2024年8月13日(火)号

グリーン・ローン=タイ中銀が商業銀行に奨励

 タイ中央銀行のセータプット・スティワートナルプット総裁[=写真中央]は、8月7日に商業銀行8行の代表が参加したイベント「Financing the Transition」で講演し、グリーン・ローンを奨励する方針を示した。企業の事業活動における環境負荷低減に必要な業務改善を資金面から支援することで、カーボン・ニュートラル、ネット・ゼロの実現につなげる。


 この日、バンコク銀行(BBL)、クルンタイ銀行(KBT)、アユタヤ銀行(クルンシー)、サイアム商業銀行(SCB)、カシコン銀行(KBank)、キアットナーキン・パトラ銀行(KKP)、TMBタナチャート銀行(ttb)、UOB銀行の8行とグリーン・ローン商品の拡充を進めていくことで合意した。
 セータプット総裁は「銀行業界が企業の持続可能な事業活動を支援することで、温室効果ガス排出量削減がより効果的に進む」との見解を示し、特に中小企業の取組を銀行業界が支援していく重要性を指摘した。
 総裁によると、「タイミング」、「期間」、「迅速性」の3つの要素が成否の鍵を握っている。現状、中小企業の多くは温室効果ガス排出量削減に本腰を入れていないため、インセンティブが必要。同総裁は、「最初の一歩は小さくとも、小さな成功を積み上げていけば、やがて大きな成功につながる」と述べた。
 SCBのクリット・チャンタノートックCEOは、「ホテルのクリーン化、グリーン化を支援しており、与信残高は1340億バーツに達している」と語っている。ホテル業は温室効果ガス排出量が多く、グリーン化は至上命題。同行は与信枠をさらに増やしてホテルのグリーン化を支援していく方針。25年までに持続可能な事業活動支援ローンの与信残高を1500億バーツまで増やす。融資と投資で2020年までにネットゼロを達成するという目標も掲げた。
 BBLはグリーン・ローンの新規与信枠を100億バーツに設定した。チャートシリ・ソーポンパニット頭取によれば、「環境分野における持続可能性への移行に向けたブアルアン・グリーン・ローン」という与信商品を開発した。
 Kbankのカティヤー・イントラウィチャイCEOは、これまでに940億バーツのグリーン・ローンの与信残高があり、年内に1000億バーツの大台に達する見通しを明らかにした。30年までには2000億バーツまで増やす計画だ。環境への影響を低減するための事業経営ができるよう企業に金融支援を提供していく。
 KKPは特に不動産業の取引先が多く、同産業のグリーン化を支援していく。アピナン・クリアオパティノンCEOは、気候変動が引き起こす危機は深刻で、より身近な問題だとし、自行と取引先の両方で持続可能性への移行を重視していくとした。特に不動産セクターは環境の持続可能性への関心が高いという。同行の主要取引先でもあるため、移行に成功するかどうかが自行の命運を左右するとしている。
 ttbは中小企業のグリーン化支援を重視していく意向を表明している。ピティ・タンタカセームCEOによれば、4000社以上の取引先で、グリーン化が遅れることによる事業リスクに直面する可能性があり、早急に支援していく必要があるという。

前進党所属議員=全員が民衆党に移籍

 憲法裁判所の判断に基づき選挙委員会(EC)から解党命令を受けた前進党の所属議員は、被選挙権を剥奪された5人を除く143人全員が「民衆党(プラチャーチョン党)」に移った。9日に都内ニューペッブリ通りのタイ・サミット・タワーにある旧前進党本部で正式発表した。党首にはナッタポン・ルアンパンヤーウット氏が就任した。
 憲法裁は7日、前進党解党を求めたECの憲法判断請求について、前進党の行為が憲法の規定に抵触するとの判断を下した。ECは同党の解党と合わせて党執行部メンバー11人(現職下院議員は5人)について10年間、被選挙権を停止した。これを受け、現職議員143人と都議会議員11人は下院に議席を持たないティンガーカーオ・チャオウィライ党に合流し、党首を含む党執行部を刷新、党名も民衆党に変更した。被選挙権や国務大臣資格が停止された5人にはピター・リムジャルンラット前党首、チャイタワット・トゥラートン党首が含まれる。
 前進党のソーシャルメディアのアカウントや公式ページなどは、新党名に変更され、党のロゴマークも刷新した。解党判断が出た直後には、与党に移籍する者が出るとの見方がなされていたが、造反者はなかった。前進党支持者らによる民衆党への献金や党員登録は正式発表直後から続いており、献金額は発表翌日に1000万バーツを超えた。
 民衆党の党首に就任したナッタポン氏は、昨年の総選挙で比例区から当選した。旧新未来党の結党当初からのメンバーで、当選2回。現在、37歳で、チュラロンコン大学工学部卒後に民間企業で幹部社員として勤務した経験がある。
 民衆党は野党第一党として政府・与党を監視していくとともに、遅くとも3年後に実施される総選挙に備える。前進党の前身政党である新未来党が19年の総選挙で獲得した議席は81で、昨年の総選挙で前進党が獲得した議席は151。解党の影響は見られなかった。今回も党勢拡大につながるとの見方があり、党幹部らは次回総選挙での単独過半数の獲得を目指すとしている。
 なお前進党の解党理由となった刑法典第112条(不敬罪)の改正について、ナッタポン党首は記者団の質問に、憲法裁が改正そのものを禁じたわけではないと答えた。党の基本姿勢に変わりはないが慎重に進めていくと述べた。
 憲法裁判所は今年1月31日、ピター氏と前進党の44人の議員が21年3月25日に112条改正法案を国会に提出したことに対し、「国王を元首とする民主主義統治体制」を転覆させる意図を持つものと断じている。この行為が重大な倫理規定違反に当たるとの告発があり、国家汚職防止取締委員会(NACC)が調査している。憲法第235条は、NACCが政治的地位にある者による重大な倫理違反の証拠をつかんだ場合、最高裁判所に告訴すると定めている。最高裁が受理し、有罪判決が出れば議員資格を失うことになる。民衆党に移籍した議員で該当する者は25人。
 一方、ティンガーカーオ・チャオウィライ党が2012年の結党以来、4地方に党支部を設置しなければならないとした規則を守っていないとして、選挙委員会に調査を求める動きがある。同党には南部と東北地方に支部がなかったため、政党としての地位をかなり前から失っているという主張。

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