2027年8月5日(水)号

タイ・インドネシア、戦略協力強化=貿易230億ドル、越境犯罪対策も

 アヌティン首相兼内相は8月3日、インドネシアの首都ジャカルタを訪れ、プラボウォ・スビアント大統領と会談した[=写真]。タイ首相によるインドネシア公式訪問は15年ぶり。両首脳は「タイ・インドネシア戦略的パートナーシップ」を具体的な成果につなげ、二国間貿易や投資、越境犯罪対策、観光、教育、安全保障など幅広い分野で協力を強化する方針を確認した。


 ラチャダー・タナディレーク政府報道官によると、アヌティン首相は同日午後3時45分、ジャカルタのハリム・プルダナクスマ空港に到着した。プラボウォ大統領の招待を受け、3~4日の日程でインドネシアを公式訪問した。
 代表団には、シーハサック・プアンケートゥケーオ副首相兼外相、スパチー・スタムパン副首相兼商業相、アドゥン・ブンタムジャルーン国防相、プラサート・チャンタラルアントーン教育相、ワチャラポン・カオカム農業・協同組合副大臣が加わった。首相は午後4時30分、インドネシア大統領府で開かれた公式歓迎式典に出席した。プラボウォ大統領が首相を出迎えた。出迎えた青少年とあいさつを交わし、双方の代表団を紹介した後、両国国旗の前で記念撮影した。
 ラチャダー政府報道官は、式典がタイとインドネシアの緊密な友好関係、相互の信頼、長年にわたる交流を反映するものとなったと説明した。タイ首相による15年ぶりの公式訪問の重要性に加え、戦略的パートナーシップを具体的な成果へ発展させる両国の意思も示したとしている。
 式典後、両首脳は少人数会合を行ない、午後5時30分からムルデカ宮殿のオーバル・ルームで双方の代表団を交えた全体会合を開いた。世界経済の不確実性が高まるなか、アセアン有数の経済規模を持つ両国が今後の協力の方向性を定める機会となった。
 両国は戦略的パートナーシップを通じて新たな経済機会を生み出し、競争力を高め、両国民の安定した暮らしを支える方針を確認した。地域の平和と繁栄を担うアセアンの力も高める。
◆貿易額230億㌦へ
 経済分野では、現在約195億㌦の二国間貿易額を2030年までに230億㌦へ引き上げる取り組みを加速させることで一致した。両国の潜在力を生かせば、期限より早く目標を達成できるとの自信も示した。
 アヌティン首相は、タイがインドネシアの信頼できる経済パートナーとなる用意があると表明した。食糧安全保障の強化に向けて農産物貿易を拡大し、相互の投資を支援するほか、地域のサプライチェーンの連携を深める。インドネシアの民間企業に対しては、タイへの投資を呼びかけた。
 タイは大陸部アセアンの中心となる潜在力を持ち、地域の主要市場と効率的に結ばれていると説明した。両国は、世界的に高い成長が見込まれるハラル産業の拡大でも一致した。大規模なイスラム教徒の消費市場を持つインドネシアの強みと、タイの生産能力、商品品質、ハラル基準を組み合わせ、両国企業の付加価値を高める。
◆越境犯罪の取り締まりで連携
 安全保障分野では、オンライン詐欺組織、人身売買、麻薬密輸を中心とする国境を越えた犯罪の取り締まりで協力を強化する。情報機関による情報交換を密にし、法執行機関の共同活動にも取り組む。
 アヌティン首相は、オンライン犯罪は国境のない脅威で、本格的な解決には国際協力が欠かせないと述べた。タイは過去1年間に、近隣国のオンライン詐欺組織の被害に遭ったインドネシア人1000人余りが安全に帰国できるよう便宜を図っている。
 軍事関係も、各階級や陸海空軍の各軍種で緊密になっており、合同訓練を続けている。プラボウォ大統領も過去にタイの特殊部隊と共同訓練を行なった経験がある。
 観光分野では、両国間の人的往来が増えていることを歓迎した。タイ観光公団(TAT)とトランスヌサ航空が、バンコク~ジャカルタ線とプーケット~バリ線の直行便開設に関する覚書を締結したことにも歓迎の意を示した。移動の利便性を高め、観光経済を活性化し、国民間の交流を深める効果が期待される。
 両首脳は、世界経済の変動への対応力を高めるため、アセアンの経済統合を一段と深化させる方針でも一致した。地域の平和、安定、協力を守るアセアンの役割を支持する。
 アヌティン首相は、タイとインドネシアがいずれもOECDへの加盟手続きを進めていることから、両国が対応を調整し、経験を共有すべきだと提案した。アセアンとOECDを結ぶ架け橋となり、地域の経済、投資、ガバナンスの基準を国際水準へ引き上げる考えを示した。
◆戦略協力の行動計画を交換
 会談後、両首脳は重要文書2件の交換に立ち会った[=写真]。1件目は、両国の長期的な協力の枠組みとなる「タイ・インドネシア戦略的パートナーシップ行動計画」。2件目は教育分野の覚書で、児童・生徒、大学生、人材、知識の交流を支援し、将来の両国協力を一段と緊密にする基盤を築く。
 両首脳は続いて共同記者会見を開いた。プラボウォ大統領は、今回の会談がタイとインドネシアの継続的な協力を本格的に始動させる契機になると強調した。アセアンの原加盟国として、両国が地域の繁栄、安定、安全保障を支える責任を共同で担うと表明した。
 アセアンが世界的な課題に対応し、地域の中心的な役割を力強く維持できるよう、両国が主導的な役割を果たす考えも示した。近隣国で働くようだまされたインドネシア国民が安全に帰国できるようタイが支援したことにも謝意を示した。意義のある支援で、両国の緊密な友好関係を反映していると評価した。
 両国は、人身売買、オンライン詐欺、新たな形態の安全保障上の脅威を中心に、国境を越えた犯罪の取り締まりで協力を強化し、両国民を具体的に保護する方針を確認した。
 地域問題について、プラボウォ大統領は、ミャンマーがアセアンへ段階的に関与する場を開くことに貢献したタイの役割を評価した。特に、アセアン外相による非公式協議を始めたことを称賛した。インドネシアは、ミャンマー情勢の平和的な解決を支えるため、5項目合意(5PC)に基づき、タイやアセアン加盟国と協力する用意があると表明した。
 プラボウォ大統領は、タイとカンボジアを巡る情勢についても、対話と建設的な仕組みを通じて平和的に緊張が緩和され、地域の平和と安定が維持されることへの期待を示した。タイとインドネシアの緊密な協力が、アセアンの力、安全、繁栄を長期的に高めるうえで重要な役割を果たすとの確信も示した。

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