2026年9月18日(金)号

EU包装規則への対応急務=輸出の競争力確保へ基準適合促す

 商業省商業政策戦略事務局(TPSO)は、EUが8月12日に施行した包装・包装廃棄物規則「Packaging and Packaging Waste Regulation(PPWR)」への対応をタイの輸出業者に促している。有害物質を含まない包装やリサイクルしやすい素材の使用など、EU基準への早期適応を求めている。輸出障壁の軽減や競争力の確保につなげる。
 TPSOのナンタポン・ヂララートポン事務局長[=写真]は9月17日、EUが環境分野の貿易政策を主導していると指摘した。欧州グリーンディールのもと、包装・包装廃棄物に関する「Regulation (EU) 2025/40(PPWR)」を導入し、規制を一段と厳しくした。PPWRは包装の設計、生産から使用後の処理まで、ライフサイクル全体を規制する。EUで販売されるすべての包装をサーキュラーエコノミーの原則に適合させ、廃棄物の削減や再使用を拡大するほか、廃棄物として処分せず、生産工程へ再投入できる素材の利用を増やす狙いがある。


 EU加盟27か国で販売される商品と包装に共通の産業基準を設け、加盟国間の貿易障壁を減らし、不公正な競争を防ぐ役割も担う。PPWRは従来の包装関連法に代わるEU共通基準で、健康面で安全な包装の品質を管理し、環境に有害な化学物質による汚染の削減を図る。
 規則には、①懸念物質(Substances of Concern)の含有量と濃度に関する規定、②鉛、カドミウム、水銀、クロムなど健康に有害な金属の検査基準、③すべての食品包装におけるPFAS系防水コーティング剤の使用禁止――などを盛り込んだ。対象は段ボール箱やプラスチック袋、商品包装用プラスチックといった一般的な包装に限らず、PPWRが定める幅広い包装に及ぶ。紙コップ、紙袋、アルミホイルなどの使い捨て包装(Service and Disposable Packaging)、商品タグや商品に貼るステッカー、商品ラベル用ステッカー、商品を固定する器具など商品の補助的な構成要素(Ancillary Elements)が対象となる。
 パルプ製ティーバッグやコーヒーカプセル、その他の飲料抽出用カプセルなど、商品と一体になった単回使用包装(Single-serve units)に加え、電子商取引の商品配送用包装(E-commerce Packaging)も規制対象に含まれる。商品のサプライチェーンで使われる幅広い包装が対象で、輸送用、販売用、保管用の各包装に加え、EU市場の飲食サービス事業で使われる包装にも適用される。
 PPWRの施行はタイの輸出にも影響を及ぼす可能性がある。EUはタイの主要輸出市場の一つで、2025年のEU向け輸出額は264億9169万㌦と、24年の242億470万㌦から9.45%増えた。25年のタイの物品輸出全体に占めるEU向けの割合は7.79%。米国の21.31%、中国の11.71%に次いで3番目に大きかった。26年上半期もEU向け輸出は20%増え、拡大が続いた。
 TPSOは、米国と中国への集中度が高いタイの輸出構造のリスクを分散するうえで、EU市場の重要性が増しているとみている。長期的にも重要な市場と考えており、商業省はタイ企業が高付加価値市場へ参入し、他国の輸出業者と同等の条件で競争できる環境をつくるため、EUとのFTAの早期妥結に向けて交渉を進めている。
 PPWRへの対応も、生産者や輸出業者にとって急務となっている。輸出品をEUの包装安全基準に適合させるほか、包装の生産に使う健康に有害な化学物質や金属の含有状況を確認する必要がある。商品や包装は輸送しやすい設計に改良し、包装素材もリサイクルしやすいものへ切り替え、EUの指針に適合させることが求められる。輸出に伴う障壁を減らし、EU市場で競争上の優位性を確保する狙いがある。
 ナンタポン事務局長はPPWRについて、環境問題を貿易措置に組み込み、高付加価値市場で販売する商品の生産者に生産・輸出方法の変更を求める、新たな形の貿易措置の一例だと指摘した。商業省は貿易情勢を注視し、規則変更について輸出業者への注意喚起を重視する。新たな規則に備えて市場動向への理解を深め、今後生まれる貿易機会の活用につなげる考えだ。

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