2026年7月21日(火)号

成都でタイ・中国投資連携を強化=中国大手4社、700億バーツ超を投資へ

 アヌティン首相兼内相は7月18日、中国・四川省成都市で、タイ企業の経営幹部約140人との昼食会や投資フォーラムに出席し、中国との貿易・投資連携を強める方針を示した。投資委員会(BOI)成都事務所を開設[=写真は開所式]したほか、中国の大手技術・自動車企業4社と個別に協議した。4社は2026年中に総額700億バーツを超える投資を計画している。フォトニクス、半導体、高速通信向けマイクロチップ、EVなどの高度技術産業が中心で、数万人規模の雇用創出が見込まれる。


◆タイ企業幹部約140人と意見交換
 アヌティン首相は18日、成都市の天府国際会議センターで開かれた昼食会「Prime Minister–Thai Private Sector Luncheon」に出席した。金融、食品、エネルギー、工業団地、医療・保健、観光など、幅広い産業分野で中国に投資するタイ企業の経営幹部約140人が参加した。
 首相は、成都を初めて訪問し、中国で事業を展開するタイの民間企業関係者と面会できたことに喜びを示した。今回の中国公式訪問は明確な目標に基づくもので、特に新産業における両国間の貿易・投資拡大を重視していると説明した。
 前日の17日に習近平国家主席と会談した際、習主席が「タイと中国は一つの家族」と改めて表明したことも紹介した。19日に李強首相と会談する際には、中国国内で事業を行なうタイ人事業者への支援を要請する考えを示した。
 BOIが成都事務所を開設し、同日午後に「Thailand–China (Sichuan) Investment and Economic Forum 2026」を開催することにも言及した。タイ政府が中国との地方レベルの貿易協力を深めるため、意欲的に取り組んでいる姿勢を示すものだと説明した。
 首相は、財務、外務を担当する副首相、関係閣僚、経済・投資関係省庁や政府機関の責任者、大使、BOI事務局長に対し、中国、特に四川省で事業を展開するタイ企業が直面する機会と課題について、民間部門と意見を交換するよう指示した。
 官民協力の可能性を探り、国と民間企業に新たな機会を生み出す責務が政府にはあると強調した。透明性があり、検証可能なグッドガバナンスの原則に沿って取り組む方針も示した。
 事業の障害となる法規の改正などを通じ、民間企業が円滑に活動できる環境をつくることも政府の役割だと説明した。現政権は民間企業の事業を支援し、投資効果を最大限に高めるために力を尽くすと訴えた。
 タイ企業の成長機会は中国に限らず、世界市場にも広がっているとして、重要な貿易相手国・地域とのFTA交渉を急ぐ考えも示した。
 首相は、タイ経済を動かしている民間企業関係者に謝意を表した。政府が事業機会を生み出し、民間部門が具体的な成功に結びつけるとの考えを示し、共通の目標を掲げる「チーム・タイランド」として協力すれば、中国市場だけでなく世界市場でも力強く持続可能な成長を実現できると強調した。
◆BOI成都事務所を開設
 首相は同日午後、「Thailand–China (Sichuan) Investment and Economic Forum 2026」の開会式で議長を務め、基調講演を行なった。在成都タイ総領事館投資部となるBOI成都事務所の開所式にも出席した。式典には四川省長、タイと中国の政府高官、投資家、両国の民間企業関係者が出席した。
 首相は、BOI成都事務所の開設について、タイ政府が中国との貿易・投資関係を重視し、地方レベルの協力拡大にこれまで以上に力を入れていることを示す重要なメッセージだと述べた。四川省は人口約8,000万人を擁し、域内総生産は中国の省・自治区などで6番目の規模。中国の主要な経済・産業拠点の一つだと説明した。
 タイの投資先としての強みには、アセアンの中心に位置する地理的条件、高水準のインフラ、強固なサプライチェーン、質の高い人材、エネルギー供給能力を挙げた。特にクリーンエネルギーの確保、政府の支援策、BOIの投資奨励制度が投資を後押しすると強調した。
