2026年7月1日(水)号

工業生産指数、5月は0.8%低下=景気対策が中東情勢の影響を緩和

 工業経済事務局(OIE)は、5月の工業生産指数(MPI)が101.18となり、前年同月比0.80%低下したと発表した。設備稼働率は59.64%だった。自動車産業の低迷に加え、高インフレや中東情勢を受けた生産コストの上昇、工業部門の景況感悪化が重荷となった。一方で、政府の景気対策「タイチュアイタイ・プラス」、工業製品輸出の23か月連続の増加、外国人観光客の回復が下支え要因となった。OIEは、「タイチュアイタイ・プラス」により、中東情勢による悪影響が和らぎ、工業部門のGDPを約1.3~1.6%押し上げる効果が見込まれるとしている。
 OIEのスパキット・ブンシリ事務局長[=写真]は、5月の指数低下について、自動車産業が国内販売と輸出の減速を背景に前年同月比8.68%減少したことが主因と説明した。さらに、高インフレが生産コストと生活費を押し上げ、家計の購買力を圧迫したほか、中東情勢の緊迫化によるコスト増や、工業部門信頼感指数が前月の85.3から84.7へ低下したことも、生産活動の重しとなった。


 一方で政府の景気対策が経済を下支えしている。特に「タイチュアイタイ・プラス」は個人消費と購買力の回復を後押ししており、今後は消費財の生産や工業部門全体を下支えすると見込まれる。
 また、工業製品の輸出は23か月連続で増加し、外国人観光客も再び増加基調にある。これを受け、冷凍調理食品、冷凍エビ、果物缶詰、スポーツシューズなど関連産業では需要の増加が期待される。
 OIEによる6月の工業経済アラートは、タイ経済全体について「引き続き警戒が必要」との判断を示している。国内では、自動車関連投資の減速に加え、包装資材価格の上昇を背景に食品・飲料分野で受注見通しに対する信頼感が悪化している。
 海外では、主要国の製造業の減速が引き続き懸念材料となっている。米国では中東情勢への懸念から製造業が引き続き収縮し、欧州でも複数の国で製造業が低迷している。東南アジアではエネルギー価格の上昇が企業活動の重荷となっている。一方、中国の輸出は引き続き拡大しており、世界貿易が持ち直す兆しもみられる。
 スパキット事務局長は、「OIEが社会会計行列(SAM=Social Accounting Matrix)を用いて『タイチュアイタイ・プラス』の工業部門への影響を分析した。その結果、中東情勢の悪化による負の影響を和らげ、工業部門のGDPを押し上げる効果が見込まれることが分かった」と説明した。
 中東情勢が長期化した場合でも工業部門のGDPを約1.3%押し上げる。情勢が改善する場合には約1.6%押し上げる効果も見込まれるという。恩恵を受ける業種として、清涼飲料、食品、日用品、繊維・衣料品、包装材などを挙げた。
 OIEは今後も情勢を注視し、タイの工業部門が競争力を維持できるよう必要な支援策を検討していく方針だ。
 5月の工業生産指数を押し上げた主な業種では、一般機械が前年同月比20.01%増となった。国内向けではエアコン用コンデンシングユニットやコンプレッサーの受注が増加し、輸出向けではルームエアコンの生産が伸びた。前年より高温で降雨量が少なかったことに加え、省エネ性能の高い新型エアコンに対する需要の拡大が生産を後押しした。
 石油精製品は前年同月比5.33%増加した。航空燃料や重油を中心に、需要に対応するため燃料在庫を確保する動きが生産を押し上げた。
 砂糖は20.10%増となった。精製白糖や糖蜜を中心に、契約に基づく出荷に対応するため、製糖工場が粗糖の加工を急いだ。
 一方、5月の工業生産指数を押し下げた主な業種では、自動車が前年同月比8.68%減少した。大型乗用車、小型乗用車、ピックアップトラック、EVの生産が落ち込んだ。金融機関による融資審査の厳格化に加え、中東情勢の悪化やホルムズ海峡の封鎖に伴い輸出需要が減少したことがマイナス材料となった。
 パーム油は31.13%減となった。前年に旱魃と猛暑の影響で収穫が前倒しとなっていた反動から、原料となるパーム椰子の出荷量が細り、粗パーム油や精製パーム油の生産が落ち込んだ。
 化学肥料・窒素化合物は23.62%減少した。中東情勢の影響で一部原材料の供給が滞り、肥料原料価格が上昇したことで化学肥料価格も上昇した。一方、農家の購買力が低下したため、メーカー各社は減産を余儀なくされた。

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