2026年9月14日(月)号

EV物品税見直し=国内生産・部品使用を優遇

 国家電気自動車政策委員会(EVボード)は9月10日、EVの物品税体系を見直す原則を承認した。タイ国内にもたらす投資、生産、部品調達、雇用などの経済効果に応じて税率を変え、国内生産やローカル・コンテンツの拡大を促す。輸入車と国内生産車の競争条件にも配慮し、既存の自動車産業の基盤を生かしながら、タイを多様な次世代車技術に対応する世界的な生産・輸出拠点へ引き上げる。
 タイではバッテリーEV(BEV)、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)を合わせたxEVが新規自動車登録の55%を占めるまで拡大した。EV関連の投資奨励額も約1520億バーツ規模に達し、三菱自動車、ホンダ、マツダ、いすゞなど既存の日系メーカーも合計500億バーツ超の追加投資を計画する。
 一方、内燃機関車(ICE)からEVへの技術転換では、既存の部品産業や中小企業(SME)、人材を新たなサプライチェーンへ移行させることが課題となっている。政府とタイ工業連盟(FTI)は、新技術への投資誘致だけでなく、国内サプライチェーンの形成、技術移転、人材育成を通じ、タイ国内に残る付加価値を増やす必要があるとの認識を示している。
◆国内利益に応じ物品税を段階化
 ナリット・トゥードサティラサック投資委員会(BOI)事務局長は、エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相[=写真]が議長を務めたEVボードで、EV物品税体系見直しの原則を承認したと明らかにした。


