デジタルマネー給付=ピチャイ財務相が詳細を発表
ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相[=写真]は7月24日に首相官邸で開いた記者会見で、デジタルマネー給付政策の準備が完了したことを明らかにした。会見にはチュラパン・アモンウィワット財務副大臣とパオプーム・ローチャナサクン財務副大臣も同席し、経済を牽引する準備ができたと宣言した。
ピチャイ大臣は、デジタルマネー政策について詳細を検討した結果、憲法や関連法の規定に準拠していると強調した。様々な機関の意見を聴いた上で、注意深く慎重に考慮して政策をとりまとめたという。全国各地で資金の循環を促進するという重要な目的があり、国民の生活費負担を軽減し、生活の質を向上させ、コミュニティ経済が強化されると説明した。また国民の就労を促進し、経済と社会の利益のためのデジタル技術の開発の促進と支援にもつながるとした。
同大臣は、プロジェクトが実施されると、4つの資金循環が発生すると指摘、一つ一つの資金の流れを「サイクロン」と表現した。第1のサイクロンは、国民と小規模店のやり取りで、草の根経済の活性化につながると説明した。第2のサイクロンは小規模店と大規模店の取引で、その後に大規模店と大規模店の間で第3のサイクロンが発生し、購買力や消費の拡大、職業のための投資機会につながるとした。第4のサイクロンは、国民一人一人の購買力が乗数効果を生んで経済活動が活性化し、製造業の回復を支援し、経済システム全体に対する信頼感が築かれるとした。
チュラパン、パオプーム両財務副大臣によれば、国民の登録は8月1日から9月15日に実施される。対象は住居登録に名前の記載があるタイ国籍者で、24年9月15日時点で満16歳以上、23年度の所得が84万バーツを超えず、商業銀行や政府系特殊金融機関への預金が50万バーツを超えない者。預金は、①当座預金②普通預金③定期預金④預金カード⑤預金受領書⑥その他の預金商品の6種。今年3月31日時点の預金残高情報を調査する。バーツ預金のみで、共同口座の預金は含まない。このほかに現在、刑に服していないことや、政府の措置/プロジェクトで権利が停止されていない、その他条件への違反がないことも条件。有資格者は4500万~5000万人と推定している。モバイル・アプリ「ターンラット」を通じて登録する。アプリはiOSの場合は「App Store」、アンドロイドの場合は「Google Play」から直接ダウンロードできる。スマートフォンを持たない者の登録は現在準備中。追って発表する所定の場所で、9月16~10月15日に受け付ける。
スマホ経由では9月15日に登録を締め切った後、翌16日から10月15日にかけて資格や住所の確認を進める。参加店舗の登録は10月1日から開始予定で、詳細条件は追って発表する。マネー給付と給付されたマネーの利用は今年第4四半期中に開始する。
給付を受けた者が利用できる商店はコンビニを含む小規模商店。商店間のデジタルマネーを使った取引は、あらゆる種類の店舗が相互に商品を売買できる。個人と小規模店の取引は対面に限定されるが、商店間の取引は対面でなくてもよく、エリアが異なっても構わない。
チュラパン副大臣によると、デジタルマネー給付は今年の経済成長にほとんど効果を及ぼさない。個人の登録は8月から開始するが、これは同政策の経費の一部を9月末に期末を迎える24年度予算と24年度補正予算で賄うためで、実際に給付されたマネーを利用できるようになるのは今年末になる見通し。
25年はGDPを1.2~1.8%幅で押し上げるものと期待しているが、経済学者の中には効果を疑問視する見方もある。多くの家計が借金を抱えているためで、債務返済に充てられれば乗数効果は乏しくなる。デジタルマネーは債務返済には使えないが、日々の支出をデジタルマネーで賄い、自身の所得は借金の返済に充てる消費者が増えれば、デジタルマネーが需要を刺激する効果が薄れる。またデジタルマネーによる支出の一部は輸入品となり、国内のマネー循環に対する効果が削がれる。この政策に使う予算のために、別の政策で執行されるはずだった予算が削減されるのであれば、経済システムに注入される資金は増えない。このほかにも、この政策が終了した後の消費の反動減も予想されている。インラック政権が実施した初めての新車購入奨励政策は終了後に新車市場が反動減に見舞われている。ある著名エコノミストはGDPの押し上げ効果は0.4~0.7%にとどまると予測した。
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