2024年7月18日(木)号

ガルフとインタッチが合併=AIS、タイコム株公開買い付け

 ガルフ・エナジー・デベロップメント社(GULF)とインタッチ・ホールディングス(INTUCH)が合併する。7月16日に両社が発表した。将来の経営、投資における利益最大化と関連会社の構造調整が目的と説明している。株式保有構造の重複を減らし、エネルギー/インフラ事業とデジタル事業の成長機会を拡げる。
 ガルフとインタッチが合併し、SETに上場する新会社を設立する。合わせてインタッチ傘下の移動通信会社AISと衛星通信のタイコム社の全株式を対象として、条件付き自主公開買い付けを実施する。ガルフとインタッチは10月3日に臨時株主総会を開き、合併案を株主に提案する。ガルフ株1株を新会社株1.02974株と交換し、インタッチ株1株を新会社株1.69335株と交換する。
 AIS、タイコムの公開買い付けは、株主総会の承認を待って、第4四半期から来年第1四半期にかけて実施する。AISの発行済み株式36.25%をガルフ、インタッチ、シンテル・ストラテジック・インベストメンツ、サーラット・ラタナワディ氏(ガルフCEO)が1株216.3バーツで買い付ける。取得費用は1166億100万バーツ。タイコムの発行済み株式58.86%はガルフ、ガルフ・エッジ、インタッチ、サーラット氏が1株11.0バーツで買い付ける。取得費用は69億7600万バーツ。ガルフやインタッチが設立前の新会社に代わって買い付け、これによる新会社の株式割当比率が変更されることはないとしている。インタッチ取締役会は買い付け反対株主からの株式購入が終了した後、合併取引完了前に1株あたり4.5バーツの特別配当を実施予定。
 新会社の株主構成は、ガルフ大株主59.72%、シンテル9.08%、その他株主31.20%。新会社はAISを40.44%保有する大株主となり、ほかにシンテルが23.31%を保有する。タイコム社は、新会社が99.99%を保有するガルフ・エッジが41.14%を保有する。新会社がAISの株式を直接保有することで、より迅速かつ機動的な経営判断が可能になる。現在、ガルフがインタッチを経由してAISから受け取る利益は、AISの利益の19%に過ぎないが、新会社が40%超保有することで、AISがガルフにもたらす利益は大きくなる。
 サーラット氏によると、新会社発足は来年第2四半期。ガルフはすでにインタッチとタイコムの大株主で、AISとこれまで、タイコムを含むインタッチ・グループの株式保有構造について検討してきた。その結果、エネルギー事業のリーダーであるガルフと通信事業のリーダーであるAISの株主であるインタッチの合併が最適な選択で、株主全員に有益と判断。エネルギー事業で再エネ事業の拡大、通信事業でデジタル・ビジネス拡大に注力していくと語った。
 タイ、シンガポールの証券取引所上場5社が関係する大型合併で、サーラット氏は複雑でデリケートな取引になると述べている。この合併がタイ資本市場に明るいニュースになることを期待し、タイ証券取引所に対する投資家の信頼を築くのに役立ちたいと述べた。一連の取引は25年第2四半期に完了予定で、ブアルアン証券とUBS・AGシンガポール支店がアドバイザーを務める。
 ガルフはデータセンター事業への事業拡張を進めており、デジタル関連事業を電力事業と双璧を成すコアビジネスに育成する考え。AISを直接傘下に置くことで、クラウド、仮想銀行などに事業領域を広げる戦略。タイコムも東経119.5度の新衛星を通じてスペーステック事業への拡大を図っていく。

