家計債務の削減=利払い猶予措置を検討
財務省はタイ中央銀行、国家経済社会開発評議会(NESDC)事務局、タイ銀行協会(TBA)と協力して脆弱な債務者の債務返済負担を軽減する措置を導入する。住宅ローン、自動車ローン、商工ローンが対象で、例えば3年間といった一定期間にわたって利払いを猶予し、債務者が所定の条件を満たせば、猶予期間中の利子の支払いを免除するインセンティブを設けることを想定している。財務省のスポークスマンを務めるポーンチャイ・ティラウェート財政局長によれば、来年初めからの実施を予定している。
債務負担を軽減するという目標の達成を確実なものにするとともに意図的な返済不履行を防ぐ目的から、このプログラムに参加する借り手は一定期間、借入によって新たな借金をつくることができないようにする。ポーンチャイ氏は、このイニシアチブが一時的なものであることを強調した。所得が回復すれば、通常の返済を再開できるよう、債務者を支援するも。政府のデータと銀行のデータをリンクし、すべての当事者が債務負担と返済能力を効果的に評価できるようにすることで構造的な問題に対処する。
措置の詳細と債務者の参加基準はTBA、財務省、中銀が検討中だが、24年1月1日より前に実行された融資で、24年10月31日時点のデータで返済困難に陥っているものが対象になるもよう。消息筋によれば、利払いの猶予のほか、返済期間を延長して月々の元本返済額を減らすことも検討している。対象となる債務者は、債務残高が住宅ローンで300万バーツ、自動車ローンで70万バーツ、商工ローンで300万バーツ以下を目安にしている。
今年6月末時点の家計債務残高はGDPの89.6%で、3月末時点の90.7%からは低下しているものの、依然として高水準にある。家計債務のGDP比は80%を超えれば債務負担によって長期的な経済成長に悪影響が及ぶとした国際決済銀行の指摘を示し、家計債務のリストラを支援し、将来の経済成長に影響を与えないようにする措置が必要だと説明した。金融の安定と長期的な経済成長へのリスクを減らすため、家計の債務水準をGDPの80%未満に抑制することが最終的な目標になる。
家計の債務水準は高いが、ポーンチャイ氏によれば、債務の大部分、約66.5%は資産形成を目的とした資産の購入やキャリア開発と学資ローンなどの教育に関連するものになっている。家計債務の44.7%は担保がある。また自動車/二輪車ローンと住宅ローンは収縮を続けていることから、家計債務は今後、減少に向かう可能性が高い。自動車/二輪車ローンは第2四半期に5.77%減となり、3・四半期連続で減少した。
債務リストラ策は脆弱な借り手の資金繰りの改善につながるものの、新規融資に対する金融機関の信頼感の改善にはつながりそうにない。金融機関はローンの実行に慎重になっており、融資の拒否率は上昇している。タイ工業連盟(FTI)は家計の信用力の低下に対する銀行の懸念にも対処しなければならないと指摘している。
自動車ローン、特に自営業者の生業に欠かせないピックアップトラックに対する一時的な利払い猶予は、差し押さえを防ぎ、仕事のために車を使い続けることができるという点で債務者の財務困難を緩和する。同様に、住宅購入者も住宅を維持することができる。ローンが払えずに家を失えば、賃貸住宅を求めなけれなならず、財務負担は増す。これらの措置は直接的には新車市場や住宅市場を活性化させることはないが、債務返済問題からの景気の低迷を防ぐことで間接的な効果を持つとの指摘もある。
タイ商業会議所(TCC)のサナン・アンウボンクン会頭は、債務者救済措置が商業銀行の債務者にのみ適用される点を指摘、ノンバンクの債務者で返済難に陥っている者も多数いることから銀行以外の金融機関もプログラムに含めるべきだと述べている。
ペートンターン首相=トランプ氏と電話会談
ヂラユ・フアンサップ政府報道官によれば、ペートンターン首相は11月19日午前9時50分、ドナルド・トランプ氏と電話会談を行なった。祝意を伝えるとともにタイが米国と緊密に協力する用意があると表明した。
7~9月の経済成長率は3.0%=25年は2.3~3.3%成長予測
国家経済社会開発評議会(NESDC)が11月18日に発表した第3四半期(7~9月)のGDP成長率は3.0%となり、第2四半期の2.2%から加速した。季節調整済み前四半期比では1.2%増となった。1~9月の成長率は2.3%で、通年の成長率は2.6%と見積もった。
支出面では政府投資支出が6・四半期ぶりに拡大に転じたほか、財・サービス輸出、政府消費支出も高い伸びを記録した。ただし民間消費は減速し、民間投資は収縮した。
生産面から見ると、製造業、宿泊・飲食業、卸・小売・自動車修理業、運輸・倉庫業の成長が続いたほか、建設業は4・四半期ぶりに増加に転じた。ただし農林水産業は収縮が続いている。
第3四半期の成長率はシンクタンクの予想を上回っている。消費支出が堅調で、政府支出の急増が成長率の上振れにつながったと見ている。一方、カシコン・リサーチ・センター(Kリサーチ)は、政府支出が拡大し、投資委員会(BOI)への投資申請も急増しているのとは対照的に民間投資が2・四半期連続で収縮したことを注目点に挙げている。
NESDCは25年の成長率を2.3~3.3%(中間値2.8%)と予測した。経済成長を支えるのは、①政府支出の増加、②国内の民間需要の拡大、③観光業の回復の持続、④物品輸出の継続的な増加。民間消費と民間投資はそれぞれ3.0%増、2.8%増、ドル建て物品輸出額は2.6%増、経常収支はGDP比2.6%の黒字と見積もった。
ダヌチャー事務局長は輸出の継続的な成長を促し、米国のトランプ大統領就任にともない増大する可能性がある貿易障壁に対処することが来年のマクロ経済政策の優先事項になると述べた。政府投資は貿易障壁の影響を緩和する上で重要な役割を果たすとした。建設業と製造業を刺激するため、投資支出を加速させ、追加の投資計画を策定する必要があるとしている。また家計債務は高水準で推移しそうで、債務者救済措置の有効性を注意深く監視する必要があると指摘した。
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