄鋼、アルミニウム、セラミック、セメント、パルプ、化学といったエネルギー多消費型産業では、エネルギーコストが生産コストの35~50%を占めることから、影響が一層顕著となる。全体としては、コストプッシュ型インフレの段階に入り始める局面と評価される。
第3のシナリオは、軽油価格が1㍑あたり4バーツを超えて上昇するケース。2022~2023年のロシア・ウクライナ戦争に伴うエネルギー危機に近い、深刻な影響をもたらす水準だ。この期間、原油価格は1バレルあたり120~140㌦まで上昇した。
当時、政府は軽油価格を1㍑あたり34.94バーツに据え置いたが、その結果、石油基金は2022年第4四半期に最大で1326億7100万バーツの赤字となった。
それでも、この水準の石油価格は輸送コストを15~20%押し上げ、電力料金も1ユニットあたり5.16バーツまで上昇した。その結果、産業部門の生産コストは大幅に増加し、全体の物価は6~8%上昇、インフレ率も6%まで加速した。
FTIは、影響の拡大を防ぐため、政府に対し早急な対策の実施を提案している。石油価格の格差を縮小するための中間卸業者への補助、国内の原材料確保を目的とした鉄スクラップ、アルミスクラップ、古紙の輸出停止の検討、ならびに軽油価格の段階的な管理を求めている。
2月にFTIが48業種を対象に実施した1340社の調査によると、企業の懸念が低下した要因は、国内経済(60.2%→57.5%)、世界経済(58.2%→53.1%)、政府の政策(39.2%→37.7%)。一方で、懸念が高まった要因は、輸出業者の視点からの為替レート(52.4%→53.6%)、エネルギー価格(27.1%→27.5%)、資金アクセス(24.3%→26.9%)、貸出金利(16.5%→19.8%)。
◆先行指数は改善
今後3か月の見通しを示す工業部門信頼感先行指数は97.4となり、1月の95.9ポイントから上昇した。ドリアン、マンゴスチン、ランブータン、ジャックフルーツなどの農産物の出荷増が見込まれ、農家の所得の向上と地方経済における資金循環の活性化に寄与するとの期待による。さらに、新政権のもとで進められる景気刺激策や公共投資の推進も、消費、投資、経済活動全般の拡大を後押しすると期待されている。
しかしながら、引き続き注視すべきリスク要因もある。とりわけ、米国による関税措置(201、232、301、338条など)の適用に伴う国際貿易の不確実性は、世界貿易、投資、さらにはグローバル・サプライチェーンに対して圧力を及ぼすおそれがある。米国とイランの間の地政学的緊張も、今後の世界的なエネルギー価格の動向や国際市場における貿易環境に対する懸念材料となっている。
◆通商リスク対応と産業支援を提言
クリアンクライ会長は、米国の貿易措置の監視メカニズムの高度化を政府に提案した。民間部門を体系的に統合し、米国通商法第232条、第301条などの措置やその他の非関税障壁による影響を共同で評価する体制を構築する必要があると指摘した。あわせて、貿易上の制約を軽減し、競争力を維持するため、積極的な交渉戦略の策定を進めるよう求めた。
国内産業を保護するため、アンチダンピング(AD)、相殺関税(CVD)、セーフガード(SG)などの措置の迅速な実施も提案した。あわせて、輸入リスクを監視するセンターを設置し、リスクのある商品を選別して積極的に調査を開始するとともに、輸入検査の強化を進め、低価格申告、品目の誤分類、原産地偽装、第三国経由の迂回輸出を防止するよう求めた。
このほか、技術とイノベーションの活用を急ぎ、スマート農業産業(Smart Agriculture Industry:SAI)の高度化と農産物の付加価値向上を支援するよう提案した。農産物価格の低迷問題の解決と農産加工産業の競争力強化を図る。そのために、機械設備の更新に対する資金支援、研究開発(R&D)の推進、品質の国際基準への引上げを後押しするよう提言した。
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