 タイ政府は成長産業や未来産業に対応するため、行政制度と経済構造の改革を進めている。こうした要因を背景にタイへの投資は増え続け、2025年のBOIへの投資申請額は過去最高の380億人民元、約1兆バーツに達したとアピールした。
 四川省とタイの貿易には、なお大きな拡大余地があるとの見方も示した。新国際陸海貿易回廊(New International Land-Sea Trade Corridor)の開発や、成都・重慶経済圏(Chengdu–Chongqing Economic Circle)政策により、同地域は中国西部と南アジア、中央アジア、アセアンを結ぶ陸上シルクロードの重要な接続点になりつつある。首相は、タイがこの経済圏との接続で中心的な役割を担えるとした。
 首相はこうした成長力を踏まえ、政府と民間部門から成る代表団を率いて四川省を訪問したと説明した。貿易、投資、経済開発で四川省との関係を築き、双方の強みを補完しながら経済パートナーシップをより高い水準へ引き上げる方針を示した。
◆経済強化へ3分野の政策
 首相は、タイ経済を体系的に発展させる政策として、次の3分野を挙げた。
 (1)事業手続きの迅速化と利便性の向上
 大規模投資事業の認可期間を短縮する投資支援制度「タイランド・ファストパス」を活用する。同制度の対象となる投資額は、すでに7000億バーツを超えている。
 (2)タイ企業と人材の能力向上
 BOIの競争力向上基金と人材育成制度「スキル・ブリッジ」を通じ、企業の技術力や人材の技能を高める。
 (3)国内経済基盤の強化
 購買力を刺激する短期的な経済対策を実施しながら、経済構造改革を進める。特にエネルギー分野とデジタル経済への支援を重視する。
 首相は、こうした政策がムーディーズやS&Pグローバル・レーティングスなど、世界的な信用格付け会社から評価され、タイの信用見通しが改善したと説明した。国際経営開発研究所(IMD)の世界競争力ランキングでも、タイの順位は上昇を続けていると指摘した。政府が経済改革に真剣に取り組んでいることを反映し、世界の投資家の信頼向上につながっているとの認識を示した。
 中国の投資家には、タイへの投資を拡大するよう呼びかけた。タイは安定性、安全性、持続可能性を備えた投資拠点となる用意があり、信頼できる経済・貿易パートナーとして両国の長期的な成長につなげると表明した。
 基調講演後、首相はBOI成都事務所の開所式に出席した。タイと中国の民間企業による覚書(MOU)の交換式にも立ち会い、貿易、投資、未来産業に関する協力をさらに発展させる方針を確認した。
◆中国大手4社と個別協議
 ラチャダー・タナディレーク政府報道官は、首相が中国の大手民間企業4社の幹部と個別に会談したと明らかにした。会談したのは、小米集団(Xiaomi Corporation)、重慶長安汽車集団(ChangAn Automobile)、イノライト・テクノロジー(Innolight Technology)、イーオプトリンク・テクノロジー(Eoptolink Technology)の4社。首相は各社との協議を通じ、タイへの投資に対する強い関心を確認したと説明した。
 タイにはアセアンの中心に位置する地理的な優位性に加え、クリーンエネルギー、交通網、電力システム、技能を持つ人材など、投資を支える環境があると強調した。政府は「タイランド・ファストパス」で投資手続きの利便性を高め、BOIの投資優遇措置も提供する。すでにタイへ進出している多くの企業が追加投資を計画しており、中国国外への投資拡大を検討する企業も、タイを有力な投資先として注目していると述べた。
 首相は、今回の企業面談は各社の説明を聞くだけではなく、タイが事業を展開しやすい生産拠点となり、企業が投資効果を最大限に高められるよう政府が支援する姿勢を伝える機会だったと説明した。協議を通じて企業の信頼を高めただけでなく、将来の協力に関する要望を政府が把握できたとも述べた。
 特に研究開発(R&D)を重視し、工場の建設や国内資源の利用だけではなく、研究開発投資、技術移転、人材育成を組み合わせる必要があるとの認識で各社と一致した。
 首相は、こうした動きが、タイが新産業やAI分野に対応する準備を進めていることを示すと説明した。国際通貨基金(IMF)が報告書で、タイを世界のAI関連産業の主要生産拠点上位4か国の一つに挙げ、国際的な生産網に組み込まれていると指摘したこととも合致するとした。
