経済3団体が成長率予測を上方修正=輸出は12~16%増見込む
商業・工業・銀行の経済3団体合同常任委員会(JSCCIB)は9月2日の月例会見で、今年のタイ経済の成長率予測を従来の1.6~2.0%から2.1~2.5%へ引き上げたと明らかにした。輸出予測も従来の8~10%増から12~16%増へ上方修正した。一方で、輸出や民間投資が大幅に伸びても、国内経済への波及効果は以前より弱まっていると指摘。国内で取り込める付加価値の低下や、新規投資による雇用創出力の弱さが課題になっているとの認識を示した。

中東での対立が再び激化し、世界のエネルギー価格への上昇圧力が強まる一方、金融市場の変動も拡大している。9月初めの世界の原油価格は1バレル当たり95㌦に上昇した。7月の84㌦から大幅に値上がりしており、世界の石油在庫も継続的に減少している。
一方、軽油の輸出制限措置により、国内では石油製品の在庫が積み上がり、製油事業者は生産能力を引き下げざるを得ない状況にある。製油コストに影響が及んでいるほか、製油工程で生じるナフサ、ベンゼン、トルエン、パラキシレンなどの副産物の供給量にも影響が出ている。これらは石油化学、プラスチック、ゴム、化学、自動車、包装産業で使われる重要な原材料だ。
JSCCIBは政府に対し、自由貿易の仕組みに沿って石油製品の輸出を可能にする方向で、規制緩和を早急に検討するよう提案した。以前から提案してきた政府・民間共同による状況管理も改めて求めた。生産のバランスを維持し、製油業への影響を軽減するほか、タイの産業のサプライチェーンを途切れさせないために重要だとしている。
JSCCIBは、タイ経済の成長が「K字」の様相を強めていることから、国内産業データの高度化が重要だと指摘した。6月からK字型経済の動向を継続的に調査しており、輸出、生産、企業財務データを産業別、企業の国籍別、規模別に詳しく分析した。
K字の上側には、デジタルやAIの恩恵を受けるニューエコノミー関連企業が集中している。コンピュータや半導体などが代表例で、その多くを中国、米国、シンガポール企業が占める。一方、K字の下側には、自動車、石油、建設資材など、海外製品との激しい競争に直面する事業が集中している。
過去5年間では、「Reinvent Thailand」の対象となる7つの産業に属するK字下側のタイ系中小企業(SME)の生産が平均8%減少した。外国系企業は19%減とさらに大きく落ち込み、特に日本企業の減少が目立った。こうした格差を踏まえると、経済全体を示す数字だけを見るのでは不十分だと指摘した。
指標となるデータについては、①網羅性(Coverage)、②品質(Quality)、③変化する経済構造の反映(Structure)の3つの側面を高める必要があるとした。工業経済事務局(OIE)、国家経済社会開発評議会(NESDC)、社会保険事務局など複数機関のデータを結びつけ、構造改革を急ぐ必要があるとしている。
今年のタイ経済は、輸出と民間投資が予想を上回って拡大していることから、従来予測を上回る成長が見込まれる。JSCCIBは輸出予測を8~10%増から12~16%増へ、GDP成長率予測を1.6~2.0%から2.1~2.5%へ引き上げた。
ただし、輸出と民間投資の伸びが国内経済へ伝わる力は目に見えて低下している。過去には輸出が平均約14%、投資が10%伸びた場合、GDPも平均6~7%成長していた。現在は輸入品・部材への依存度が高まっているため、タイ国内で取り込める付加価値が低下している。新たな投資による雇用創出も、過去に比べて限定的になっている。
タイは世界の投資先として引き続き注目を集める必要がある一方、流入する投資を国内経済の利益へ最大限つなげることも求められる。例えばデータセンターは、100MW規模の投資額が600億バーツを超える。このため、川上から川下までつながるエコシステムを形成し、垂直統合を進める必要があるとした。具体例として、投資委員会(BOI)が認可したプリント基板(PCB)関連投資の拡大、クリーンエネルギーや水関連インフラへの投資、製造業のスマートマニュファクチャリングへの高度化、人材の準備などを挙げた。人材育成には教育機関の参加も必要になる。
データを最大限に活用し、クリエイティブエコノミーなどの新産業を高度化することも重要で、国内経済へ実質的な効果を生み出す必要があるとした。JSCCIBはこうした考えから、データセンター事業がタイに最大限の利益をもたらすよう支援する「データセンター作業部会」を設置した。
◆「Reinvent Thailand」で構造改革
JSCCIBは、世界のサプライチェーンが大きく再編される機会を捉えるため、タイ経済の「Reinvent(再構築)」を急ぎ、構造的制約を解消する必要があるとした。信頼と信用を築き、新たな投資を呼び込むことも重要になる。
この考えに基づき、JSCCIBと各分野のパートナーは9月3日にシリキット国際会議場で「バンコク・ビジネス・サミット2026:タイ再構築、強靱なアセアンへ(The Bangkok Business Summit 2026: Reinvent Thailand, Resilient ASEAN)」を開催する。政府、民間、国際機関が参加し、タイ経済の改革を具体的な成果につなげる場とする。
会合では、国の新たな成長エンジン、競争力向上、未来産業への投資誘致、インフラ・エネルギー開発、低炭素経済への移行、変化に対応できる強靱なタイ経済とアセアンの構築などを議論する。サプライチェーン、中小企業、地域経済にも幅広く利益が及ぶ経済発展を目指す。
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