エナジー・アブソルート問題=投信ファンドにも余波

 エナジー・アブソルート社(EA)の格付が投資不適格級に引き下げになったことで、投信ファンド業界も影響を受けている。投信ファンド運営会社団である投資運用会社協会(AIMC)は、EAの手形や社債を加盟社による追加投資が禁じられるリストに加えた。チャウィンダー・ハーンラタナクン会長は、投資信託によるEAの株式や社債での資産運用について、全体から見ればごくわずかなことを強調した。
 EAは数か月前からネガティブなニュースが続き、株価も下げ続けていた。ファンドマネージャーは、価格下落の兆候がある銘柄の株式と債券への投資は徐々に減らすのが常だと説明している。投資家の利益最大化のため、資産運用会社が国際的なガイドラインに沿って、投資信託の流動性を管理するガイドラインである流動性管理ツールを採用していることも付け加えた。
 投信ファンドには、ファンドが投資している資産から一部資産を分離する「サイドポケット」という仕組みがある。サイドポケットに入れられた資産はファンドの純資産価値(NAV)計算には含まれない。投資口の保有者は通常どおりメインファンドを取引することができ、サイドポケットの資産が将来売却された場合、運用会社は資金を投資家に返還する。同協会によれば、これまでのところ資産運用会社4社が運用する20の投資信託で、EA株や債券がサイドポケットに移され、NAV計算から除外されている。サイドポケットを活用することで、ファンドは不利な価格での売却を急がないで済む。
 7月12日にEA幹部の会社資金横領疑惑の発覚を受け、投資家はEAの債券への投資を回収し始めている。アセットプラス・アセット・マネジメント社は、運営する240億バーツの「アセットプラス・フィックスド・ファンド・インカム・デイリープラス」(ASP-DPLUS)を閉鎖し、25年10月までに投資家に元本を返却すると発表。市場に衝撃が走り、各社のファンドの投資口が売り圧力にさらされている。アセットプラスは閉鎖するファンドの資産の40%を7営業日内に投資家に返却し、25年1月までに98%、同年10月までに全額を返却するとしている。
 投資口の売りが膨らんだSCBアセット・マネジメント社(SCBAM)のナンマナット・ピアムティップマナット最高投資責任者は、今週初めから状況を注意深く監視し、投資口保有者とはコミュニケーションをとっていると述べた。資産運用は通常どおりで、EAへの投資は全体のわずかでしかないことを強調している。
 証券取引等監視委員会(SEC)のワラチャヤー・シーマーチャン副事務局長は、現時点でファンドの状況について懸念すべき点は何もないと述べた。アセットプラス・アセット・マネジメント社の流動性管理はしっかりとした体制を持つため、ファンド解約が同社の資金繰りに影響を及ぼすことはないとしている。
 なおEAの株価は12日時点で13.10バーツだったが、取引が停止された15日を挟んで、16日には30.15%安となる9.15バーツに下落し、17日にはさらに30.05%安となる6.40バーツまで下げている。

工業部門信頼感指数=24か月ぶりの低水準

 タイ工業連盟(FTI)が7月17日に発表した6月の工業部門信頼感指数は、直近24か月で最低水準になった。指数は87.2ポイントで、前月の88.5を下回った。前月比減は3か月連続。受注、売上、生産数量、原価、業績の全指標が悪化した。クリアンクライ・ティアンヌクン会長[=写真]によると、22年以来の最低水準。


 景気回復の遅れ、消費者の購買力低下で、売上が低迷、受注減で生産数量が減少している。住宅ローン、自動車ローン、カードローン、個人ローンで不良債権(NPL)の加速度的増加から、金融機関は新規貸付に慎重で、国内消費の低迷につながっている。また中小企業も資金アクセスが困難となり、運転資金不足に陥っている。物品輸出でもコンテナや船腹不足が続き、海上運賃は高騰している。国内政治情勢の不透明感も企業の信頼感低下につながっている。
 タイ経済を支えている観光業はローシーズンを迎えているが、政府による国内観光刺激策や外国人観光客のビザ免除、ビザなし入国の滞在期間延長措置は明るい材料。また米国、アセアン、インド、中国市場が回復を始め、外需には拡大の兆しが見えている。バーツ安も輸出にプラスになる。
 FTIの46ある部会の1341人の経営者を対象にした調査によれば、最も懸念が高まった要因は原油価格で、62.4%が回答した。国内景気は63.4%、国内政治情勢は49.4%で、前月調査から回答率が上昇した。世界経済は61.9%、金利は57.1%、為替は35.1%で、前月調査から低下した。
 3か月先の信頼感指数は93.4ポイントで、前月の95.7を下回り、最近の33か月で最低水準となった。10月からの全国一律400バーツへの最低賃金引き上げが中小企業のコストに及ぼす影響、地政学的対立問題がエネルギー価格に及ぼす影響、中国からの輸入品への米国の追加関税に見られる米中貿易戦争の新たな局面入りなどを警戒している。工業事業者は第3四半期に政府の消費支出と投資支出が加速し、経済を下支えすることを期待している。
 クリアンクライ会長は、エネルギー事業監督委員会(ERC)が9月からの電力料金を1ユニット(㌔㍗時)あたり4.65、4.92、6.01バーツに引き上げる3案を提案していることについて、現在の4.18バーツでもすでに高いと指摘、引き上げに反対を表明した。タイへの投資を検討している外資も、タイよりも電力料金が安いベトナムを念頭に投資先を考え直すことになりかねないと述べた。

その他のニュース
[経済ニュース]

タイ・エアアジアX=ドンムアンに引っ越し

農業・協同組合省=農産物ゲノム編集を合法化

物流業界スマート化=商業省が会合

原子力発電所=基礎調査を開始へ

植物由来たんぱく質=ベータグロが新発売

アユタヤ銀行とAIA=投資連動型生命保険

タイの経済成長率=IMFが上方修正

WHAユーティリティ=グリーン債8億バーツ完売

前進党の解党裁判=8月7日に憲法裁が判断

タクシン元首相=8月22日に正式釈放

パリ五輪タイ代表チーム=ユニフォームを披露

ベトナム人集団死=殺人事件と断定

運河周辺の不法占拠住宅=都庁が撤去加速へ

タイ・ワコール=廃棄下着を燃料に

[インタビュー]
コンクラパン・インタラチャン
PTT社長兼CEO

[データ]
商業省発表の貿易データ

[BOI認可事業]
 6月18日の認可6事業

PDF完全版の定期購読はこちらから↓

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次