2026年7月15日(水)号

BOIが投資戦略を抜本見直し=技術・人材・供給網強化で成長加速

 投資委員会(BOI)は、今後の投資奨励政策の在り方を議論する会議を開いた[=写真]。タイ国民への利益還元と経済成長を基本理念に据え、投資環境の充実や投資家向けサービスの高度化、「チーム・タイランド」の連携強化について協議した。世界的な投資環境の変化を踏まえ、経済成長率3%超の実現や世界競争力ランキング上位20か国入り、高所得国入りを視野に新たな戦略を描く。


 ナリット・トゥードサティラサック事務局長は、エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相が6月11日、投資奨励政策見直し会議の議長を務めたと明らかにした。チョンブリ県で開いた会議には委員や有識者、BOI幹部が出席し、世界の投資動向やタイの投資機会、今後の投資奨励政策の方向性について意見を交わした。急速に変化する世界経済への対応や、競争力の高い産業構造への転換、国民が実感できる利益の創出などをテーマに議論した。
 エークニティ副首相兼財務相は、BOIについて、これまで効率的に投資誘致を進めてきたと評価した。一方で、今後は投資誘致を通じてタイ経済の構造改革と競争力向上を担う役割を一段と強める必要があると指摘した。
 また、評価指標についても見直しが必要だとし、認可件数ではなく、実際の投資の実現を重視する考えを示した。付加価値を生み出し、その成果を国民や経済全体へ広げる投資を重視するほか、投資環境の充実、人材育成、行政サービスの迅速化を進める方針を示した。さらに、デジタル技術やAIの活用により投資奨励業務を高度化し、関係機関との連携を深める考えを示した。
 同副首相兼財務相は、「BOIを国の重要政策を実現する柱の一つに育てたい。タイ経済を3%超の成長軌道に乗せるほか、政府発足から4年以内に競争力ランキングで世界20位以内に入り、12年以内の高所得国入りを実現したい」と述べた。
◆新時代の投資戦略を議論
 会議では、新たな投資戦略に向けた3つの課題を議論した。第1は「どのような価値を生み出すか」で、投資奨励の成果を投資額だけではなく、より幅広い視点から評価する。第2は「何に投資するか」で、タイが重点を置く産業分野を見極める。第3は「どのように進めるか」で、投資奨励制度や投資家向けサービス、関係機関の連携を生かし、投資家と国の双方に利益をもたらす仕組みづくりを進めるとした。
 投資が国にもたらす価値については、投資額や雇用創出が引き続き重要な指標である一方、国内付加価値の拡大、技術・研究開発の高度化、高度人材の育成、タイ企業や中小企業(SME)のサプライチェーン参入、産業エコシステムの形成、資源利用の効率化なども評価対象に加えるべきだとの認識で一致した。
 また、BOIによる投資誘致後は、関係機関が連携して成果を高める仕組みを構築し、機関横断型の共通KPI(Integrated Strategic KPIs)を設定する方針も示した。
 重点産業については、政策の重点をより明確にする必要があるとして、半導体・先端電子産業、デジタル・AI、先端工学・新素材、高付加価値農業・食品、医療・ヘルスケア、次世代自動車を有望分野に挙げた。
 一方、既存産業についても技術の高度化を進め、タイの強みや将来戦略に合致しない分野への支援は縮小する考えを示した。生産性向上や環境負荷低減、新たなバリューチェーンへの参入を促し、「旧産業と新産業」という区分ではなく、「既存産業の高度化と転換」という視点で産業政策を進めるとした。
 投資振興策では、税制、金融支援、行政サービス、投資家支援を一体的に活用し、新規投資の誘致に加え、既存投資家による事業拡張や高付加価値分野への転換を後押しする方向で議論した。
 人材育成では、タイ人材の能力向上やリスキリングを重視し、企業が産業ニーズに合った教育課程づくりに参画する仕組みや、企業実習の拡充、研究開発支援、技術移転を具体化する制度づくりを進める方針を確認した。
 ナリット事務局長は、「BOIは、これまで高い評価を受けてきた投資奨励制度の強みを維持しながら、新たな考え方も積極的に取り入れていく。世界の変化に対応できる制度やサービスを充実させ、タイを長期的な成長と高い付加価値を生み出す魅力ある投資先へ発展させたい」と述べた。

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