2026年7月27日(月)号

米301条関税、タイ企業への影響限定的=一部品目は競争力低下、ART妥結急ぐ

 米国が7月24日、1974年通商法301条に基づき、タイを含む約60か国・地域からの輸入品に追加関税を課し始めた。タイ製品の大半には通常の関税率に12.5%を上乗せされる。カシコンリサーチセンター(Kリサーチ)は、同日に終了した通商法122条に基づく10%の暫定関税と比べ、タイ企業への影響は全体として大きく変わらないと分析した。ただし、機械やペットフード、米などは価格競争力が低下する可能性がある。
 米国は、強制労働で生産された商品の輸入を効果的に禁止する制度を定め、施行できていない国・地域を301条の対象とした。通商拡大法232条に基づく関税がすでに課されている商品や、従来から関税を免除されていた商品は今回も対象に含まれない。
 カシコンリサーチセンターは、米国市場への依存度と、関税を含めた米国の単位当たり輸入価格を基に、タイ製品への影響を分析した。価格面の優位性を維持できる商品には、エアコン、冷蔵庫、銀製宝飾品、ツナ缶、洗濯機などを挙げた。米国への輸出依存度は高いものの、関税を加えた輸入価格が主要競合国の製品を下回るため、競争力を保てるとみている。
 一方、機械、ペットフード、米、エビ缶を除く加工エビは、米国市場への依存度が高いうえ、関税込みの輸入価格が主要競合国を上回る。価格競争力が低下し、受注や輸出量に影響が及ぶ可能性がある。
 とは言え、価格面で不利になる商品にも、競争を支える固有の強みがある。例えば、タイのペットフード産業は、高品質のプレミアム商品や世界的な消費動向に対応した商品の生産と輸出に力を入れている。印刷産業向け機械では、世界市場への輸出拠点としてタイに工場を置く大手メーカーがあり、成長が続く可能性がある。
 タイ商業会議所(TCC)のポット・アラムワタナノン会頭[=写真]も、競合国の大半が同様の追加関税を課されるため、米国市場の競争条件は全体として大きく変わらないとの見方を示した。10%の税率が適用される国はタイより有利になる可能性があるものの、税率差は前回の措置ほど大きくなく、タイ企業の競争力を深刻に損なう水準ではないとした。


 米国は強制労働に加え、構造的な過剰生産能力を持つ製品への追加措置も検討している。カシコンリサーチセンターは、この措置が導入されれば、タイ企業の競争力に一段の圧力がかかる可能性があるとして、今後の動向を注視する必要があると指摘した。
 ポット氏は、タイでは強制労働が制度的な問題となっている状況は長年みられないと説明した。ただし、海外の取引先からの信頼を高め、国際基準に対応するには、関連法令や措置を明確に施行する必要があるとした。将来、関税の適用除外を受ける国と同じ条件で競争するためにも、早期の対応が欠かせないとの考えを示した。
 米国はタイ最大の輸出市場となっている。今年1~5月のタイの米国向け輸出額は約380億3700万㌦で、前年同期比40.31%増加した。タイの輸出総額の約23.5%を占める。食品・加工食品、自動車部品、宝石・宝飾品、家具、繊維、衣類など、米国市場への依存度が高い産業は関税の影響を受けやすい。
 タイ工業連盟(FTI)のピムチャイ・リーイサラヌクン会長は、影響を正確に把握するには、品目ごとの関税分類に基づく分析が必要だと述べた。今回の措置には一部の商品や、通商拡大法232条の対象商品への例外があるためだ。
 FTIは商業省、各産業部会、関係機関と協議し、対象商品の範囲、関税負担、受注見通し、サプライチェーンへの影響を調べる。分析結果を各産業の実情に合った企業支援策の検討に生かす。
 ピムチャイ氏は、タイの輸出企業は労働法や国際基準の順守を重視し、海外の取引先による監査も継続的に受けていると説明した。こうした強みを生かし、製品のトレーサビリティ、原産地、サプライチェーン全体の原材料情報を確認できる仕組みを強化する必要があるとした。米国との交渉を具体的なデータで支える狙いもある。
 米国の通商措置には、301条だけを個別に捉えず、長期的な通商戦略として対応する。FTIは、輸出市場の多様化による特定市場への依存軽減、労働・人権・環境・原産地に関する国際基準への対応強化、商品の高付加価値化と技術革新、追跡しやすいサプライチェーンへの転換を重要課題に挙げた。
 タイ産業界は、スパチー・スタムパン副首相兼商業相と関係する政府機関が主導する米国との相互貿易協定(ART)の早期妥結にも期待を寄せる。双方に利益をもたらす均衡の取れた合意を結び、貿易障壁を減らしてタイ製品の長期的な競争力を維持する必要があるとしている。
 TCCは事業者から影響や提案を集め、政府の交渉を支援する。タイ商業会議所大学(UTCC)はすでに調査結果の概要をまとめ、参考資料として商業省に提出した。ポット氏は、労働基準の引き上げやサプライチェーンの透明性向上を急ぎ、今回の関税措置をタイの産業の競争力強化につなげる必要があるとの認識を示した。

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