【小米集団】
 小米集団との会談には、アラン・ラム副社長兼CFOが出席した。同社は、スマート機器、IoT、AIとIoTを組み合わせたAIoT、各種スマートデバイスを手掛ける大手テクノロジー企業。小米(Xiaomi)とRedmiのスマートフォン、タブレット、ノートパソコン、スマートホーム機器などを展開し、EV事業にも参入している。
 EVの生産、研究開発、販売は現在、主に中国国内で行なっている。同社は、タイが主要な自動車産業拠点であり、東南アジアの戦略的市場でもある点を重視している。
【長安汽車】
 重慶長安汽車集団との会談には、朱華栄党委員会書記兼会長が出席した。同社は中国自動車大手4社の一つで、主要国有企業として内燃機関車と新エネルギー車(NEV)を生産している。EVや主要部品も手掛け、世界129か国以上に生産拠点、研究開発センター、販売網を持つ。
 海外初の生産拠点としてラヨン県に工場を設け、アセアン市場と世界市場向けの右ハンドルEVを生産する。国際ビジネスセンター(IBC)と研究開発センターもタイに設置し、タイをEV産業と高付加価値事業の中核拠点とする方針を示した。
【イノライト・テクノロジー】
 イノライト・テクノロジーとの会談には、劉聖執行会長が出席した。同社は世界有数の光トランシーバーメーカーで、コンピュータ機器の研究、開発、生産を専門とする。
 タイを同社最大の海外生産拠点とし、主要な研究開発拠点にもしている。AIやデータセンター向け製品の開発・生産を重視し、主要な生産工程でグリーンエネルギーの使用を増やす方針だ。タイ人従業員や研究者を雇用しているほか、研究開発協力を拡大し、タイ国内の原材料や部品の使用を増やす計画を持つ。
【イーオプトリンク・テクノロジー】
 イーオプトリンク・テクノロジーとの会談には、高光栄執行会長が出席した。同社は、データセンターの中核技術となる光トランシーバーの設計、生産、販売を専門とする。AIコンピューティングやクラウド・データセンターの需要拡大を背景に、事業は成長を続けている。中国の主要な光トランシーバーメーカーの一つで、グーグル、マイクロソフト、アマゾンなど、世界の大手テクノロジー企業のサプライチェーンにも加わっている。
 タイは、同社が中国国外で初めて開設した唯一の生産拠点となっている。チョンブリ県とラヨン県で8000人以上を雇用する。同社はタイ政府に対し、タイで生産能力を拡大し、追加投資を行なう計画を示した。タイを同社の国際的なサプライチェーンに組み込み、国内で持続可能な事業運営を続ける方針も表明した。
◆4社の年内投資、700億バーツ超
 翌19日、ラチャダー政府報道官は、アヌティン首相が中国訪問を取材する報道陣のインタビューに応じ、前日に中国大手4社と協議した成果に満足していると述べたことを明らかにした。
 首相によると、中国の投資家、特に高度技術産業の企業は、関連製品の生産拠点や新技術の開発拠点としてタイを選んだことに自信を持っている。追加投資、特に研究開発分野への投資を拡大する用意もあり、タイ人労働者の技能向上を重視する首相の政策にも応える姿勢を示している。
 4社はタイへの投資計画を持ち、2026年中の投資総額は700億バーツを超える見通し。投資は、精密性と高度な技術を必要とする「プレシジョン・テクノロジー」産業が中心となる。データセンター向け光トランシーバー、半導体、高速通信向けマイクロチップなどが含まれ、EV分野でも生産能力を引き続き拡張する。
 首相は、今回の大型投資により、タイ人数万人分の雇用が新たに生まれるとの見通しを示した。政府はタイ人労働者の技能向上を重視し、外国の大企業から最新の知識や技術の移転を受けることで、タイの産業部門の付加価値を長期的に高める方針だ。
 中国企業がタイを優先的な投資先の一つに選ぶ理由について、首相は、交通網や公共サービスを含むインフラへの信頼を挙げた。こうしたインフラは、地政学上の課題に対応するため、中国国外に部品などの生産拠点を設ける企業に適していると説明した。

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