UTCCの家計債務調査=1世帯平均60万バーツ
タイ商業会議所大学(UTCC)が9月10日に発表した家計債務調査結果によれば、タイの家計債務は1世帯平均60万6378バーツで、調査開始後の16年間で最高となった。タナワット・ポンウィチャイ学長[=写真]によれば、コロナ禍が過ぎても景気が思うように回復しない中、支出を賄うだけの収入がないというのが借金を抱える最大の理由になっている。不良債権は自動車ローンを中心に増加し、住宅ローンにも広がりつつある。
9月1~7日に1300人を対象にアンケート調査を実施した。UTCC景気予測センターのウマーカモン・スンヨンスラット副所長によれば、家計の平均債務残高は前年調査の55万9408バーツから8.4%増えている。うち制度内債務が全体の69.9%を占めているが、前年調査の80.2%から低下した。これに対し制度外債務は全体の30.1%を数えており、前年調査の19.8%から大幅に上昇した。制度内金融から借金できなくなった者が制度外金融に頼らざるを得なくなったことを示している。月々の返済額は1万8787バーツで、前年の1万6742バーツから増えた。過去1年間に債務の返済が滞ったことのある者は71.6%に達した。
家計が抱える借金で最も多いのはカードローンで、自動車ローン、個人ローンが続く。借入の理由について聞いたところ、最も多かったのは、「収入が支出をカバーできない」で、「予期せぬ出来事で緊急に資金が必要になった」、「生活費が上昇した」、「家族に対する経済的負担が増えた」、「投資に失敗した」、「事業資金」、「資産購入」、「カードの使い過ぎ」、「子供の学費」、「解雇による収入の不足」が続いた。返済が滞った理由は、「景気の悪化」、「所得の減少」、「資金繰りの悪化」、「農作物価格の下落」、「収入に見合わない生活費の上昇」など。
タナワット学長は家計債務の膨張について、長期間にわたって蓄積されてきたと指摘している。家計債務残高のGDP比が持続可能な水準とされる80%を超えたのは2013年からで、2020年以降は90%を超え、最高水準はコロナ禍にあった2021年の94.6%。ただし同学長によると、家計の借金は必ずしも悪いことばかりではない。自動車や住宅取得は生活をより良くすることにつながる。また日々の生活の入り用のための借金については、経済が力強い成長を取り戻せば改善に向かうとし、そのためには経済成長率を4%以上に加速させる必要があると指摘している。
ペートンターン政府はデジタルマネー給付政策で、9月中に脆弱な層への現金給付を実施する方針。総額は1500億バーツ。UTCCは給付されるマネーが様々な種類の商品の購入に使われ、システム内を2回循環すると予測した。この結果、第4四半期のGDPは3.5~4.0%成長し、通年の経済成長率は2.5%の当初予測から0.2~0.3%上振れして2.7~2.8%に達すると見積もっている。脆弱な層以外の国民への給付については、実施方法や実施時期はまだ明らかになっていない。
デジタルマネー給付政策=脆弱な層向けに20日から開始
チュラパン・アモンウィワット財務副大臣は9月10日、デジタルマネー給付政策のもとで、1450億バーツの現金を9月20日から脆弱なグループに給付すると述べた。プログラムの詳細はペートンターン首相による12日の国会所信表明の後に明らかになるとした。17日の定例閣議で承認した後、国家福祉カード保持者と障害者の合計1450万人に1人1万バーツの現金が給付される。
プームタム・ウェーチャヤチャイ副首相兼国防相によると、1450万人の国家福祉カード保持者と障害者は個人商店や百貨店でのあらゆる商品の購入に給付されるマネーを使うことができる。セーター前政権が取りまとめたデジタルマネーで購入可能な商品リストには、酒、タバコ、大麻、商品券、キャッシュカード、金、宝石、電化製品、スマートフォンなどは含まれていなかったが、プームタム副首相によれば、こうした除外リストは適用しない。
デジタルマネー給付政策は、官製アプリ「ターンラット」を通じて3200万人以上が登録を済ませている。脆弱なグループ以外の登録者への給付は従来通り、デジタルマネーとする方針。年内にシステムを稼働させることができない場合は、1万バーツの半分を現金で、残り5000バーツは翌年にデジタルで給付する。
脆弱な層への現金給付の財源、1450億バーツは24年度予算の中央予備費から配分する230億バーツと補正予算1220億バーツで賄う。一方、25年度予算からは1870億バーツを配分することになっている。脆弱な層を除いた一般国民向け給付の経費は3050億バーツであるため、財源がまだ1180億バーツ不足している。
デジタルマネー政策はプアタイ党の選挙公約で、国民全員に1人1万バーツを給付すると約束していた。セーター前政権はこの政策の実現に向け財源探しに奔走。給付対象者を5000万人に絞り込んだ上で、実際に給付を求めるのは対象者の9割にとどまるとの推定から政策経費を4500億バーツに定めている。
ペートンターン首相は現金での給付を含む幾つかの変更が必要なことを認めているが、新政権の重要政策であることに変わりないとしている。
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