輸出好調も国内波及に課題=JSCCIB、データ連携を提言
商業・工業・銀行の経済3団体合同常任委員会(JSCCIB)は8月5日の月例会見[=写真]で、2026年下期の世界経済は中東情勢やAIを巡る技術動向に左右され、国や産業によって成長に差が生じる「K字型成長」が鮮明になるとの見方を示した。輸出と投資の拡大が見込まれる一方、生み出された付加価値を国内経済へ十分に波及させることが課題となる。政府機関と民間が持つデータを結びつけ、産業支援や福祉政策、犯罪対策に活用するよう提言した。

◆AI関連輸出が45.9%増
2026年下期の世界経済は、高い不確実性に直面している。中東の紛争とAIの技術動向が世界経済のK字型成長に影響しており、国際通貨基金(IMF)による2026年の成長率予測の見直しにも、こうした傾向が表れている。
エネルギー輸入への依存度が高い国では成長が鈍化する一方、デジタル化の恩恵を受ける国では成長が加速する見通しで、タイを含むアジア諸国は後者に当たる。とは言え、中東情勢が収束せず、インフレ圧力が高まっていることから、市場では米国の金利上昇観測が強まっており、これがアジア通貨の下落につながっている。
タイ経済は、世界的なデジタル化の流れを捉え、国内で付加価値を生み出す力を高めることが求められる。輸出と投資は好調な伸びが見込まれ、上期の輸出額はテクノロジー関連製品が牽引し、前年同期比17.6%増加した。
テクノロジー関連製品は輸出全体の26.5%を占め、世界的なAI需要を背景に45.9%増えた。K字型成長の上向き部分に属する製造業も高い伸びを示している。
一方で、生み出された付加価値は国内に十分に波及していない。タイへの外国直接投資の流入拡大が見込まれるが、域内バリューチェーン(RVC)への対応を強め、現地調達比率を引き上げる必要がある。将来の質の高い雇用の創出につながる計画も急がなければならない。
K字型成長の下向き部分に属する産業を明確に分類し、それぞれの状況に応じた支援を講じることも重要だ。
◆工場データを産業支援に活用
JSCCIBは、最新かつ包括的で、正確性を厳格に確認できる仕組みを備えたデータ連携の高度化を支持するよ表明した。信頼性の高いデータに基づき、状況に即した経済対策や福祉制度を設計し、実施後の成果も測定できるようにする。限られた予算や資源を有効に使い、経済運営の効率を高める狙いがある。
工場事業者の生産情報を示す「ローゴー8」のデータは、タイ企業の高度化に幅広く活用できると指摘した。特に、タイ国内で生産された商品を認証する「メード・イン・タイランド(MiT)」の支援に役立つとした。
生産構造や現地調達比率、労働力、サプライチェーンに関する情報も組み合わせ、K字型成長の下向き部分にある企業の回復を支える。
JSCCIBは、複数の政府機関と民間機関が保有するデータを結びつける「コネクト・ザ・ドッツ(Connect the dots)」構想も支持している。最新で信頼性が高く、幅広い情報を網羅するデータベースを構築し、行政情報を開放する「オープン・ガバメント」への移行を目指す。
活用例として、国家福祉カード事業を通じた脆弱層への支援がある。個人の生活状況や必要性を正確に把握できれば、支援をより公平に提供できる。
官民データの連携は、法的な抜け穴を利用した利益追求の抑制にも活用できる。名義貸しの実態を調査し、法律を回避する者が不当に有利になる状況を減らすほか、オンライン犯罪の取り締まりにも役立てる。
JSCCIBは、東部経済回廊(EEC)を事業円滑化法に基づくワンストップサービス型の事業支援地域として先行導入する案も示した。企業活動に必要な行政データをオンラインで実際に連携させる出発点とし、各機関が個別に予算や人員を投じる非効率な状況からの転換を図る。
◆新規投資開発5戦略に協力
JSCCIBは、経済問題解決のための官民合同委員会が掲げる国家新規投資開発の5戦略に協力する用意があると表明した。5戦略は、①投資・産業変革ハブ(Investment & Industry Transformation Hub)、②AI・デジタルハブ(AI & Digital Hub)、③グリーン経済(Green Economy)、④金融ハブ(Financial Hub)、⑤医療ハブ(Medical Hub)から成る。いずれもタイ経済の潜在力を引き上げる機会になるとみている。
アナリストは、今後アセアンに流入する外国直接投資(FDI)が2035年までに5440億㌦以上増えると予測している。タイは近隣諸国に劣らない主要な投資先となっている。
上期の投資委員会(BOI)への投資申請額が前年同期比37%増の1兆4700億バーツに達したことも、こうした見方と一致する。JSCCIBは、投資の拡大がタイの経済構造の転換を支え、将来の高所得国入りに向けた成長を加速させる要因になると期待している。
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