 新たな体系では、税制にタイ国内で生じる投資、生産、国内部品の使用、雇用などの経済効果をより強く反映させる。
 見直しは5つの原則に基づく。
 第1は「投資につながる輸入」で、車両輸入をタイ国内での実際の生産投資と結びつける。
 第2は、タイをEVの「地域・世界の輸出拠点」へ引き上げること。
 第3は「高付加価値の国内部品・原材料」の使用拡大で、タイ人の雇用や技能開発にもつなげる。
 第4は、国内生産車と輸入車の間に「公平な競争環境」を構築すること。
 第5は「国内部品メーカー」を育成し、タイの自動車サプライチェーンを強固にすることだ。
 新税制では、投資、生産、国内付加価値の水準に応じて税率を変える。
 海外から完成車を輸入し、輸入事業者がタイ国内に生産工場を持たない場合は税率を引き上げる。一方、すでにタイに工場を持つメーカーが、一部車種の市場性を試すためEVを輸入する場合には輸入台数を設定する。メーカーがタイ国内で生み出している経済価値も考慮する。
 国内で生産し、国内部品を一定程度使っているものの、主要電子部品を国内調達できていないEVについては別の税率区分を設ける。生産台数は少ないが、将来ローカル・コンテンツを引き上げる余地があるプレミアム車などを想定する。
 国内生産に加え、主要電子部品を含めて高い比率で国内部品を使うEVには、より低い税率を適用する。タイ国内への投資、生産、付加価値が大きいほど税率を段階的に低くし、メーカーによる生産能力の拡大や主要部品の国内調達を促す考えだ。
◆2つの小委員会で生産・充電インフラを強化
 EVボードは、政策を支える2つの小委員会の設置も承認した。
 工業大臣を委員長とする「次世代自動車・部品製造産業振興小委員会」は、次世代自動車や部品の生産サプライチェーンをライフサイクル全体で発展させる。使用済みEVバッテリーの体系的な管理や自動車の廃車処理も担当する。
 エネルギー大臣を委員長とする「EV充電インフラシステム開発小委員会」は、EV普及に対応した充電インフラや関連システムの開発、規制改善を担う。
 会議では財務省次官に対し、商用EVと電動二輪車の利用、生産を増やすための施策を検討するよう指示した。
◆拡大するxEV市場
 EV市場は急速に拡大している。2026年1~7月のBEV登録台数は12万6950台と前年同期比88%増加した。
 BEV、HEV、PHEVを合わせたxEVは、新規自動車登録全体の55%に達した。タイの自動車市場が電動化技術への転換期に入っていることを示している。
 投資も車両生産だけでなく、バッテリー、主要部品、充電インフラへ広がっている。
 2026年8月31日時点で、BOIが投資奨励を認可したEV産業・関連事業は189件、投資額は1513億7200万バーツに達した。
 内訳はバッテリー生産が870億7300万バーツと最大で、BEV生産が385億6300万バーツ、主要部品の生産が125億5800万バーツと続く。
 投資奨励を受けたEV充電ステーション事業では計2万3135基の充電器を設置する計画。このうち急速充電器は1万249基で、2030年目標の1万2000基に対して約85%に達した。
 既存メーカーも生産体制の転換を急ぐ。三菱自動車、ホンダ、マツダ、いすゞは合計500億バーツ超の追加投資を計画し、新型車開発、生産ラインへの自動化・ロボット導入、HEV、マイルドハイブリッド車(MHEV)など各種電動車技術への対応を進める。タイの自動車産業の電動化は、新規参入したBEVメーカーだけでなく、既存メーカーにも広がっている。
 ナリット事務局長は、世界の自動車産業がBEV、HEV、PHEV、将来の新技術など、電力をより多く利用する技術へ移行していると指摘。タイも長期的に自動車生産基盤の強さを維持するため、対応する必要があるとの認識を示した。
 政策では特定技術に限定しない姿勢を維持する一方、タイ国内で生まれる経済効果を重視する。物品税体系の見直しを通じ、輸入と国内投資の均衡を図り、国内生産、国内部品、技術開発、質の高い雇用につなげる考えだ。
◆工業相、人材と技術移転も重視
 ワラーウット・シラパアーチャー工業相は10日のEVボード会合に出席し、外国企業によるEV投資ではサプライチェーンの形成を重視する考えを示した。
 タイでは自動車産業に限らず、国内に広がるサプライチェーンが産業の競争力の重要な基盤となっている。ICEからEVへ移行する際には、車両技術だけでなく、部品産業やサプライチェーンの転換、能力向上も必要とした。
 投資額の大きさだけでなく、技術や知識がタイへ移転され、人材育成や国内企業の能力向上につながるかも重要と指摘した。
 自動車技術が変化するなか、人材も同時に転換する必要がある。工業省、高等教育・科学・研究・技術革新省に加え、教育省傘下の職業教育機関や工業専門学校も、自動車修理などの教育内容や専門知識を新技術に合わせて見直す必要があるとした。
 物品税については、輸入車と国内生産車の競争条件を公平にする一つの誘因になるとの見方を示した。一方だけが有利、不利にならない制度とすることで、国内需要の形成にもつなげられるとした。
 ただし、物品税引き上げなどを巡っては、支持するメーカーと懸念を示すメーカーが分かれているため、影響を見極めながら対応策を検討する必要があると付け加えた。
 ワラーウット工業相は、企業がタイへの投資を選ぶ以上、企業側にも経済的な利益があるとした一方、タイは地域を問わず投資家を歓迎する姿勢を強調。投資後は企業とタイ側の双方が成長し、持続性を高められる関係を築く必要があると述べた。
 ICE産業への対応も続ける。タイのICE生産基盤は現在の自動車産業を築いた重要な経済基盤であり、問題に直面したからといって切り捨てるのではなく、解決策を探りながら新技術への移行を進める考えを示した。
◆FTI、「既存基盤を守り、新たな基盤へ」
 タイ工業連盟(FTI)のピムチャイ・リーイサラヌクーン会長は9月9日、タイの自動車工業について、数十年にわたり蓄積してきた既存の生産基盤を維持しながら、将来の自動車産業へ発展させる必要があるとの見方を示した。
 タイには自動車メーカー、部品メーカー、SME、人材、国内外を結ぶサプライチェーンから成る幅広い産業エコシステムが存在する。
 ピムチャイ会長は、従来技術か新技術かのどちらか一方を選ぶのではなく、移行期をバランスの取れた形で管理することが重要と指摘。既存産業基盤を将来技術へ接続し、タイ企業が新たなサプライチェーンへできる限り多く参入できる環境を求めた。
 同会長は、今後の自動車産業政策で重視すべき課題として3点を挙げた。
 第1は、現在の生産能力を維持しながら、新技術への移行を適切に管理すること。
 特にピックアップトラックは、国内生産部品の比率が80~90%と高く、国内経済、雇用、サプライチェーンへの波及が大きい。こうした既存基盤を維持しながら、BEV、ハイブリッド車など将来技術が成長できる環境をつくる必要がある。
 第2は、タイ企業やSMEの新たな自動車サプライチェーンへの参入を早めること。部品メーカー、特にSMEによる資金、技術、市場へのアクセスを改善し、機械、自動化システム、デジタル技術への投資を後押しする必要がある。
 研究開発、基準の高度化、労働者のアップスキル/リスキルも重要とした。大手自動車メーカーとタイ企業の関係を深め、技術移転、製品開発、国内生産部品の採用拡大へつなげることで、中小企業が次世代車のサプライチェーンへ参入できる能力を引き上げる。
 第3は、投資誘致と国内付加価値の拡大を両立する政策設計。
 投資奨励や税制では、新技術への投資を呼び込む一方、既存産業基盤の競争力も維持する必要がある。新規投資を国内サプライチェーンの形成、国内部品の使用拡大、雇用創出、技術移転、タイ部品メーカーの育成へつなげ、タイ経済に実質的な価値を残すことが重要とした。
 ピムチャイ会長は、タイの自動車産業には国際的に認められた強固な生産基盤とサプライチェーンがあると強調した。この既存基盤を活用しながら、BEV、ハイブリッド車、その他の新技術を取り込み、産業全体の能力を引き上げる必要がある。
 既存生産基盤を維持しながら新規投資を呼び込み、タイを多様な自動車技術に対応できる地域・世界の生産拠点として高度化できるかが、今後の自動車政策の焦点となる。

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[閣議決定]
2026年9月8日

[為替・株式相場]
9月7~9月11日

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バンコク首都圏の燃油小売価格
天然ゴム

[金融市場]
外為相場
商業銀行預金・貸出金利

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